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09話:初仕事・前編

 パーティ加入か…待て、ちょっと待った!今一瞬何か恐ろしいネーミングセンスが聞こえたぞ!

何?スーパーなんとかって?

そういやユーグさんの苗字、「マラブル」だったな。

あー、なるほど…って、まずい、納得しかけてしまった。

納得できるかよ…!

まあいい。名前がひどいことはいきなりBランクパーティに加入できる代償とでも考えておこう。

 これで、ようやく無職を脱出することができた。定期的に稼げる迷宮(ダンジョン)というのは結構美味しい。

ようやく自由に遊べ…いや、待て。当初の目的を忘れるな。

俺は学費を捻出するためにこの仕事をするんだ。決して遊ぶためじゃあない。

よし、まずは自己紹介だな。

と、ユーグさんの隣に立っている女性を見つめる。

茶色の長髪をした…美少女、かな?

いったいどんな人なのだろう。気になる。

俺の自己紹介の前にとりあえずユーグさんに例の女性について聞いてみるか。


「ユーグさん、その女の人はどういう人なんですか?」

「え?こいつか?じゃ、シーナ、自己紹介して」


 シーナと呼ばれた女性が立ち上がる。

なぜか困惑した様子で。


「ねえ…ユー…グ?…じこしょうかいって、何だっけ?」

「自分がどんな人かを知らない人に伝えるんだよ。あと、俺の名前覚えてくれたんだな。嬉しいよ」

「そりゃ、ユーグのこと忘れてるわけないじゃない!」


 俺(非リア)の前でバカップルぶり見せつけんでもろて?

というかそれにしてもどういう記憶力してるんだこいつ。彼氏の名前を忘れるのもやばいが自己紹介の意味を忘れてるのもやばい。

いや、待てよ、昨日ユーグさんが呪子の説明の時になんか例を挙げてなかったか?

この世に存在するすべての魔術を無詠唱で扱える代わりに記憶力が極端に悪い。

しかも、彼の口調は実際にその本人に会ったことがあるようなものだった。

間違いない。彼女がそうなのだ。俺は確信を持って尋ねる。


「ユーグさん、シーナさんが話に上げてた魔術完全無詠唱の呪子なんですか?」

「おっと、バレるのが早いな。本当は迷宮(ダンジョン)でその実力を見せたかったんだが…さすがは()()()だ」


 …ん?俺って今思えばユーグさんに自分の名前を言ったことあったか?ない、多分。

あ、でも、もしかしたら名乗らない俺に痺れを切らして冒険者登録のところを見ていたのかもしれない。

確か係員さんが俺の名前読み上げてたもんな。

このことについては深く考えないでおこう。

変に深読みしてしょうもない真相だったら萎えるもの、間違いなくな。

よし、聞かなかったことにしておこう。

今度こそガチの自己紹介だ。


「えっと、ミツセ・ルパンです。魔法は今のとこ使えないですけど、結構ぶっ飛んだ身体能力してます」


そう言い終わらないうちに、シーナさん(?)が俺に手を翳した。

〈鑑定魔法〉か。これ使える人初めて見た。

というか俺の身体能力ってどう考えても『呪い』っぽいよな。

権能って複数所持とかできるのか?


「……どうやら本当、みたいだね。身体能力の数値がMAXになってる」

「え?身体能力は呪子の権能じゃないんですか?」

「えーとね…どういう違いがあったっけ?忘れちゃった」


 それぐらい覚えてろよ…ま、そんな都合がよくいく訳がない。

でも、彼氏の方も結構適当な性格だしな…

そういうところは気が合うな、さすがリア充。


「なんかな、人族特有の能力値みたいなやつだったかな?俺もわからん」


 予想的中。適当なやつしかいねえ。

そりゃ「スーパーカラフル」とかつける人たちだし、ある程度覚悟していた。

今からパーティ名は「お似合いカップル」にでもしときなさいな。


「わからないなら大丈夫です。で、今日はどうすればいいですか?」

「えーとな…とりあえず迷宮(ダンジョン)に潜ってそれぞれがどれぐらいの戦力なのか確認だな」

「ユーグ…!だん、じょんって?」


 おお、彼氏は彼女に比べると幾分か役立つな!

