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異世界の世界史

「えええええ!リヴァイアさんって貴族なんですか!?」


「フフ。服装とかで、気が付かなかったかい?」


 気が付くかぁ!

 確かにいい感じの服だし、教養ありそうだし、良い匂いもするけど普通は気が付かない!絶対。



「貴族でAランク冒険者で優しくてイケメンで高身長で............なにこの超優良物件!?」



 もはやこれに敵う人が出てきそうにないんですけど!





 リヴァイア一行の馬車は砂漠を越えて、森に入り、もうすぐ王都が見える距離までやってきていた。道中、何事もなかった訳では無いが、無事に王都までやって来る事ができたのは、ヒラタとその仲間のペン太の功績だろう。


 そして、ヒラタは一つ、ここまで来て気が付いた事があった。



「実はですね、リヴァイアさん。俺、全く金持ってないんですよ。」



 ヒラタは無一文だという事だ。



「フフ。僕が貴族だと分かった途端にそんな事を言うのは、ねだっているようにしか聞こえないよ。ヒラタ君。」



 口角を上げて軽口を言うリヴァイアさんだが、全くもってその通り。



「村長から金貰って、それで馬車に乗るって流れだったのに、リヴァイアさんが持っている馬車なら金払う必要無いじゃないですか。しかも俺、村長から何も貰ってませんよ!?」


「フフ。実に村長らしいね。」


「俺の身にもなってくださいよ!」



 騙されたと言えば聞こえは悪いが、俺は実際タダ働きをさせられたという事になる。あんにゃろ、今度あったら文句言ってやる。



「まぁ、それには少し思う所もあるし、王都に入ってからお金は工面してあげよう。君には借りもあるしね。」



 リヴァイアさん太っ腹~。

 いやリヴァイアさんはスリムだけどね!



 寝ているペン太を横目にリヴァイアさんの話に戻る。



「それで、リヴァイアさんはなんで貴族なのに冒険者なんてやってるんですか?」


「そんなにおかしいかい?」



 否定を入れるが、やはり疑問だ。

 ていうか、この世界では貴族ってどういう扱いになるんだろう?



「そうだね。やはり強い人には憧れるじゃないか。そういう事だよ。」



 ほほー、憧れですかぁ。



「そのリヴァイアさんの憧れてる人って誰ですかな?」



 冗談混じりに聞いてみると、よく聞いてくれたと言わんばかりの顔になったリヴァイアさん。



「バラーという人だよ。知っているだろう?村の英雄と呼ばれた、歴史の中でも類を見ない超人だよ。」



 いや、知りません。

 あれ?でもバラーって。



「バラー村のバラーですか?」


「そうだよ。そうか、君は転生者だから知らなくて当然だ。すまない、教えるよ。」



 そう言って、話し込む体勢になるリヴァイアさん。



「昔、昔、ある所にバラーという冒険者が居ました。」



 物語口調で話していくリヴァイアさん。



「しかし、冒険者ギルドの中でバラーは厄介者でした。なぜなら大した実力もないのに大口を叩くホラ吹きだったからです。」



 ふんふん。ギルドってあるんだな。その時代。



「ある時、二つの国で戦争が起こりました。それはどんどん広がり、ついには世界が二つに別れた大戦に発展しました。」



 どこの世界にも戦争ってあるんだなぁ。



「バラーは今こそ自分の力を示す時だと、ギルドに敵国への攻撃の許可を取ろうとしました。しかし、ギルドはそれを許しませんでした。冒険者はモンスターと戦うのが仕事で、人間同士の戦争に関わってはいけないとの事でした。」



 なるほど。確かに。



「バラーは怒り、許可なく、一人で敵国に乗り込みました。次の日、鉄壁を誇ったその国は地獄と化しました。バラーは一人で何万という兵士を殺し、何万という冒険者を殺し、何万という市民を殺し、国を落としたのでした。」



 一人で国を落としたのか。

 大虐殺というやつなんだろうな。

 でも大した実力もない奴が一体どうやってやったんだろう。



 もちろん、これくらいじゃ驚かない。

 異世界人というだけで、もう俺の常識外だ。

 何も思わないわけじゃないが。



「バラーは祖国に戻り、この事を報告しました。しかし、さすがにこれはやり過ぎでした。」



 まぁ、そうでしょうよ。



「バラーは祖国から、そして冒険者ギルドから批難されました。これがバラーにどれだけの衝撃を与えたのかは分かりません。国の為にと、皆の為にと行った事を批難され、自分自身を否定されたかのように聞こえたでしょう。」



 何事もやり過ぎは良くないって教訓になるんだろう。



「そしてバラーは暴れました。」



 いやなんでやねん!



