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完結●伊織くんは愛されたい!~問題児と才女の初心(うぶ)な恋~  作者: 一番星キラリ


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43/50

43:澪もやってみる?

ハグを終えた刀岐(ときの)は、そのまま私の横に腰を降ろした。


「澪は誰かに力の回復してもらったこと、ないよな?」


「鈴には回復してもらっているけど、他はない」


「……理の守り手による回復は、神使による回復とは全然違うんだ……。送られてきた力が全身を巡ると、疲れ切った体にまさにパワーがみなぎるって感じで。すごく元気が出るというか……。とにかく一度こんな回復をされたら、神使による回復では物足りなくなりそうな……」


な、なんでそこで顔を赤くする‼

私まで恥ずかしくなるじゃない。


思わず視線を逸らし、棒読みで答えていた。


「へえー、そうなんだ。とりあえず役に立てて良かったわ」


すると両腕を掴まれ、体ごと刀岐の方に向けられた。


「澪もやってみる?」


「え……」


「何事も経験だろう? じゃないと分からないだろう、俺が言っていることが」


「い、いや、いい。分かっているから。すごく回復するんでしょ」


「分かってない、絶対」


「分かっているってば! また必要な時があればちゃんと刀岐のこと、回復するから」


「そうしてもらえると助かる……。じゃなくて、澪も経験してみるべきだ!」


「いいって。いや……うん、私がスタミナ切れになったらその時にお願い」


「澪がスタミナ切れになる……ないと思う。俺といる限り、澪にそんなに力を使わせることにならない」


……‼ どこからくる、その自信⁉

まあ……でもそうなんだろうな。


「そ、そーだよね。じゃあ私は安心だわ。っていうかそろそろ寝ないと。明日は鎮守府に行かなきゃならないし」


「……澪の勉強にもなると思ったんだけどな……。何事も経験だし。澪は勉強熱心だから、理の守り手同士の回復がどんなものか知りたいと思っている……と思ったのに。それにどれぐらいの量をどんなタイミングで送ればいいか、なんて、自分も経験しないと分からないと思ったのだけど。まあ、仕方ないな」


「……!」


絶対に私を煽っていると分かるけど、そこまで言われると……。


「何事も経験というなら、じゃあ刀岐、回復、してみてよ。……全然、力不足していないけど」


刀岐が笑顔で頷いた。


「じゃあ、ベッドに横になって」


「え、横になる⁉ 別にこのままでいいよ」


「……横になっておいた方がいいと思うけど」


……横になんかなったら余計に緊張しそうじゃない‼


「い、いい。このままで」


「分かった」


刀岐はそう言うと私の顎を持ち上げた。


え、いきなり⁉


心の準備もないままにいきなり力を送り込まれた。


「……!」


な、なに、この感覚。


刀岐は既に力を送り終え、私からゆっくり顔を離していた。


体が震えた。

鈴が力を回復してくれる時と全然違う。

力が全身を巡るのをはっきり感じる。

痺れるような、くすぐったいような、不思議な感覚。

あ……ダメだ。


全身から力が抜けた。


私は刀岐の胸の中に倒れこんだ。


全身がぽかぽかと暖かく感じた。


「ほら。横になった方が良かっただろう?」


そう言いながら私の体をベッドに横たえた。


鈴がやれやれという顔で私を見ていた。


「今は一気に力を送り込んだ。でも一呼吸分だけだ。それでも、分かるだろう? 神使の回復の時と全然違う。ゆっくり、十五秒ぐらいかけて一呼吸分の力を送り込むと、丁度いいのかもしれないな」


とても冷静に刀岐は分析しているけど、私は頭がぼーっとして何も考えられなかった。


さらに何か話続けたが私は上の空だった。


その状態で数分経ち、送り込まれた力が体に馴染んだ感じがした。


これは……ある意味ちゃんと経験しておいてよかった。

理の守り手同士の力の回復がどんなものかよく分かった。


私はゆっくり体を起こした。


「さっき言っていた方法でもう一度試してみるか?」


とても真剣な表情で私に尋ねた。


……変に意識した私がバカみたいだ。


私のことを真面目だと言うけど、刀岐だって同じだよ、と思いながら。


「……それはまた今度で。でもさっき言っていた15秒ぐらいで一呼吸分の力を送り込む、っていうのはよく分かった。次に回復をやる時はちゃんと調整する」


「分かった」


刀岐はそう返事をしてから、改まった表情で私を見た。


今度は何……?


私がその目を見返すと。


「……陽がさ、護衛の任を解かれると思うって言っていたよな」


「うん」


「プールから戻って洗面所で陽に会ったら、もう荷物を片付け始めているって言っていたんだ……」


「うん、お風呂から出たら片付けるって言っていた」


刀岐の視線がフローリングの床に落ちた。


「俺は……澪にはここにまだいてほしいんだけど」


……多分、言われると思っていた。


悠、陽、私。


急に人が増えて、みんなで食事をして、話して、団らんの日々を過ごしてしまった。


それでいきなり一人に戻るのは……。

刀岐じゃなくても辛いことだろう。


サトリは……桜那(せな)は「あなたは刀岐(ときの) 伊織(いおり)に唯一、安らぎを与えられる存在。彼のことを支えてあげてください」そう言っていた。


「うん。引き続きここにいていいか、確認してみるよ」


私の言葉に刀岐は笑顔になった。


その笑顔は、見ていると一番元気をもらえる気がした。


「良し。俺から澪に伝えたかったことは全部言えた。ありがとう、澪」


「うん。私も勉強になった」


「じゃあ、寝るか」


「うん。おや……」


刀岐が私を抱き上げた。


「な、何⁉」


「寝るんだろう?」


「寝るけど、まさか……」


「澪のベッドでもいいけど、俺のベッドの方が広いぞ」


「だから、そーゆう問題じゃないの‼」


「?」


私のことを刀岐が抱き枕にする問題、これ、解決しないと絶対にヤバいよ……。


私は頭を抱えた。


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