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エンブレムケース

「という訳でモンスター用のご飯ある?」


「あるにはあるけど普通買溜めしとくもんじゃん?」


 仕方ないだろ。昨日来たばっかりだし。


「とりあえずいくら............ってさっき全部使ったんだった!」


「ペン!?ペンのご飯はっペン!?」


 きょとんとした顔をした受付嬢のルーンさんに事情を説明する。すると話が終わった途端、弾けたように笑いだした。


「何それウケるwヒラタっちは絶対将来大物になるよw」


 笑いながら言われてもなぁ。

 あ、そういやリヴァイアさんから貰った金貨を崩したやつが残ってた。何とか食えそう。ありがとうリヴァイアさん。


「あ、探したらありました。とりあえずペン太と俺の飯を下さい。」


「はーい。んじゃ、ちょっと待っててね。」


 そう言いながら腕を捲り、奥に消えて行った。

 もしかしてルーンさんが作るの?不安しかないんだが。


 とまぁ待つこと数分、出てきたのはボリューミーな肉とパン。


「ごめん、肉焼いて調味料掛けてパンつけるだけなのになんでこんなに時間掛かったのか聞いても良い?」


「だってアタシ料理下手だもん☆」


「これってヒラタとペンが一緒に食べるやつペンか?」


「華麗にスルーしてくれたね。まぁ、そうだけどさ。」


 肩を落としながら、ルーンさんが肉とパンをテーブルに乗せる。


「いただきまーす。」


 まずはパンを掴み口に放り込む。

 うむ、うまい。昼飯うまい。

 ペン太が啄んでいる肉を千切り食べる。

 固いがハウンドの肉に比べたら臭みもないし、うまい。


「そういやペン太ってパン食わないの?」


「ペンは雑食だペンけど、やっぱり肉の方がうまいペン。あ、水が欲しいペン。」


「あ、俺も。」


 ルーンさんが奥に消えていくのを見送りながら、パンをパクパク、肉をモグモグ。あっという間に消えてしまう。


「はーい、水でーす。」


「あ、ありがとうございます......ってなんすかそれ。」


 ルーンさんが持ってきたのはバケツいっぱいに入った水だった。


「あ、ヒラタっちはこっちね。」


 テーブルに水が入ったコップが置かれる。


「あのバケツは?」


「ペン太っちのぶんっしょ。ペン太っちって氷系っしょ?だから水分たくさん必要っしょ。」


 まじかよ。そんなこと言ってないのに見抜いたのか。すげぇなルーンさん。

 横を見るとペン太がバケツに頭を突っ込み水を飲み干していた。


「ぷはーペン!生き返ったっペン!今なら絶対零度の吹雪が吐けそうだっペン!」


 すごい自信だな。


 テーブルに置いてある水を飲み干し、立ち上がる。


「よし、会計をしよう。いくら?」


「銅貨五枚だよ。」


 ポーチから銅貨を五枚出して渡す。


「あ、そういえばエンブレムケースってある?」


「あー、やっぱ買う?」


 いや買うでしょ。


「まぁ良いけどさ。あんまりエンブレムに閉じ込めないでやってね。」


 あー、やっぱりそういうのあるんだな。


「とりあえず銀貨三枚だけど。」


 意外とお高め。しかし払えるぞ!


「払うよ。どうやって使うの?」


 赤く平べったい板を渡してきた。それは開閉ができるようで、窪みが三つあった。


「見ての通り、エンブレムケースは一人一つしか持てない。んで、エンブレムケースは一つで三体までしかモンスターを収められない。主な目的はモンスターの運搬。瀕死になったモンスターを強制的にエンブレムケースに戻すことなんかもできるよ。注意、エンブレムケース内でもお腹は減るし、あんまり快適じゃないから緊急性の無い場合はあんまり使わないこと。OK?」


「OK。」


「そもそもモンスターをエンブレム化するのは人を狭い部屋に押し込むようなもんだから、出来ればあんまり使ってほしくないの。」


 まぁ俺も狭い部屋に押し込まれるのは嫌だからなぁ。

 ペン太の場合はまだ小さいから大丈夫だろうけど、ドラゴンみたいなデカイモンスターって街中に出して良いのか?


「とりあえず一回お試しで。この窪みを............どうするの?」


「普通に押せば良いよ。戻れーって感じで。」


 なるほど、戻れーって感じか。

 よし、戻れー。


 ヒラタが念じながら窪みに触れるとペン太の体が光の粒となりエンブレムケースに吸い込まれていった。そしてエンブレムケースには六角形のメダルのような物がはまっていた。ヒラタはこれがエンブレムであるとすぐに理解した。


「エンブレムケースって、モンスターをエンブレム化して保存するだけなんだよね。むしろ、エンブレム化するだけの物って言った方が正しいかも。あ、エンブレムは適当に投げればモンスターが出てくるよ。」


 oh、何か見たことのあるような設定。


 と思いながらエンブレムを地面に叩きつけると、ペン太が煙に包まれて出てきた。


「どうだった?」


「ただの狭い部屋だっポサ。中から外の様子は見えるポサ。」


 ほうほう、良いね。


「よし、じゃあ大体揃えるものは揃えれたかな。」


「ふーん。ところでその鞘、魔術が編み込まれた魔道具の類いだよね?買ったって言っていたけど、いくら?」


 ルーンさんもやっぱり気になるもんなのか、と意外に思うヒラタ。もしかしたらモンスターギルドは人気がないから、こういうのって珍しいのかもしれない。


「金貨一万枚です!」


「へぇ、随分叩いたね。その百倍はくだらないよ、これ。」


 衝撃の事実!

