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015話 リベンジ入試・前編

 こんにちは。おはようございます。

今日は入試の日です。

眠いです。怖いです。緊張してます。

そこらへんの服屋で買った薄い服着てくるんじゃなかった…。

寒すぎる。


 あれから結構勉強はした。

この世界の歴史も言語もある程度わかってきた。

第二次聖魔大戦時の魔族軍第三軍団長がアムザって名前であることぐらいはわかった。

あと、適正のない魔術を使う際に他の精霊と短期契約すればいいこともわかった。

我ながら渾身のドヤ顔である。

でも、どちらも常識らしいので調子には乗れないが。

まあそれはいいとして。


 試験科目は座学、魔術、実践の三つらしい。

座学はペーパーテスト。

二月の敗者たる俺が発狂してしまうやつだ。

魔術は、固定された的に決められた魔術を当てるらしい。

ちなみに、的を破壊すると加点措置が入るそうだ。

試験官は何を考えている…。

そして、実践は、毎年種目が変わるそうなのでよく分からん。

これが受験生の緊張を生むのだ。

けしからん。即刻止めるべきだ。


 ただ、俺は正直自信がない。

高校入試で爆死したのは結構強烈な記憶だ。

それから生まれる緊張に打ち勝たねばならない。

入試は気合いだ!根性だ!とほざいていた連中を昔よく見た。

そんな文句を聞いた時は、なんだあいつらアホちゃうか、と馬鹿にしていたが、今こうやってみるとあながち間違っていないと思えてくる。


 そんなことを思っているうちに、校門が近づいてきた。

俺はやる時はやる男だ!DTだけどな!

やってやるぜ!


——※——


 おはようございます。

座学のテストが終わりました。

数学あたりはまだいい。

いくらゴミ生徒とはいえ、二次方程式までしか出ない程度なら半分は解ける。

日本の義務教育なめんなよ!


 だが、なんか突如として湧いてきた『魔術論』って何?

要綱にはこんな科目書いてなかったぞ!

責任者出てこい!

…はい。要綱の最後に「試験科目は絶対ではありません」って書いてありました。

私が悪うございました。

安心しなさい、私の『魔術論』は恐らく綺麗なレッドポイントであろう。

詰んだぜ。やったね!


 また発狂コース一直線だった自分を頑張って止める。

諦めるのはまだ早い。まだあと二科目あるのだ。

ほぼあと一つだけどな。


 『魔術』の試験会場にやってきた。

体育館のような場所に、二百人ほどの受験生が集められた。

視界の先には、三つに色分けされた三十センチぐらいの一つの円形の的。

そこから十メートル少しぐらい手前に、白いラインが引かれている。

先生も二十人ほど整列しているようだ。

試験官らしき女性がそこから一歩前に出て、試験内容を伝えた。


「皆さん、今回の内容は『水砲弾(ウォーターボール)』です。

 簡単な初級魔術ですね。

 白いラインから撃ってください。

 撃てて十点、的の一番外に当たって五十点、的の外から二番目に当たって七十点、中心に当たって百点とします。

 なお、的を破壊した場合は五十点加点しますのでぜひ頑張ってください。

 それでは受験番号1番の方から」


 そう言って、試験官さんは下がっていく。

というか、前も思ったけど破壊した際について言うか?

確かに、分かりやすくていいと思うよ?

でもさ、俺TUEEEするものって大体「お前、まさかこの特殊合金製の的を燃やし尽くすだと?!」みたいなのが受けるじゃないですか。

相手側の予想を上回るからいいのに、それを言うなんてとんでもない。

俺のことじゃねーよ?

僕には無理なんです、そんなの。

魔法自体使えませんもん。


 おっと、もうすでに一番さんが準備についている。

一人で受験生全員+先生方の注目を浴びて…。

こりゃあきませんわ。

このか弱い私がこんなものに耐えられるとお思いで?

ところが、1番さんはめげずに杖を持ち上げ、そして魔法を放った。


「せせらぎを示したまえ、『水砲弾(ウォーターボール)』!」


 水の球は的の一番外側に当たって、激しい飛沫をあげた。


「受験番号1、五十点」


 いきなり当ててきたぞこいつ。

しかも詠唱短縮してやがる。

やりおるな。俺はその魔術を使えすらしないのに。

精霊さん精霊さんいらっしゃい!