「バラーという人は、元来、人の役に立つ事が生き甲斐のような人物でした。それを否定されたと感じたバラーは悲しみ怒ったのです。」



 物語は終わらねぇってか。

 単騎で国一つ落とす化け物が暴れたら、どうなるか分からない。



「バラーの暴れようは凄まじく、どうにもなりませんでした。その国はすぐに他の国に協力を請いました。協力関係にあった国も、敵対関係にあった国も一致団結して、バラーという一人の人間を静める為に動いたのです。亜人と呼ばれる人も、一部のモンスターすらも協力して、やっとバラーを静める事が出来たのです。」



 正真正銘の化け物だな。

 物語の中の話の話だからよく分からないが、そのバラーという人間は化け物だ。その人物を()()()為だけにどれだけの犠牲を払ったんだろうか。そしてやっぱり亜人いるんだ。


 これは共通の敵が出来たら一致団結出来るって教訓が込められているのかもしれない。



「バラーはとうとう地に伏したのです。ある意味では彼のおかげで戦争が終わったと言っても過言ではありません。が、三日三晩続いたその戦いで出た犠牲者は数えきれません。余談だけど、バラーと当時のギルドマスターの一騎討ちでギルドマスターが負けていたら、世界はバラーが壊していたとも言われているよ。」



 ありがとう。ギルドマスターさん。

 あなたが守った世界はまだ続いています。



「神が出る結果にはならなかったけど、本当に凄まじい戦いだったと言われている。バラー自身、神と同レベルの実力を持っていたとも言われているよ。」



 ちょっと待て神様。いるならはよ出てこいやぁ!

 どこの世界にも神様はいるんだろうけど、出る結果にはならなかったって事は出てきた事あるよね。出てこれるんじゃねぇかぁ!

 ていうか、転生者の問題も神様が絡んでるんじゃないの?

 元の世界に戻して神様!



「そしてバラーは残った国に拘束されました。もはや国として機能しなくなった国が多く、被害が全く無かった国はありませんでした。元を辿れば、これは戦争が原因であるから、今後二度と戦争が起きないように、国を一つにしてしまおうという運動が起こりました。そして今の王都が出来たのです。」



 そうだったのか。



「皆が汗だくになり、資材を集め、王都を作りました。王に権力は与えず、政治の全ては貴族の話し合いによって行われる物としました。そうなると、それまでの貴族制度は撤廃され、市民の中から貴族を選ぶ選貴制度が作られました。王都の他にも都を作り、亜人との交流や人々の居場所として使われました。」



 王が権力を持たない。そして貴族が政治か。

 てことはリヴァイアさんって政治家!?



「一方その頃、バラーは既に王都を抜け出していました。それに皆が気付くのは都作りが落ち着いた後でした。」



 いや馬鹿か!

 それって監視に人を当ててなかったって事でしょ。



「バラーが遠く離れた辺境の地までやって来た時、ある森の中で野宿をしている集団に出くわしました。モンスターも出る森で一体何をしているのかと聞くと、私たちには住む場所が無いのですと答えました。バラーが詳しく話を聞くと、どうやら自分が暴れたせいで、ろくに住める場所が無いという事を知りました。王都も都を作ってはいますが、難民の方が遥かに多いと知り、バラーは自分の行動を悔やみました。」



 なるほど。反省したんだな。



「それからバラーは彼らに政治が無くても自分たちだけでやっていける居場所を作ろうと考えました。全ては償いの為に、手刀で木を切り、怪力で家を作り、作物の種をまき、水を近くの川から引っ張ってきて、彼らだけで生活できる『村』を作りました。このバラーが初めて作った村がバラー村だよ。それまでは人は皆、都に住む物だと言われていたんだ。」



