王都到着
馬車に乗って門に並んでいると、リヴァイアさんが外を見て指を指した。
「ヒラタ君、少し見てみると良い。面白い物が見れるよ。」
なんだろう?面白い物?
疑問を抱きながら窓から身を乗り出して見ると、どうやら豪華絢爛な馬車が横入りをしようとしている。
どこの世界にもこんな物はあるのか、と呆れたが驚いたのはその馬車が次に取った行動だ。
横入りが出来そうにないと知ると、その馬車はそのまま門に直行したのだ。
「リヴァイアさん、あの人なにやってんですかね?」
リヴァイアさんは無言だったが雰囲気的に見てみなよ、という感じだ。
門に直行した豪華絢爛な馬車には従者が居らず、馬がどこからか何らかの指示を受けて動いている事は分かったが、その構造は良く分からなかった。
豪華絢爛な馬車はそのまま門に着いてしまった。
門番の人は警戒しているものの驚いてはいない。こういう事には慣れているんだろうか?
今まさに入門手続きをしていた馬車の従者は非常に驚いている。ここからでも見えるくらい。非常に。
そうこうしている内に、豪華絢爛な馬車からこれまた豪華絢爛な服装のふくよかな............いや、豪華絢爛な服装のデブが出てきた。
なんというか、あの嫌な感じと丸々と肥えた感じはまるで――――
「あの人もしかして貴族ですか?」
「その通りだとも。しかし、裏王都の貴族だよ。」
マジかぁ。裏王都の貴族ってあんな感じなのかぁ。いやまぁ、普通異世界の貴族って言えば思い浮かぶのはあんな感じの貴族かなぁ。リヴァイアさんと見比べると、その嫌な感じがますます醜い。
「リヴァイアさんみたいな貴族に拾って貰えて良かったです。」
俺なら絶対あんなのには拾われたくないね!
「フフ。そう言って貰えると嬉しいね。」
リヴァイアさんと雑談していると太った貴族に動きがあった。
門番の一人に近付いて何か渡したのだ。
だが、遠いのと小さいので俺の視力を持ってしても良く見えない。
「そんな時はペン太だ!あの貴族が渡してる物、分かるか?ペン太!」
「やってやるペン!む、むむだペン!あれは金貨だペン!」
なにぃ!金貨ぁ!?それはつまり
「賄賂か!?」
「賄賂だよ。」
賄賂なの!?
「それ、それダメなやつじゃないですか?要は金渡して並ばず入ろうとしてるって事でしょ?」
「そうだね。ダメなやつだね。」
あっれぇ?リヴァイアさんこういうの見慣れてるタイプ?見慣れてるやつなの?こういうの。
「まぁ、賄賂なんて王都の門番が受けとる訳無いんだけどね。」
リヴァイアさんが呟いた直後、門番達に動きがあった。
つまり、一斉にその貴族を取り押さえたのだ。
貴族はなにか叫んでいるようだが、一人の門番が立たせて連れていってしまった。
「王都のイメージがさらに良くなったのであった。」
いやー、なんというかクリーンだよね。不祥事絶対許さない感じだよね。
「フフ。ヒラタ君なら大丈夫だと思っているが、くれぐれも馬鹿な真似はしないでおくれよ?僕を失望させないでくれ。」
は、はい!俺は大丈夫です!多分。
「僕達の順番がくるまでゆっくり待とう。大丈夫。僕の場合は顔パスで通るから。君は僕の友人として紹介するよ。」
か、顔パスで通るのか。
■□■□
「やぁ、通るよ。」
「これは!リヴァイア様ですか。どうぞお通り下さい。おや、そちらの少年は?」
「彼は僕の友人さ。一緒に通るよ。」
「はっ!分かりました。では。」
ホ、ホントに顔パスだ。
やべぇ。やべぇよ。
リヴァイアさんの顔パスによって水が流れるように王都に入る事が出来た。
「さて、門も通った事だし、僕達はこれから冒険者ギルドに行くよ。君は自由に王都を観光すると良い。」
あぁ、王都に着いたからリヴァイアさんとは離れるのか。
「ここまで乗せてくれてありがとうございました。いつか恩返しします。ほら、ペン太も。」
「ペン!ありがとーだペン!」
適当だなおい。
「フフ。ヒラタ君が立派になる事を願っているよ。」
リヴァイアさんの言葉を聞いて馬車から降りた。
「じゃあまた。」
そう言って手を振ると、リヴァイアさんが降り返す。
それが合図だったかのように、馬車が動き出した。
こういう時は見えなくなるまで手を振るのが常識だ。
まぁもう見えなくなったけど。
「それにしても。」
「王都に着いたペンね。」
そう。着いたのだ。やっと、やっとだ。長かった。
「思えばアンデット領からバラー村、それを経由してここまで......うっ!」
「ペン!どうしたペン!?」
う、うぅ。吐き気が止まらない。車酔い............いや馬車酔いか。
どうしよう。吐きそう。
「うぅ、ペン太、人気の無い場所に連れてってくれ。う!」
ヤバいヤバい。公衆の面前で吐くのは流石に............うぅ。
流石に王都というだけあって人が多すぎる。
「ペン!?ペン!?こ、こっちだペン!ついて来るペン!」
ペン太の背中を見ながら付いていく。
う!そろそろ真面目にヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
「こ、この路地裏ならどうだペン?」
うぅ!
