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完結●伊織くんは愛されたい!~問題児と才女の初心(うぶ)な恋~  作者: 一番星キラリ


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17/50

17:こんなコーヒー、毎朝飲めたら幸せだろうな

「うん。そこだけぽっかり穴が開いていて、霊の侵入が可能になっている」


「えっ⁉ 今もですか?」


「いや、今は閉じられている。おそらく部屋を離れる時は閉じるようにしているのだと思うよ。でも何度も開け閉めしているから、痕跡が残っていた。僕が点検して分かるぐらい」


「それって危険な状態なんですか?」


「閉じている分には危険はない。けれど開いていると……とても細いし、一体の霊が通れるレベルだけど、通り道が存在することは見逃せないよね」


「……多分、それ、鎮守府の仕事をやるために開けているんだと思います」


私は悠に、今朝、刀岐(ときの)の寝室を訪れた際に鈴が言っていたことを話した。


ちなみに鈴はもう部屋で寝ていた。


「なるほど……。でも澪ちゃん、鎮守府は流石に『一晩かけて、憑依と除霊をやれ』なんて仕事を依頼することはないと思うよ」


「そうなんですか?」


「伊織(いおり)くんのレベルを考えると、鎮守府が依頼する仕事は……政府機関が新しく建物を建設するにあたり、新たに展開する結界の依頼をする。調伏が難航する悪霊や怨霊の対応をお願いする。政府要人に憑依した霊の除霊を頼む。そんな通常の守り手では困難な案件だと思うよ」


「じゃあ刀岐は何のためにあんなことを……?」


「……多分、少しでも霊を西に送りたいと思っているんじゃないかな。心が弱って、天柱が開いてしまい、憑依される人が沢山いる。憑依されてしまう個々の人間をどうかすることはできないけど、憑依してしまう霊を減らすことは、伊織くんならできる。だから寝る間を惜しんで除霊をしているんじゃないかな」


「……それってもしかして百鬼夜行事件を経験したから……?」


「そうだろうね。でもまあ、そうだとしても、それで朝起きられなくて学校に行けないというのは問題だけど」


悠が苦笑し、コーヒーメーカーからカチッと音がして、私は席を立った。


「仕事だから仕方ないと思っていましたが、自主的にやっているなら控えるように話してみます。デュオを組む者として、学校にはちゃんと来て欲しいので……」


私はマグカップにコーヒーを注いだ。


「悠はお砂糖とかミルクは使いますか?」


「いや、僕はブラックで大丈夫」


私はマグカップを両手に持ち、ソファへ戻った。


「ありがとう、澪ちゃん」


悠はテーブルに置いたマグカップを手にとり、早速コーヒーに口をつけた。


「香りもいいね。すっきりして飲みやすくて僕の好きな味だ。こんなコーヒー、毎朝飲めたら幸せだろうな」


悠が微笑んだ。


単純に褒められたことに嬉しくなり、そして毎朝飲めたら幸せという言葉に胸がキュンとした。


「そ、そうだ! 悠に聞きたかったことがあるんです」


「なんだろう?」


私は刀岐が猫に憑依されていたこと、猫が憑依した場合に制御が可能なのか、そして動物の除霊はできるのかなどを尋ねた。


悠はコーヒーを飲みながらしばし考え込んだ。


「……猫の妖(あやかし)を調伏したという話は聞くけど、自分自身に憑依させて除霊する……それは聞いたことがないし、僕もやったことがないよ」


悠はマグカップをテーブルに置き


「というか、澪ちゃん、よく頑張ったね。最終的に除霊できたんでしょう?」


「はい……」


「猫の霊を制御できるかどうかは分からないけど、そもそもとして自分自身に憑依させて、除霊するのは危険なことだと思う。猫の霊だったから笑い話で済むけど、もしそれが悪霊に近いような霊だったら、体を乗っ取られることになりかねないしね」


「そうですよね……」


「それと澪ちゃん……、そんなに簡単に男性の寝室に足を踏み入れるとは、ちょっと心配になっちゃうな」


「……‼」


「……ごめん、そんなこと僕が言う筋合いではなかったね」


「いえ、私、そーゆうところ疎いというか、弱いので指摘してもらえてよかったです……」


なぜか最後は小声になってしまった。


そして悠が何も言わないので、二人の間に沈黙が流れてしまった。


悠は優しい眼差しで私のことを見ていた。


やっぱり悠は端正な顔立ちで、すごく綺麗だった。


「澪ちゃん……」


悠が私の名を呼んだ時だった。


玄関の方から物音と話し声が聞こえてきた。


刀岐と陽が帰ってきた。


「あー、コーヒーのいい香りがする」


陽がリビングに入ってくるなり鼻をくんくんさせた。


「あ、陽、コーヒー飲む?」


私の問いに陽は笑顔で答えた。


「飲む、飲む」


「俺も飲むぞ」


刀岐も部屋に入ってきた。


……悠、何を言おうとしていたのかな……。


悠はノートパソコンを閉じ、陽と話しをしていた。


私はコーヒーを用意するため、キッチンへ向かった。


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