 もしかして温情だったのか!?


「効果を偽ってる可能性が無いわけじゃないけど、見るからに品質はすごく良いよ。まぁどこで買ったのか知らないから、なんとも言えないけど。」


「どこにもない店で買いました。ここの近くにありますよ。」


 俺がそう言うとルーンさんは首を傾げる。


「聞いたことないな。一応、王都にある店は全部把握してるはずなんだけど。まぁ、ヒラタっちが無事で帰って来れたなら大丈夫っしょ!」


 入ったら無事で帰って来れない店とかあるのかよ。怖。


「まぁ、とりあえず鞘も買えてエンブレムケースも買えたし、良かったってことで!後は何かあったっけ?」


「やっぱり冒険者といえば依頼を受けるものだっペン!」


「そうだな。ルーンさん、何か依頼ない?」


「無いね。」


「無いの!?」


 いや普通あるでしょ!依頼がそんなに少なかったら冒険者なんて失業だよ失業!それに最近は魔王がどうたらこうたらで依頼があんまり受注されないとかって冒険者ギルドの受付嬢さん言ってたよ!


「いやぁ、モンスターギルドって人気ないから依頼があんまり持ち込まれないんだよね。ていうか他のギルドに吸われてる。」


 依頼を吸われるなんてことあるのか。


「ギルド間もわりとギスギスしてるのよ。アタシは先代のギルドマスターの考え方に惹かれてモンスターギルドに所属して、ギルドマスターの地位を受け継いだ。そっからだよ、ギルド間で仲が悪くなったの。色んなギルドのギルドマスターが一気に変わってね。特に戦士と魔術師はバチバチ。」


 ん?サラッと流したけど今ギルドマスターって言った?あなたが?


「市民が依頼を流すのは大体冒険者ギルド。冒険者ギルドはそこからギルドの特性を考えて、より依頼を円滑に達成できそうなギルドに送るの。で、余ったのが冒険者ギルドに残ってるってわけ。それでそれを決定する役職が各ギルドから一人づつ出るんだけど、アタシ忙しくて出れないんだよねw」


 いや笑ってる場合じゃないでしょ。


「ちゃんと依頼取ってきて下さいよ............。」


「アハハ、そうだね。今度からそうしよっか。」


 このギルドには依頼もないのか。だったら冒険者ギルドに行くしかないのかなぁ。


「ちなみに冒険者ギルドの依頼は早い者勝ちだから朝の内にほとんど取られてるよ。今行っても残ってないんじゃないかなぁ?でも最近は依頼を受けない冒険者が増えてきてるらしいし、どうだろ?」


 ん?冒険者なのに依頼を受けないの?


「依頼を受けないと収入を得られないと思うんですけどー。」


「いやいや、普通にモンスター狩ってその素材を売ってるだけだから収入自体はあるんだよ。メリットは安定してることで、デメリットは依頼より報酬が少ないってことかな。ただモンスターによっては対策してれば命の危険がグッと減るやつもいるから、そっちを選ぶ人も多いみたい。」


 へぇ、それなら俺もやってみようかな。朝から野郎どもに揉まれながら依頼を取りに行って危険な目に合うよりも安定して、しかも安全に稼げる方が良いだろうし。


「まぁ、どっちにしても今日くらいはゆっくりしてった方が良いと思うよ。というか、まず実戦よりも先にしなきゃいけないことがあるっしょ。」


 なんだろう?訓練とか?でも俺、グッさんとかもぐゾンさんとかからちゃんと戦い方を教わったから大丈夫だと思うけどな。


「とりま、着いてきて。」


 そう言うとルーンさんは受付を飛び越えて奥へ消えて行った。

 ペン太と顔を合わせ、無言で頷き、追いかける。


 受付の奥には無数の部屋や裏口のようなものがあったが、その脇に一際目立つ階段があった。ルーンさんがそれを降りるので、俺も追いかけて階段を降りる。


 そこには特徴のない扉があり、開けると中は図書館になっていた。


「すっげえ。」


 その図書館はヒラタの身長の十倍の高さまである本棚に本が収められていた。

 それらは古い物から新しい物まであり、所々に脚立が置かれていた。


「ここはモンスター図書館。モンスターに関する資料とかを集めて保管してるの。モンスターを分類したり、モンスターの起源について解説したり、後は種類別にモンスターの攻略法を書いた本なんかもあるよ。」


 マジかよ。つまり世界にはこれだけのモンスターがいてもおかしくないってことか?全部合わせたらすごい数になるぞ。


「まずは、ここでモンスターについての知識入門編くらいは身に付けていかないと。意気揚々と初依頼に行った冒険者が死体になって帰って来るのは嫌だからね。」


 そんな恐ろしいことあるのか。そうだよな。異世界だもんな。


「知識とは力なり、って言葉もあるくらいだし、モンスターギルドとしてはせっかくある資料を使って欲しいんだよね。先人が後世の冒険者のために命懸けで作成したんだもん。」


「ほへー、すごいなーゴフッ!アシガー!」


「あ、本棚の角に足ぶつけないように気を付けてね。」


 ぶつけてから言わないで下さいよぅ。

 つうかめちゃくちゃ痛いんだけど。


「オススメはやっぱり『初心者用モンスター図鑑』とか『モンスター別逃げ方講座』とか。あ、でもこれは絶対読んどいた方が良いよ。『世界!ヤバいモンスター集』」


 いや、それは良いかな。

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