リヴァイアさんの贈り物
リヴァイアさんと雑談しながら馬車に揺られていると、爺やさんから声が掛かった。
「坊っちゃん、ヒラタ様。王都が見えて参りました。」
おぉ!ついに、ついにか!
「うーん............もう着いたペンかぁ?」
寝ていたペン太が目を擦りながら起きた。
もう、というより俺からすればようやくだ。ようやく王都に着くのだ。一ヶ月位アンデット領で修行し、ようやく、ようやく王都だ。長かった。
王都に着いたら何しようかな?
まずはそうだな。モンスターギルドで冒険者になろう。いや、冒険者になるには冒険者ギルドに行かなきゃいけないのか?まぁそこら辺は良いや。他の転生者との合流もいるなぁ。でもぱっと見て転生者かどうかが分からないからなぁ。転生者の集会とかあったら良いのに。後はそうだな。テキトーに冒険してうまい物食って元の世界に戻る方法を探して戻る!これが目標だなうん。
「そう言えば、ヒラタ君。君は王都は初めてだったよね。窓から見てみると良いよ。」
そうだったそうだった。
まぁ、ラノベでも王都ってのはほとんど同じような感じだし、木製の建物の集合体みたいな感じでしょ。
そう思いながら、窓から身を出す。
目の前には過ぎ去っていく木々と――――
金属光沢のある壁で囲われた高層ビルの集合体があった。
「はぇ?」
王都............異世界において高層ビルなんてあって良いだろうか?否、断じて否。それなのに、目の前には塔のように高くそびえる高層ビルがたくさんあった。あれがレンガ作りの塔なら、まだ納得出来ただろう。しかし見間違っている訳ではなく、金属でビルが作られている。間抜けな声が出るのも仕方ないだろう。
「すごいだろう?村や街なんかと違って都市は重要な場所だからね。それが王都ともなればこの位の防御力を誇る。これならどんなモンスターの攻撃も耐える事が出来るよ。」
すごい。確かにすごい。
高層ビルとは言っても日本では見れない光景だ。
日本にはモンスターはいないから、あんな金属の防壁なんて無いからだ。
俺が想像していた異世界ととことん違うなこの世界。
まさか異世界スチームパンクだったとは。
「あの中心の高いのは塔だよ。冒険者ギルド本部や王室、議会等の重要な機関があそこにあるんだ。防壁で見えないけれど、下にも色々とあるから、ぜひ見てみると良い。」
ま、まぁ、もちろん下にもあるんだろうけどさ。
いかんせん、ショックがデカイ。
「も、木製の建物とか無いんですか?王都には。」
異世界といえばそのほとんどの建物が木製の筈だ。レンガというのもある。バラー村だってそうだった。王都にも木製の建物があって良い筈だ。まさか、冒険者ギルドとかモンスターギルドとか、酒場まで金属製とかじゃないだろうな?冗談じゃない。
「フフ。面白い事を言うね。木製の建物なんて燃えやすいだけだよ。第七回神観大戦後、王都ではほとんど木製の建物は消えたよ。」
damn it!神は死んだ!
酒場............酒場まで金属に............一体どんな酒場になってしまっているんだ?
「ただまぁ、風情を大切にするような場合、木を使って建てる事もあるそうだ。ギルドの酒場がそうだね。あそこは木と酒の香りが癒しになる。」
sweet!神よありがとう!
いや~やっぱり酒場は木だよ木!
「王都に着いたら目一杯酒飲みたい!酒場で一日中飲んでいたい!」
「フフ。そうか、君は転生者だから飲んだ事があるのだね。それなら新人に対する酒飲みの儀も無事に行けそうだね。」
なに?そんなのあるの?
「ところでヒラタ君。王都の周りにたくさん人がいるのが見えるかい?」
う~ん............あ、見えた。
何してるんだろ?あの人達。
「王都にはたくさんの人達が来るからね。そういう人達に物を売るために、王都の外で商売しているのさ。」
ほへー。でもそれって
「別に王都の中でも良くないですか?」
わざわざ外でやる必要が無いと思う。
「簡単さ。商人が我先にと物を売り付けようとした結果だよ。」
あ、あー。そういう事か。中で商売してるやつらを出し抜く為に外で商売してるのか。門の前なら必ず人が通るからな。
「モンスターや賊、はたまた裏王都のやつらや宗教の過激派などが襲って来ないとも限らない。でもそれすら商人にとっては些細な事なんだろうね。」
やっぱりいるんですね。賊。
「それで、急にどうしてそんな事を?」
王都のガイドでもしてくれているんだろうか?貴族サマにガイドをしてもらうなんて光栄光栄。
「君にはモンドゴリアワームの件で助かったからね。冒険者となる君に、少し餞別をあげようと思って。」
なんやて!やっぱり貴族は気前が良い!よ、太っ腹!
