第15話 〜ガイダルの修行編 力の勇者との邂逅~
異界の一角。
そこは岩盤が砕け、地平線の彼方までひたすら荒野が広がる世界だった。
「なんじゃここは?」
ガイダルの声は空に消える。
空は赤黒く染まり、雷鳴が轟き、常に地響きが大地を揺らす。
まるで存在そのものが戦いを求めるような、暴力に満ちた大地。
そこに現れたのは――巨躯にして鉄塊のような肉体を持つ「力の勇者」。
かつて戦乱の時代を拳一つで制したという伝説の存在だった。
『来たか、小僧』
低く重い声が空気を震わせる。
『力を求めるならば、力で示せ。守りも癒やしも要らぬ。ただ打ち破り、押し潰す。それこそが力だ!』
次の瞬間、大地が裂ける。
巨腕が振り下ろされ、ガイダルは反射的に戦斧で受け止めるが、その衝撃は骨まで響いた。踏み込んだ足元が沈み込み、膝が折れそうになる。
「ぐっ……! なんという威力ぞ……」
攻撃は間断なく続く。
殴打、蹴撃、拳圧だけで地形が変わる。
「うおぉおお!! 金剛力!!」
ガイダルは身体強化を行い、必死に戦斧を振るう。
反撃を試みるが、すべて力で押し潰される。
『攻撃こそ最大の防御――そう思っているだろう、小僧!』
力の勇者の声が轟く。
『だが、真に大切なものを守れぬ力に、意味はあるか?』
言葉と同時に、拳が炸裂した。
防ぎきれず吹き飛んだガイダルの体は岩壁に叩きつけられ、肺の空気が一気に押し出される。
「ぐはぁ!!」
視界が白く染まり、血が滴る。更に、魔王によりヒビが入った盾は完全に砕け散った。
「……守るじゃと?」
呟いたその言葉が胸を刺す。
彼の記憶に浮かぶのは、仲間たちの姿。
レオンの真っ直ぐな剣。
エリシアの癒やしの微笑み。
カインの影を操る冷静な姿。
セノンの叡智に満ちた瞳。
そうだ、自分はいつも攻めるばかりだった。
だが、もし仲間を守る盾となれたなら。
自分の力には、もっと大きな意味があるのではないか。
力の勇者が拳を振り下ろす。
『いくぞ! この拳を受け止めてみせろ!』
ガイダルは剣を地面に突き刺し、拳を握る。
全身の魔力を練り上げ、心の奥底から声を絞り出す。
「……わしは、仲間を守るために戦うぞい!」
その瞬間――彼の周囲に輝く壁が生まれた。
紅く半透明でありながら鉄壁。魔力と精神が織り成す、絶対防御の盾。
「霊盾剛壁!!」
力の勇者の拳が炸裂する。
だが、今度は砕けなかった。
大地は割れたが、ガイダルを包む盾は微動だにしない。
『……ほう!』
勇者の目が輝く。
「ようやく気付いたか、小僧! 守る力こそ、真の力だ!」
荒野に響く轟音の中、ガイダルは大地を踏みしめ、初めて力の勇者の拳を押し返した。
彼は悟った。
攻撃のための力ではなく、仲間を守るための力。
その盾こそが、自分の真の武器だと――。




