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完結●伊織くんは愛されたい!~問題児と才女の初心(うぶ)な恋~  作者: 一番星キラリ


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37/50

37:やるしかない。

悠の息が感じられるぐらい、顔が近づいていた。


「制約解除」


悠が耳元で囁き、悠の全体重が突然私にかかるのを感じた。


咄嗟に手で悠の体を掴んでいた。


私、動けた⁉


「東西南北より伸びたる天の鎖よ、サトリの星那を、この地へつなぎ留めよ」


琴音の声が響いた。

さらに、琴音が叫んだ。


「理の守り手・刀岐(ときの) 伊織(いおり)の天の鎖を解除する」


私は悠の体を支えながら、上半身を起こした。


星那は私たちから少し離れた場所で、首と両手、揃えられた両足が天の鎖でつながれ、宙づりになっていた。


天の鎖から放たれた刀岐は地面に両手をつき、ゆっくり起き上がろうとしていた。


手に生暖かい気配を感じると、そこに悠の神使の狼――すばるがいた。


「澪、悠をベンチに寝かせるわよ」


駆け寄ってきた琴音が悠の両足を持ち上げた。


私は悠の上半身を抱えながら立ち上がり、ベンチにその体を横たえた。


すばるが悠の回復を始めた。


「澪!」


鈴が私の肩に飛んできた。


「鈴、どこにいたの⁉」


「ずっと霊体化して隠れていた。あの星那の殺気が物凄くて、澪に近づくことなんてできなかった。何もできずごめんよ」


「大丈夫だよ、鈴。鈴が無事で良かった」


私が鈴の頭を撫でていると


「澪!」


刀岐の声がして、私は後ろから抱きしめられていた。


鈴はその勢いに、ジャンプして悠の胸に着地していた。


「怖い思いをさせてすまなかった」


腕に込められた力の強さから、刀岐が私の身をどれだけ案じていたかが伝わってきた。


「刀岐……」


私が回された刀岐の腕に触れた瞬間、その腕から力が抜けていくのを感じた。


「え……」


「伊織(いおり)!」


琴音も駆け寄り、崩れ落ちる刀岐の体を支えてくれた。


「刀岐、どうしたの⁉」


叫ぶ私に琴音が声をかけた。


「落ち着いて、澪。伊織は力を使いすぎただけ。回復すれば大丈夫だから」


「ずっと眠っていたのに⁉」


「澪、伊織は眠っているように見えたけど、それは違う。伊織はここに来てから一人でとんでもないことをしていたの。詳しくは後で教えるわ。まだそこに星那もいるから。でもこれは分かるでしょう? 天の鎖に縛られた悪霊や怨霊は鎖からどんどん力を奪われていく」


私は琴音の言葉に頷いた。


「天の鎖につながれたのが理の守り手だったとしても、同じように鎖によって力を奪われるのよ」


「……! じゃあ早く回復を……。八咫兵衛(やたべい)は⁉」


「気配はないわ。伊織のことだから、八咫兵衛に応援を呼ばせに行かせたのだと思う」


「……! 鈴!」


鈴はすばると一緒に悠を回復させていた。


「悠は憑依された時、相当抵抗をした。力もかなり減っているはずよ」


「琴……星崎参事官の神使は?」


「琴音でいいわよ、澪。私の神使はどこにいるか分からない。ここでは検知できないから、かなり離れた場所いるのだと思う。何せ私は百目鬼(どうめき)に憑依されてしまったから、大和が……自分の神使がどうなったか把握できていないの」


……。


私は目を閉じた。


やるしかない。


再び目を開くと、横たわる刀岐の顔を見た。


「私が刀岐を回復させます。ほし……琴音は星那を見張っていただいていいですか?」


琴音は私が何をしようとしているのか気づいたようで、「分かったわ」と頷き、立ち上がった。


私は八咫兵衛の言葉を思い出す。


――「口と口をあわせて、そこに力を送り込む」


深呼吸をすると、刀岐(ときの)の口元に、私は自分の口を近づけた。


清涼感のあるミントの香りがした。


――「ゆっくり優しく、息を送り込むように力を送り込むんだよ。そうすれば力は体内の隅々に行き渡る」


八咫兵衛の言葉に従い、ゆっくり、静かに私は刀岐の口に息を、力を送り込んだ。


どうか、回復して。

そう願いながら。


そうやって何度も何度も力を送り込んでいると、刀岐が目を開けた。


「……澪」


「刀岐!」


頬を上気させた刀岐がゆっくり上半身を起こすと、いくつもの明かりが周囲を照らした。


「伊織、大丈夫か⁉」


上空から八咫兵衛の声がした。


「星崎参事官!」


遠野、二宮を先頭に沢山の鎮守府の職員が駆けてきた。


「澪ちゃん、伊織くん!」


颯斗と海斗が私たちを見つけ、手を振って駆け寄った。



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