↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●伊織くんは愛されたい!~問題児と才女の初心(うぶ)な恋~  作者: 一番星キラリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/50

30:なぜ服を脱ぐ⁉

……!


突然、刀岐(ときの)がジャージを脱ぎ始めたと思ったら、中に着ていたTシャツまで脱ぎ始めた。


な……、夜寝る時もそうだけど、なぜ服を脱ぐ⁉


そう思ったが、刀岐から力を与えられた私の目は、服を脱いだその体に浮かび上がる沢山の紋様を捉えていた。


刀岐の上半身には、肉眼では見えないが、沢山の紋様が刻まれていたのだ。


左手を高く掲げ、刀岐は静かに言葉を発した。


「天津神よ、葦原の中つ国に今再び降臨し、この地の不浄を清め、その光で照らし、導きたまへ――。天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、伊邪那岐(いざなぎ)、伊邪那美(いざなみ)……」


刀岐が神の名を口にすると、その度に体の紋様の一つが光り、そして離れた場所に神がその姿を現した。


刀岐が展開する結界に現れた霊獣を見たことがあった。


今、私のために展開された結界にも、神はその姿を現していた。


でも。


授業で習った神が次々と降臨する様子は、これまでに見た神獣や神の比ではなかった。


私はただただ圧倒されていた。


そしてそんなことができる刀岐の、その力に驚愕していた。

それは異形の者たちも同じようだった。


降臨した神のそばにいた異形の者たちは驚き、逃げる者、攻撃を加える者、動きを止める者、それぞれの反応を示した。神はその反応に応じ、逃げる者には浄化の光を、攻撃する者には反撃の光を、動きを止める者には慈しみの光を降らせた。