「なら俺、剣が欲しい!マトモなやつ!」
「残念!あそこは剣なんてほとんど売ってないよ。」
売ってないのぉ。
「それならリヴァイアさんは餞別に何をくれるんですか?」
剣じゃなければなんだろう?
「まずはこれを贈呈しよう。」
そう言ってリヴァイアさんがポケットから取り出したのは、黄金に輝く物。
「き、金貨ぁ!?」
は、初めて見た。本物の金貨だ。日本でも見た事なんて無いぞ。
「これ一枚で............そうだね。十日は持つんじゃないかな?ただし、無駄使いはダメだよ。」
十日。マジかよ。
「へへー、ありがたく頂戴致します。」
「フフ。ありがたく受け取りたまえ。」
リヴァイアさんから金貨を受け取る。
ずっしりと重く、撫でると細かい装飾が感覚として伝わってくる。
「おほぅ。」
やべぇ。金貨やべぇよ。
「そして、もう一つ。ヒラタ君、王都に入るならそんなスラム出身みたいな格好は止めた方が良い。という訳で、服をプレゼントしよう。」
服か。あんまり興味無いけど、確かにこの服汚いからなぁ。ちょっと臭いかも。
「まだ、商人群に着くまで時間がある。少しばかり待っていてね。」
はーい。それにしても本当に綺麗だな。金貨。
「ペン!ペンにも見せるペン!」
ペン太が横から金貨を取ろうとしてくる。
ダメだぞ。これは俺の金貨だ。
■□■□
「あの商人なんてどうだろうか?ヒラタ君。」
ん?あぁ服か。
それにしてもいつの間にか商人群の所まで来ていたのか。いやー、金貨の力ってすげー。
「リヴァイアさんに任せます。俺、服とかあんまり分からないので。」
そもそも転生者だから外で服を売るなんて訳が分からない。
まぁ理にはかなってるんだろうけど。
「分かったよ。爺や、目の前、白帽子を被った服商人の近くに寄ってくれ。」
すると、馬車が方向を少し変えて進み出した。
「よし、爺やは先に入門口に並んでおいてくれ。僕達は買い物をしてから行くから。」
そう言うと、馬車は少しスピードを落とし、リヴァイアさんは馬車の扉を開けて外に飛び降りた。
「さぁ、ヒラタ君も。」
ペン太をむんずと掴んで、俺も飛び降りた。
摩擦でずっこけそうになるが、異世界で鍛えた俺ならばこの程度余裕だ。
「ペン!急に何するペン!」
仕方ないだろ。
「さて、君。突然だけど服は作れるのだろう?」
「ヘイ旦那!オーダーメイドですかい。それなら一律で金貨一枚になりますぜい。」
白い帽子を被った商人は安っぽい口調で捲し立てた。
「構わない。彼に、僕の服とそっくりの物を。あぁ、青い所は赤色にしてくれるかい?」
リヴァイアさんが言うと商人はリヴァイアさんの服を観察して唸った。
「旦那の服はかなり高級な素材で作られていて、それと全く同じ素材で作る事はあっしには無理ですぜ。」
確かに、リヴァイアさんは貴族だ。それなりの服を着ていてもおかしくない。それと同じ物を作るのは難しい。ていうか服作るの?今から?
「素材は変えて構わないよ。デザインだけ、似せて貰えれば。」
そう言うと、白い帽子の商人は頷いた。
「それならできますぜ。ちょっとお待ち下さい。」
そう言って白い帽子の商人は横に置いてある白い箱のような物に何か打ち込み始めた。
「出来上がるまでに少し時間が掛かります。お時間、頂きますぜ。」
リヴァイアさんは商人の態度に満足したようで、ポケットから金貨を取り出し、
「先に払っておこう。受け取りたまえ。」
そう言って商人の横に優しく置いた。
「へへっ、ありがとうございます旦那。見たところ、旦那はなかなか良い身分なようですな。貴族ってとこですかい?」
商人だから勘が鋭いな。
「あぁそうさ。貴族だけど、冒険者もやっている。」
「ほへー、やっぱり貴族ってやつですかい。王都の貴族は優しいもんですな。裏のやつらとは大違いだ。」
裏というと裏王都の事かな。
「君、裏王都の出身かい?」
「あっしはスラム出身でしてな。............色々あって王都まで逃げてきて、今は商人をやらせて貰っているんですよ。」
リヴァイアさんはその言葉を聞くと、少し悲しそうな表情になった。
「そうかい。すまないね。思い出させてしまったかな。」
白い帽子の商人は少し笑いながら、
「あっしなんかに同情して頂けるとは、旦那は慈悲深いですね。」
リヴァイアさんの雑談を聞いていると、白い箱が音を出し始めた。
「おっと、できましたぜい。彼の服でしたな。」
そうそう。って採寸とか何もして無いのにもうできたの!?