…来ないね。

あの邪神は呼んだらすぐ来たのに。


 俺が動揺しているのをよそに、皆さんどんどん撃っている。

撃てなかった人は今まで一人もいない。

俺の受験番号は133。

まだ先だが、ちょっと恐ろしい。


 そんな中、事件は起きた。

受験番号34の人が制御に失敗したのだ。

その人はまだ幼い男の子だった。

緊張したのだろう。

今まで大なり小なり外す人はいても撃てなかった人はいなかった。

…ここで「仲間ができた」とか思うから俺はクズなんだろうな…。


 そして、52の人はまず水属性魔術を使うことができなかった。

精霊に嫌われているのか?

俺と同類だ!やったね!

と、思ったのだが、周囲の反応を見るとそれは違うようで。

受験番号52である彼女は空間属性魔術特化で有名だったらしく、水の精霊とどう足掻いても契約できなかったらしい。

しかも、よくよく目を凝らすと彼女は長耳族(エルフ)だった。

一気にファンタジー爆上げって感じである。

エルフというと風属性を使うというイメージだが、この世界に風属性は存在しない。

存在する属性は空間・水・地・植物・獣・人・火。

ただし、人と植物の魔術は存在しないようだ。

俺も詰め込みではあるが受験勉強したのです。

ちょっと調子が戻ってきた。

が。

刻一刻と俺の番は迫っている。


 そして、度肝を抜かれたのが79番の人である。

その人はめちゃめちゃ美人だった。

綺麗な水色の髪に、強い意志を込めた美しい目。

立ち上がった瞬間から結構目立っていた。

いや、度肝を抜かれたのはそこではない。

その人の実力がすごかったのだ。

無詠唱で細く鋭い『水砲弾(ウォーターボール)』を撃ち、的の中心を鮮やかに打ち抜いた。

ここまではまだいい。

そこからが問題だ。

水砲弾(ウォーターボール)』が着弾するとほぼタイムラグなしに、もう一つ魔術が放たれた。

しかもこれまた無詠唱で。


「『濫水収束砲(スーパーセル)』」


 いとも容易く放たれた回転する水の光線は、的を粉々に砕け散らせる。

そしてそれは的の背後にあった結界と衝突して、激しい光を散らした。

一気にざわめく試験会場。

あ〜、ちゃんとフラグ回収するのね。

あれだけ言っておいて誰も壊さないってのはないよね。

だけど、あれって試験規定的にセーフなのか?

水砲弾(ウォーターボール)』の他に魔術使っていいのだろうか。

…そんな疑念は、一瞬で消え失せた。


「受験番号79、百五十点」


 セーフなのかよ。

めちゃめちゃルールスレスレって感じだったが…。

水砲弾(ウォーターボール)』による被害とほぼ同時に『濫水収束砲(スーパーセル)』が放たれたからいいのか?

まあいい、すごい人はすごいということだろう。

的自体も新しいものが用意されるのだから、当然そういう人がいることも予想されていたのだろうから。


 それに憧れてか、受験番号87の人が同じことを試して失敗していた。

うんうん、そんな日もあるよ。


「次、受験番号133」


 そして、とうとう、俺の番が回ってきてしまったようだ。

ゆっくりと立ち上がる。

やることは決めている。

今の俺は当然水属性魔術の一つである『水砲弾(ウォーターボール)』など使えない。

ただ、やれるかもしれないことはある。


 白いラインに立つ。

視線が俺に集まる。

足が震えそうになるが、そんな体に鞭打って魔力を集める。

魔力の再凝集。

魔力が魔晶石として実体化するのなら、体内の魔力もそうできるのではないか?

そう考えて実験してみたこれだが、案外上手くいった。


 凡人である俺の、最善を尽くすのだ。

やれる最大限のことをここで示す!

すぐ拡散しようとする魔力を無理やり抑え込み、前に向かって放つ。

俺の全魔力が吸われる。

少し受験生からざわめきが起こる。

しかし渦巻く魔力はは次第に実体をなし、的へと向かって…。

…?あれ…?おか、しい、意識が…。


 解き放たれた魔力弾は、少しだけ照準がずれていた。

ほんの少し。

されど少し。

魔力弾は的の角を掠った。

その威力の余波によって、的の隅は少し削れる。


 しかし、その本体はというと。

それは派手な音を立てて、的の背後の結界に衝突し、綺麗に消失した。


 一瞬受験生も教師陣も声が止まった。

複雑な状況を誰も理解できていないからである。

水砲弾(ウォーターボール)』ではなく、水属性ですらない魔術を使った受験番号133。

だが、その魔術は的を外れている。

そして、当の本人は意識を失っている。


「…受験番号133、〇点」


 数秒の後に、試験官の戸惑った声だけが響いた。

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