第十話 商売人
今日は建国記念日。日頃から賑わっている市場を見ていたからそうたいして変わらないだろうと思っていたが、想像をはるかかにこえる程の人、人、人。
人混みを乗り越えギルドに到着、知り合いの冒険者とお話を。
「滅茶苦茶居るなー」
「国中から人が来るって言ったろ? そらたくさんいらーな。ガーッハッハ!」
すでに出来上がっているな。
「いつも忙しいからな。朝から飲めるなんて今日くらいよ。ロイものんびりするといい」
「それもそうだな」
今日も狩りをしようかと思っていたけどそうしようかな。そもそも今日狩り出来るの? って状態だし。
「ここに居る連中皆酔っ払ってる」
「酒が入ってないのは受付の子くらいだ」
ギルドから出て街を散策。散策と言うか人波に乗っている感じだが。
「適当なお店に、いや今日くらいは奮発しようかな」
すっかり節約家になった俺。お祭りの日ぐらい、今日くらいはパーッとやろうかな。
「おっす」
知らない女性に話しかけられた。
「あの、どち」
と言いかけたところで気が付いた。燃えるような髪、ファティアか。いつもと違う町娘ファッション。
「一瞬わからなかった」
「ふふ。今日はお忍びでね。戦う王女ファッションではこーいうとき動きづらいから」
「それで変装しているのか」
「そそ」
「しっかし奇遇だね。丁度いい、一緒に見て回る?」
「いいとも」
(ムムム、王女様ですか)
(ああ)
(もしかしたらあれやこれやと情報を引き出そうとするかもしれませんから気をつけてくださいね!)
(わかってる)
アイの心配をよそに特に問題なく、一緒に楽しい時間を過ごした。
「アハハ、楽しかった」
「王女稼業も大変だろう。こーいう息抜きも必要よな」
「そのとーり。ロイはわかってる」
「まあ私の場合は普通の王女とちょっと違うんだけどね。王子がやるような仕事をやってるし」
「男勝りだー、カワイクないだー、色っぽくないーだのよくいわれるよ」
「ハッハ、今日はかわいいって」
「そ、そう? いやそうじゃなくて、いつもって言わないと」
「ハイハイいつもいつも」
「……仕事減らすわー」
「今日もかわいいよ、ファティア」
「OK!」
(く! ロイ様に無理やり! うらやましい!)
「じゃ帰るねー!」
「それじゃあな」
元気よく帰っていくファティア。
(王女め!)
(せっかくのお祭りだしアイになにか買ってやりたいところだが)
(え? ええ!?)
(オホン、お気持ちだけで。ヌフフ)
その後はちょっと良い飲み屋へ。
それから二ヶ月。朝起きて食堂に行くと女将さんから手紙をもらった。
「なになに?「会わせたい人がいる。私達が戦っていたときにいた人間だから正体に関しては問題ない。金策に関してのお話でもある。ロイの答えを部下に伝えてくれ」とな」
(どう思う、アイ)
(そうですね、会っても問題ないかと。二ヶ月付き合ってみて王女は悪い人ではない感じがしました。ですから我々を悪いようにはしないでしょう。完全に信頼するわけではないですが)
(んむ。会うか)
「ということで」
「わかりました」
そして二日後に会うことに。
おおっと、今回は多少お金もあることだしビシっときめていくか。王女の紹介なわけだからな、失礼のないように。
「こちらです」
指定された店に。前と同じところだな。
店の奥へ。扉を開けるとファティアともう一人女性が。
「初めまして、ナーラです」
「初めまして。ロイです」
金髪ロング、歳は俺と同じくらいか。
「あれー、私と会う時より良い服着てない!?」
「ファティアの紹介なんだから失礼のないようにってね。それに会う時はいつも仕事の時だろ」
「それはそうだけど」
「あっはっは、仲がいいのねお二人さん」
「ふむ、皆歳が近いし会話は普通でいこう」
「そのほうが楽ね」
「そうしよう」
「さて、先に話を済ませちゃいましょう」
席につく。
「それで、今日二人を会わせたのは主に仕事の件で。彼女は商人でね。手広くやってるんだ」
「私と組めば色々紹介するわ」
「それと個人的にも会いたいって言ってたね」
「フフ、ファティアを倒した人なんだから興味が出るのは当然でしょ」
「ははは、そんなに大層な人物ではないけど」
「いや、想像以上よ」
「そなの?」
「おっと話がそれたわね。で、どうする?」
「それではお願いしようかな」
「わかったわ。今後は「レフトレス」向けの仕事を融通するわね」
「助かる」
「さーて食べよう!」
俺とファティアは肉にがっつく。
「もう、ファティアったら。もう少しお行儀よく」
「ふたりとも友達みたいなものだからいいの!」
「あ、ロイさんはがっついてたほうが男らしいからそのままで」
その日は深夜までにぎやかな酒宴が続いた。