それに比べてシーナくん、あなたはどうしたんですか。

ここまでだとは思いませんでしたね。

ユーグさんが一通りの説明を終えた後、俺らは三階の庶務カウンターへ向かった。

パーティの登録をするためである。

B、B、そしてFのB+ランクパーティ。

こうやってみるとどういう差をしてるんだ。

ちなみに、複数人の同ランクがいるとプラスとして表記されるらしい。

Fで作られた穴はなかったことになるとは、素晴らし…いや、けしからん制度だ。


「Fランク冒険者のミツセ・ルパンさんをB+ランクパーティの『スーパーカラフル』に登録しますが宜しいですね?」

「「「はい」」」


 おっと、今回の担当者は例の失礼な人ではなかった。一応ギルドにもまともな人間がいるらしい。

これで晴れて俺もパーティの一員だ。

早速、迷宮(ダンジョン)へ潜ることにしよう。


……が。しょっぱなから俺は挫折した。

ギルドを出た瞬間に目に入るのは、長大な列。

元の世界にいた時から俺は待つのが苦手だった。

前回潜った時は跳躍して列をすっ飛ばしたが、さすがに今回はできない。

しかし、ユーグさんは慌てていないように見える。

この人はこういう所も適当なのか?

 俺は思わず聞いた。


「あの、この列ずっと並ぶんですか?」

「バカ言え、並べるか。まあ見てな。シーナと俺がなんとかするさ」

「うん!安心して!…で、ユーグ、どうするんだっけ…?」

「えっと、まずは空中に転移して…」


 もう彼女には驚かなくなったぞ。少しずつ慣れた。

そしてとられた手法は、結構荒っぽかった。


『瞬間移動』(テレポーテーション)


 彼女がそう唱えた瞬間、俺らは時間差もなく数百メートル上空へ転移した。

当然落下を始め、突然のことに、驚き慌てる。

しかし、そのスピードがそこまで速くなる前に——

 ユーグさんが、動いた。


「この魔法は使い続けてきたからな!

 〈獣属性魔術〉『飛行(フロート)』!」

 

 その瞬間、俺ら三人の体がふわりと浮き上がった。

下から何か強い風で持ち上げられるような感覚を受ける。

シーナさんも何か呟いていたが、安定させる術か何かだろう。

続いて、もう一度シーナさんが魔術を行使する。


「〈水属性魔術〉『濃霧(ミスト)』」


 俺らの姿を下の人々に見えないようにするためだろう。

周りには雲があるからあまり違和感は覚えないはずだ。

仕上げとばかりにシーナさんの魔術が行使される。


「〈召喚魔術〉『不死者小隊召喚アンデッドプラトゥーン』」

「おお…すごい」

「だろ?シーナは可愛い上に強いんだ!凄いだろ?」

「ユーグ…恥ずかしいからやめてよ?」


 わざわざ空の上でもバカップルやるのやめてくれ。

ここで爆発させてやりたくなってしまう。

しかし、シーナさんがやったことは普通に凄いが、結構問題があるのではないか?

どうやら冒険者たちが並んでる列の近くに不死者(アンデッド)の小隊を召喚したらしい。

多分それで列を騒がせてる隙に転移するつもりなんだろう。

戦略としては正しいんだろうが…それで人死出たらどうすんだ。

列の順番を早めるためだけに冒険者殺すのは良くないと思う。

まあこないだ戦ったとこだと不死者(アンデッド)って単体だと結構弱かったが、束になるとちょっと苦戦する人がいないとも限らない。


「よし、シーナ、そろそろいいと思う」

「わかった!『瞬間移動』(テレポーテーション)っ!」


 無事、俺らはあと五分並べるぐらいの近さのところに転移した。

そして、違和感がないように全員で戦う。

目の前にはあと六、七体の不死者(アンデッド)が残っていた。

しかし、何人か冒険者風の人も倒れている。

死んではいなさそうだったのでよかった。死人が出たら示しがつかない。

まあ不死者(アンデッド)如き俺の敵ではない。拳一つで貫通だ。ま、胸を貫かれたぐらいでは奴らもは死なないが。

俺の隣で戦っていた冒険者がちょっと驚いた顔で俺をみる。

悪い気分はしないな。


「…お前、凄いな!」

「ありがとうございます。このまま全体倒しましょう」

「ちょっとやる気が出てきたぜ。ありがとよ」


 残りの不死者(アンデッド)も倒そうとした時、天から光が降りてきた。

敵の攻撃か…と思ったところ、目の前の不死者(アンデッド)が次々消滅していく。


「〈神聖魔法〉『浄化の閃光(ホーリーフラッシュ)』」

「何だと…神聖魔法とは…!」

「そこのお方、どうか我がパーティへ!」

「いやいやこちらに…」


 結構騒ぎになってしまった。神聖魔法使いはどこでも貴重だな。

というかシーナさん、何でも使えるからって神聖魔法はチートだろ。そりゃ不死者(アンデッド)には特効だ。

ということで、怪しまれることもなく、征討は終了し列も大幅スキップできた。

大・成・功ってわけである。問題なく全て終わっ…いや、問題はあったか。

なんかシーナさんが神聖魔法を撃ったあと疲れ気味だ。

ユーグさんがずっとそばで支えてるからいいけど。

魔力切れとかかな?

まああれだけの威力があればそれも頷ける。


 ちょっと紆余曲折あったが、かくして俺らは『竜王の家』の入り口に立った。


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