 ほへー。バラー村の誕生秘話。

 それにしても、人は皆、都に住む物か。

 確かに都の方が色々と都合は良いよね。



「バラーは彼らの元を去った後も村作りを止めませんでした。迷える難民に出会えば、彼らに居場所を与えました。バラーは各地を練り歩き、百を越える村を作りました。しかし、ある日それは突然終わりました。王都の冒険者に見つかってしまったのです。しかも、後ろには難民の人々が居ました。彼らにまで危害を加えられては堪らないとバラーは大人しく捕まったのです。」



 優しいんだな。

 それに元は人の役に立ちたいって目的だったし、良いやつなんだよな。バラーは。



「捕まったバラーは王都に再拘束されました。その後、彼はどうなってしまったのかは不明です。しかし、この物語は彼の『村』に助けられた人々によって語り継がれて行くのでした。」



 おしまい、って事になるのかな。



「いやー何か深いですね。俺は勇者の物語しか知らなかったので、楽しかったです。」


「勇者の物語を知っているんだね。どこかで聞いたのかな?良ければ詳しく話すよ?」



 おぉ。お願いします。



「まず、この世界の歴史をざっくり説明しよう。」



 すうっとリヴァイアさんが息を大きく吸い込む。


「まずはそうだね。人は神の遊戯の為に作られているという所から話そうか。これはそのままの意味さ。二人の神はある時、暇潰しの道具として人を作ったと言われているよ。この時、人になり損ねたのがモンスターさ。故にモンスターは人に敵対心を持って生まれたのさ。そしてある日、増えた人とモンスターが戦争を起こしたんだ。これには神は干渉しない。鑑賞するんだ。その戦争は次第に激化し、大戦となった。その中である人間がこれは『神観大戦』だと皮肉を込めて言った。神はこの名前を大層気に入り、人間に天罰を下したんだ。少しムカついたのかもしれないね。これが仇となり、神観大戦はモンスターに軍配が上がった。後の人々はこれを人と魔を分かつ大戦と呼び、第一回神観大戦と呼んだんだ。」


 すうっ。


「その名の通り第二回もあるよ。第二回神観大戦は人とその亜種の醜い戦いと言われている。この大戦にはモンスターは関わらなかった。この大戦は人と亜人と呼ばれる人々との戦いだからね。亜人............そう、君は亜人を知っているかな?獣人、エルフ、魚人、鬼、妖精、そうそう今はモンスターとされているがスケルトンも昔は亜人だったんだよ。気性の荒らさ故モンスター認定されてしまったけどね。亜人はモンスターと交わった者の子供とされている。もちろん、交わるといっても様々だけどね。とにかく、亜人はモンスターに魂を売った者の子供として人々から迫害されていたんだ。亜人はそれに怒り、兵力を集め人間に戦争を挑んだ。一度人間はモンスターとの大戦で負けているからね。弱気にはなったものの、神が戦うようにお告げをしたから渋々、されど全力で戦ったんだ。これが第二回神観大戦。結果は人間の勝ち。人間というのがこれまた醜くてね。人間はモンスターに負けているが、それだけだった。人間はあろうことか亜人を奴隷として使役したんだ。神は何も言わなかったが、僕は自分の先祖が奴隷を使役していたと思うと............反吐が出そうだよ。おっと、すまないね。とにかく、これが第二回神観大戦だよ。」


 すうっ。


「次は第三回神観大戦だよ。これは人間同士の戦いさ。でもね、この大戦はある意味今までで最も凄い大戦だよ。なんせこの大戦では新たなる神が生まれたからね。事の発端はある盗賊同士の争いだった。この争いがどちらが悪いとも言えないような物でね。争いは盗賊同士から盗賊組織同士に。盗賊組織同士から全盗賊同士に。全盗賊同士から全人間同士の争いに発展して行ったんだ。全く人間という生き物は.........!とにかく、この戦いでは人間の英雄が生まれた。そして一人は神にまでなったんだ。でも、もうこんな昔の事なんて資料は残っていない。英雄の名前とか、そういうのは分かってないんだ。」