吐き気を押さえながら路地裏に駆け込む。
路地裏は良い感じに暗くて、人気も無い。
助かったと思いながら吐く。
「おろろろろろろろ。ごぶぇ!」
むせた。
「うわぁペン!汚いポサ!」
うるせぇ、分かってらい。
くそぅ、吐き気が収まらねぇ。ただでさえ何も食ってなくて胃酸しか出てきてねぇってのに。
「おげぇ、おげええええ。ごほっごほ。」
はぁ、はぁ、キツかった。
「終わったペンか?終わったペンね?なら早くこの場を離れるペン!」
わあったわあった。離れりゃ良いんだろ。
「それにしても、この地面とか建物、木で出来てる訳じゃないが、一体何で出来ているんだ?」
吐いていて気付いたのだが、一目見て金属製だと分かる建物はあるが、ほとんど良く分からない建材で出来ている。なんだこれ。
「そんな事、ペンが分かる訳無いペン。」
まぁそうか。
「ともあれ、王都には着いた。祝福の叫びをあげたい所だが、迷惑になるだろうから止めておこう。」
「路地裏にゲロ吐くのも迷惑だペンよ。」
うるせぇ。
「ともあれ、これから俺達は............そうだな。冒険者ギルドに行って冒険者登録しようぜ!」
「それならリヴァイアペンに付いていった方が良くなかったかっポサ。」
まさにその通りじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ていうか冒険者ギルドの場所なんて知らないよ!
「まずい!ペン太!冒険者ギルドの場所なんてわかんねぇよ。どっかに地図とかないの?」
「そんな事知らないペン!そもそも何でもかんでもペン太に頼るなっペン!」
正論じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁ!
いや、一旦落ち着け。
そう、まずは状況を把握しよう。
ギルドの場所は分からない。案内してくれる人もいない。土地勘もない。詰んでない?
「っていうかよくよく見るとこの路地裏、恐ろしいくらい暗いな。」
まるで闇のように暗く、先がほとんど見えない。
「もしかしたら、この路地裏を進んで行けば、誰かに会う事ができるかもしれないポサ!」
最悪、それもありだな。
「確かに俺の目の前には恐ろしく暗い道がある。どこかに案内してくれる優しい人がいなければこの路地裏を進むのも有りかもしれない。」
そう言いながら路地裏に背を向ける。
しかしだなぁ。............暗い!なんか迷いそうなんだよな。
それに俺の本能が行くべきではないと叫んでいる。
「それなら私が案内して差し上げましょうか。」
「そうだよなペン太。こんな人気の無い場所に案内してくれる優しい人なんていないよな。............今なんて?」
よくよく考えるとペン太は俺の目の前にいる。嘴は開いてないし、そもそも声は後ろから聞こえたような?
振り替えると、路地裏の闇に紛れそうな黒い服装の――――
「ぎいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁだペン!」
人が出てきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!なんで!?どうして!?っていうかどこから?さっきまで人なんていなかったじゃねぇかよぉぉぉぉ!
突然現れた女性は二人の様子を特に気にする事も無く、二人を静かに見つめている。しかし肝心の二人は突然の出来事に驚き後退りしている。
「あわあわあわあわあわあわあわ、あ、え、ええと、あ、あの、貴女は?」
モンドゴリアワームの時と同じくらい動揺しているヒラタだったが、勇気を振り絞りなんとか言葉を発した。
「名前ね。............そうね。どこにでもいる女の子、と呼んで頂戴。」
なんじゃそのRPGのNPCみたいな名前は!ていうか、長いわ!
しかしそんなツッコミは言葉にならなかった。
ガタガタと震えている。
「い、一体どこから............?」
「最初から居たのだけれど。」
最初から?最初ってどこやねん!
「貴方達が駆け込んで来た時には居たわ。」
おいペン太ぁ!どーゆー事だぁ?
しかしペン太の方を見ると泣きながら首をフルフルと横に振っている。
気が付かなかった、という事だろう。
「あれ?ていうか最初から居たって事は俺がゲロってた所も............?」
「えぇ。瞼に焼き付けておいたわ。」
くっそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!




