第十九話 ドラゴン
今日は仕事でナーラ邸に。
「ドラゴンが現れた」
「ドラゴンが? どっちだ」
「攻撃的なドラゴン、話ができないやつね」
「厄介だな」
この世界には大きく分けて2種類のドラゴンがいる。比較的温厚で話ができるワイズドラゴンと凶暴で攻撃的なフィアスドラゴンの2種。
ワイズドラゴンとは不可侵の契約をしており敵対することはない。一方フィアスドラゴンは誰これ構わず襲う。要は魔獣である。
「という報告があがったんだけど、なんだか胡散臭くてね」
「ふむ?」
「フィアスドラゴンって暴れ狂うんだけどその痕跡がしょぼいというか。地面えぐったり岩を破壊した跡はあるけど魔戦機にもできる程度のことなのよね」
「馬車と積み荷、御者と作業員は崖から落とされたとか。それが2回、しかも同じ護衛のメンバーがドラゴンに襲われている。護衛はみんな無事」
「そいつは怪しい」
「でしょ? ただ証拠がなくてね。一応その場所にドラゴンが住んでいる可能性も捨てきれないし。何度か討伐隊を組んで探してみつからなかったけど」
「そこでロイにお願いしようかと」
「潜入調査か」
「ま、そんなところ。すでにファティアの部下さん達の力を借りられる手はずになっているわ」
3日後。
「よろしくおねがいしまーす」
「はっは、よろしく」
俺は護衛の一人に話しかけた。
「巨大な馬車の後方に荷車を取り付けてあるわけですね」
「馬、護衛車、荷車という並びだな」
「ギルドで、作業員としてこの仕事を受けたんですけど、結構やばい仕事だったみたいですね」
「大丈夫だって。その場所にはドラゴンはいなかったって話だったし。流石にどこかへいっちまったんじゃないかな」
「そうですよね」
しらばっくれながら適当に話をした。
「そろそろ出発します」
「了解ー」
皆馬車に乗り込む。
数時間後、例の崖付近に。
「ここですね。こちら側は森があって雰囲気がありますね。今にもドラゴンが出そうな」
「出やしないさ」
「グゥォーーーン」
「なんの音だ?」
「ド、ドラゴンだ! ドラゴンが出たぞ!」
「そんなばかな!」
「バキャーン」
「今度はなんだ!?」
「ドラゴンが何やら飛び道具を! それで積み荷の連結部分が破壊された!」
一旦止まる馬車。
護衛全員が魔戦機に乗り込み、ドラゴンの鳴き声がする森に対して構える。
「お前らは逃げろ。俺たちはここでドラゴンを食い止める」
「しかし」
「早くいけ!」
「わかりました」
俺と数人の作業員、ファティアの部下はこの場から離れた。
彼らが見えなくなったくらいで部下の人に話しかけた。
「ここらで降ります」
「ええ? 生身では危険です」
「大丈夫です。準備はしてありますから」
「……ロイ様がそうおっしゃるのなら」
「馬車はそのまま街の方へ」
「了解しました。気をつけてください」
「わかっています」
そこから森の中を歩き彼らの近くへ。
「がーっはっは! 今回もうまくいったな!」
「さすがに3回目だから難しいと思ったけどな」
やはりというか。彼らは黒か。
「だからよ。わざわざドラゴンの鳴き声にそっくりな音が出せる楽器、ドラゴンフルートを用意したのよ」
「見事に決まったな。俺もあの音を聞いて本物のドラゴンが出たかと思っちまったよ」
「必死に練習してたぜ。人がいないところでな」
「連結部を剣で切ったときはバレやしないかとひやひやしたな」
「なに、アイツラはドラゴンの鳴き声に夢中だったさ」
「それに最悪皆崖下へ行ってもらえばいいだけだ。前2回と同じようにな」
「それもそうだな」
前2回、彼らと同行した御者と作業員は亡くなっている。
(なんだかやりきれない話だ)
(彼らの悪行もここまでです。それ相応の罰が待っていることでしょう)
(そう、だな)
「それにしてもうるさいな」
「グゥォーーーン」
「確かに。そろそろ止めようぜ」
(奴らが集まったところを叩く)
(はい)
奴らに尾行がバレないよう、遠くから後をつける。
「ん? なんかデカイのが」
「ド、ドラゴン! 本物のドラゴンが!」
「に、にげ」
「ズグワーーーン」
「アビャ」
ドラゴンは炎のブレスを口から発射。彼らが乗っていたミスリルの魔戦機は溶け、金属の塊となってしまった。
「ありゃダメだな」
あたりを見渡す。
「ドラゴンフルートの奴等も全滅か。因果応報だな」
(ロイ様、そろそろサイファーを)
「わかっている」
サイファーを呼び出す。
「ワイズドラゴンかもしれないから一応確認してみよう」
「そうしましょう」