 すうっ。


「お次は第四回神観大戦。第三回からかなり時間が経って起こった大戦さ。実は、第四回に関しては資料がほとんど無くてね。分かる事は、ここでも新たな神が生まれたという事とその後ギルドが出来たって事。それ以外は............誰が始めて、どうなったのか、全く分かっていないんだ。全てを知っているのは神だけだね。」


 すうっ。


「そして第五回神観大戦。これは、うん。神が悪いね。その頃はまだ国という物が有ってね。神が二つの国の王をたぶらかして戦争を起こしたんだ。こればかりは神が始めた戦争。収めるのも神だよ。最終的には神の御告げによって終わったけど、犠牲は大きかった。原因となった神は素知らぬ顔で謝りもしなかった事にはかなり不満が溜まったと伝えられている。神の気紛れで大戦が起きるなんて、面白いと思わないかい?」


 すうっ。


「さて、次が第六回神観大戦。発端はある国の王妃と王女が行方を眩ました事だった。二人がどこに行ったのかは未だに分かっていない。この時、国王は神に御告げをねだったんだ。どこに行ったのか、どうすれば戻ってくるのかを神に問うたんだ。しかし神は何も言わなかった。国王は怒り、神に対して戦争を仕掛けようとしたんだ。驚くだろう?国王とはいえ、神に楯突こうなどおこがましい。しかし意外にも、神に楯突く愚か者は結構居たんだ。国王はその人逹と神が降りる神殿まで行き、それを壊した。もちろん神殿を守る人は必死に抵抗したが、勝てなかった。神殿は壊れ、周りの国と聖職者............いや、一般市民ですらも神罰を恐れた。............そして神罰は下った。ある日、突然、国王が住む城に何か巨大で強大な力が落ちてきた。国王は死に、城は全壊。その国の市民は恐れ戦き、恐怖に支配された。そしてある日、神は言ったんだ。なんと言ったと思う?」






















 あ、俺が答えるのか。

 いやちゃんと聞いてたよ?ちょーっと集中しすぎて間が空いただけ。



「分かりません。神の考えなんてとてもとても。」



 リヴァイアさんは至って真剣でこう言った。



「神はね、誰が悪いのか、と人々に問うたんだよ。」



 誰が悪いのか?



「その国の人々は悪いのは国王だと言いたかった。でもね、気づいたんだよ。我々の国王が悪いと認めると、我々の国全体にあの神罰が下る事にね。神に逆らう力を人もモンスターも持っていない。だから、人々は神を恐れ、全てを隣国のせいにした。王妃と王女を拐ったのは隣国だ。隣国が悪いんだと神に言ったんだ。」



 おそらく、神は人間を試すつもりで問うたんだろう。

 神罰を下すという事は無かったはずだ。意地悪だな~。


「神は隣国に誰が悪いのかと問うた。隣国は我々は悪くない。あの国の国王が悪いと言った。しかし、隣国も時間が経つに連れて言う事が変わってね。王妃と王女を拐ったのは亜人だと言うようになった。亜人主義の国は怒り、せいぜいモンスターにでも拐われたに違いない。濡れ衣を着せるなと手紙を書いたのさ。他にも亜人の意見が正しいという国はたくさん居てね。四面楚歌になった隣国は、とうとう、ついに、全ての元凶となった国王の死んだ国に兵を送り込んだのさ。これが第六回神観大戦の始まりさ。」



 なるほど。



「それから戦争が大きくなっていって、バラーが出てくるんですね。」


「そうさ。神は元から神罰を下すつもりはなかった。人間はいつの時代も神の玩具さ。結果的に戦争が起きるように仕向けられた、という所だね。」



 神って嫌なやつ。

 は!もしかして、俺をこの世界に連れてきたのも、神!?