白い帽子の商人は箱に手を突っ込んで何やら引っ張り出した。
それは............服だな。服が出てきた。
「どうぞ、着てみて下せえ。ぴったりのはずですぜ。」
そう言われたので、人目を気にしながら服を脱ぐ。脱いだ服はそこら辺にポーイと投げておきたかったが、リヴァイアさんがいるのでペン太に持っていて貰う。
「ペン太、これ持っててくれ。」
「ペン!?ペンは雑用じゃないポサ!」
ワガママ言わない!
脱いだ服をペン太に投げておいて、いざ着用。
貰った服のズボンを穿いて、次に上を着た。
なんかよく分からない匂いがするが不快ではない。
「っていうかマジでぴったりだなおい!」
想像以上にサイズが合っている。
「そうでしょうとも。あっしには採寸せずともその人にぴったりの服を作るスキルがありやすので。」
ほへー。そんなものもあるんだ。
「それにしても驚きやしたよ。旦那の連れはモンスターテイマーってやつですかい。その歳なら、冒険者になりに王都へ来たってとこですかい?」
「まぁ、当たり。それで服を新調しようと思って。」
やっぱりなかなか勘の良い商人だ。敵に回したらめんどくさそう。
「気を付けて下せえ。奴さんくらいの歳の冒険者が毎年何人も死んでいやすぜ。あんまり自分の力を過信しすぎねぇようにして下せえ。」
ふっ、俺は実は二十九歳だ。そこら辺のガキと一緒にして貰っちゃあ困るぜ。
「では、僕達はこの辺で。また縁があれば、買いにこさせて貰うよ。」
「ヘイ旦那。今後ともご贔屓に。」
そう言うとリヴァイアさんは身を翻して馬車の方へ歩いて行く。
「ペン太、行くぞ。」
「待つペン、待つペン。ペンに被さってる服を取ってから行けペン。飛びづらいポサ!」
仕方無いなぁ。
ペン太に掛かっている服を取って、くちゃくちゃっと丸めてポーチの中に入れておく。
「さて、ヒラタ君。僕が君に服を新調させたのは見た目の問題もあるが、その防御力の問題もある。」
え?防御力?服なんだから全部同じなんじゃ?
「まず、リラックスして。良いかい?今からちょっと魔力を使って干渉するからじっとしてね。」
え?何それ怖い。
リヴァイアさんは人差し指で上を指し、そこに俺でも見えるほどの魔力を集め始めた。
え?ちょっと待ってちょっと待って。それ見た事あるぞ。スカルラビットが放ってきた魔法とほとんど同じじゃない?待って待って待って待って!
同様している俺にリヴァイアさんは魔力を集めた人差し指をちょんと当てた。すると、その魔力が俺の体を這うように移動し始める。
「ちょっと、え?え?ちょっとリヴァイアさん?え?これ何、なになに、何?」
「大丈夫だ。」
全然大丈夫じゃなさそうなんですけど!
魔力は俺の体の全体を包み込んで、それからスッと消えた。
「い、今のは............?」
リヴァイアさんはフフと笑って答えた。
「付与だよ。水魔法の応用で、君の服に炎耐性、衝撃耐性、自動洗濯の能力を付けさせて貰ったよ。僕からのプレゼントだ。」
す、すげぇぇぇぇぇぇ!
リヴァイアさんマジすげぇ!何それ何それ、そんな事出来んの?炎球!おぉ!全く熱くない!すげぇ、すげぇよ!
「フフ。喜んで貰えたようで何よりだ。さて、馬車に戻ろうか。」
やべぇ。リヴァイアさんがやべぇよ。
祝!40話!
多分これ十話毎にやります。