それぞれの光を浴び、異形の者たちは次々と元の姿――人間の姿に戻っていった。


「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」


刀岐と私のすぐそばに、最後の女神が降臨した。


長い髪は腰の上あたりで金細工の髪飾りでまとめられていた。

柔らかい丸みを帯びた眉毛、目尻を飾る紅色の化粧。

ふっくらとした唇にちょんとのせられた紅。


勾玉の首飾りや腕飾り、腰で結ばれた金細工の紐、金と朱色の刺繍が入った白い衣を纏った輝く姿の女神は、そばに倒れもがく鬼と虫の妖(あやかし)に慈しみの光を降らせた。


鬼は私たちを結界に迎えた眼鏡の女性職員に、虫の妖は結界で待機していた男性職員の姿に戻った。


女神は私に気づき、柔和な笑みを浮かべ、そしてふわりと舞い上がり移動していった。


沢山の異形の者により淀んでいた空気が、次第に清らかな気配に変わっていった。


多くの異形の者は人間の姿に戻り、役目を終えた神は高天が原に帰って行った。


天照大御神が最後に近寄った二人の鬼、その姿は鬼であったが、原形をとどめていた。角が生え、牙が伸び、手の爪が鋭くなっていたが、人間としての面影が残っている。


その二人は……理人と結菜だった。


天照大御神は静かに声を出した。


『そなた達の罪は深い。理の守り手でありながら、罪を犯した』


理人と結菜は互いに身を寄せ、座り込み、震えながら天照大御神の言葉を聞いていた。


『人の心は弱い。その罪を悔やむのであれば、その穢れを祓いましょう』


二人は震えながら何度も頷いた。

天照大御神は慈しみの光を二人に与えた。


刀岐が私に展開していた結界を解除し、そばに来た。


理人と結菜から角と牙が消え、爪の鋭さも消えた。


『穢れは祓われました。そしてそなた達の理の守り手としての名は消えました。名も無き者として自らの罪を悔い、来世での再興を願いなさい』


天照大御神はそう言うと、輝きながらその姿を消した。


刀岐が礼をし、私も頭を下げた。


顔を上げた刀岐は厳しい目で理人と結菜を見た。


「お前たちが何をやったのか、話してもらおう」


◇


理人の話を聞いて、私は痛々しい気持ちになった。


幼馴染みだったし、つい最近まで、私は理人のことを自分にとっての王子様だと思っていた。


王子様? それはとんだ思い違いだった。


理人は……別に私のことを好きではなかった。


ただ、自分の好みとは違うが、私は男子生徒の間では人気が高かった……らしい。


そんな私が自分にゾッコンと分かっていた。


周囲の男子から「あの藤原はお前にゾッコンなんだろう」と言われることに優越感を覚えていた。


そんな中、まさに理人の好みと合致する結菜とデュオを組むことができた。

結菜は結菜で、アイドルみたいで可愛いと人気の女子だった。

さらに結菜は学年トップの理人に好意を寄せていた。


理人は結菜と両想いになれたのだから、それで満足していればよかったのに、満足できなかった。


私がデュオと、学校の問題児なのにとんでもないイケメンの刀岐(ときの)を部屋に呼んだり、端正な顔立ちのスーツ姿の大人の男性と一緒にいるのを見て、納得がいかない気持ちになった。


結菜と付き合うことになったのに、私が理人以外の男性と一緒にいることに、理人は嫉妬していた。


しかも私は、町でも有名な億ションに、鎮守府の指示で、かつ親の承諾を得て、刀岐と同居することになった。


理人の中で黒い気持ちが芽生えた。


刀岐と私のことを貶めたい、そんな気持ちになっていた。


そこに百目鬼(どうめき)が現れた。


もちろん、理人はそれが百目鬼(どうめき)だとは分かっていなかった。


ただ、こう言われた。


「面白くない相手がいるのならこの箱を使え」と。


この箱にはとても強い呪いがかけられていて、星稜学園の生徒では浄化することができない。


神童を気取っている刀岐は浄化できず、デュオである私共々恥をさらすことになると。


最初に渡された箱は一つだった。


だが実践授業は3つの結界で行われていた。

どの結界に刀岐と私が入るか分からなかった。

それを伝えると、さらに二つの箱を渡された。


箱はそれぞれ藤色の布で包まれていた。


この特殊な布で包まれている限り、この箱が呪いの箱であるとは分からない、そう言われた。


理人はその箱を学校へ持っていき、自身のロッカーに隠し、刀岐が学校へ来る日を待った。


そして今日、刀岐はホームルームから姿を現した。

やるなら今日だと理人は思った。


以前、百目鬼(どうめき)は、降霊術の先生に化けて学校に侵入した。


そのことから鎮守府は、校内に新たな人をいれないで済むように、また事前にどんな霊か職員が確認できるように、鎮守府内で降霊術を行った。そして呼び出した霊を遺物に憑依させ、実践授業で使うことにした。


除霊であれば、遺物から霊を呼び出し、それを憑依させるところから授業スタート。


悪霊や怨霊であれば、遺物に封じておき、授業になったら解放すればよかった。


浄化はそのままその遺物に対し、生徒が浄化を行えばよかった。


理人は刀岐と私の順番を確認し、どの部屋にいっても用意した呪いの箱と遭遇できるよう、結菜に協力させた。


二人は鎮守府の職員を装い、各結界に呪いの箱を配置していた。


「こんな事態になるとは思っていなかった。ちょっとした悪戯心だったんだ」


理人の弁明に刀岐はため息をついた。


「それを俺に言うな。今話したことを正直に教師や鎮守府の職員に話せ」


刀岐はそう言うと、展開していた結界をすべて解除した。


その瞬間、そこはいつもと変わらぬ体育館に戻り、二階の窓からは明るい太陽の日差しが降り注いだ。


と同時に、異形の者に憑依され、神によって祓われ、人間の姿に戻った生徒や一部の鎮守府の職員が、突然体育館に姿を現すことになった。


現場で生徒の捜索をしていた教師や鎮守府の職員は驚き、慌てて床に倒れている生徒たちに駆け寄った。


颯斗と海斗が大声で指示を出し、現場の職員を動かす姿が見えた。


理人や結菜もすぐ職員に声をかけられていた。


八咫兵衛(やたべい)の姿が見えたと思った瞬間、刀岐が私の口を押さえた。


そして体育倉庫の扉を開けると、そのまま私を連れ中に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。