 そ、そうだとしたら許さん。

 何が何でも異世界を満喫して帰ってやるからな。



「で、勇者の話は何処へ?」



「あぁ、そうだったね。勇者っていうのは、まぁ君のような他の世界から来たと言われている人だ。他の世界から来る事なんて本当に出来るのか、と長年信憑性に欠けていたのだけど、ここ二、三ヶ月で君のような転生者を名乗る人がたくさん出てきてね。勇者が伝えた文化を詳しく知っていたり、未知の文化を伝えたりとまるで勇者の様だと言われている。本当に異世界なる物があるのでは、という意見も議会に上がったくらいだ。実際、転生者に会うのは君が始めてではないが、我々と同じようでどこか違う雰囲気を醸し出している。問うが、異世界という物は本当にあるのかい?」



 俺からしたら、異世界とはこの世界の事だ。

 でもまぁ、リヴァイアさんの立場から見れば俺の世界こそ異世界だ。



「異世界はあります。俺は地球の日本という国からやって来ました。」


「やはり異世界はあるのだね。しかし、どうやって?」



 そればっかりは、ねぇ。



「分かりません。突然、この世界に飛ばされました。」



 俺の無職ライフを返して欲しい。



「そんなことが可能なのかい?魔法とか魔術とか、そういう技術があるのかな?」


「いーえ。俺の世界に魔法はありません。科学という技術はありますが、科学で異世界に飛ぶなんてこたぁできませんよ。」



 仮想現実を異世界と例えるなら話は変わるが。



「ほう。では、こちらの世界から干渉したと?」


「分かりません。でも、俺は今、地球にいた時の体とは違う肉体を持っています。魂を入れ換えられた感じです。元はもっとでかくて黒髪黒目だったんです。」


「黒髪黒目か。確か、転生者にはそんな者もいたような。」



 な............ズルいぞ。

 俺も黒髪黒目が良かったのに。



「ま、まぁ、君の赤髪赤目も素敵だよ。」



 くっ............リヴァイアさんのフォローが染みるぜ。



「リヴァイアさんの青髪もカッケエですよ。」


「フフ。どうもありがとう。」



 いやいや、俺は勇者の話を聴きたいんだ。

 こんな会社の接待みたいな話をしたい訳じゃない。

 コラソコ!無職なのに何で会社の接待を知っているのかとか詮索しなくていーの!ドラマで見ただけだい!



「それで、勇者が呼び出された過程なんだけど。」



 そうそう、それが聴きたいんですよ。



「第六回神観大戦の後、人間達は団結した。しかし人間とは争う生き物さ。今度はモンスターと争い始めたのさ。理由は簡単。モンスターの魔石や素材が欲しい。モンスターが持つ知識が欲しい。モンスターの領地が欲しい。人間とは自分勝手で強欲だね。」



 何故だろう。人間が醜い。



「しかし、モンスターはこれに対抗するために団結した。つまり、完全な人間VSモンスターの構図が出来たわけだ。」



 なるほどね。



「亜人は人間側に付いた。これにより当初は人間の方が優勢だった。しかし............魔王が現れた。」


 魔王。魔王か。

 モンスター側の最大戦力って事か。


「魔王は『()()』という特別な力を持っていた。その力は圧倒的で人間達は即座に劣勢になった。」


「『文字』?」


「そう、『文字』さ。『文字』というのはスキルでも魔術でもない特別な力、不思議な力さ。『文字』自体に力があり、『文字』には『文字』が意味する力がある。『文字』を持たねば魔王ではなく、『文字』を得れば誰でも魔王になれるという。詳しくは、王都に行けば分かるよ。王都には『文字』が保管されているからね。」



 ほへーそんな物があるんだ。

 ん?待てよ?もしかしたら俺も『文字』を手に入れたら強くなるんじゃないか?魔王になるのも............悪かぁ無いかも。



「その『文字』ってやつを手に入れたら強くなれるんですよね?」


「そうだよ。しかし決して取り込もうなんて思わない事だ。『文字』とはすなわち勇者に討伐された魔王の力の断片だ。『文字』を取り込んだ生物は魔王の悪意に汚されてしまう。それ以前に『文字』を取り込もうとして適応できなかった場合、身体が爆発してしまうからね。」



 うん、俺、『文字』いらない。



「それで、魔王の登場で劣勢になった人間側が勇者を呼び出したって事ですか?」


「その通りだとも。人間は別世界の人々の力を求めたんだ。さまざまな術式、魔法陣を組み合わせてついに異世界の人を召喚した。しかし、実はこの勇者について何故だかあまり資料が残っていなくてね。勇者はどんなスキルを持ち、どんな風貌で、性別はどちらだったかすら分かっていない。いや、そもそも勇者は一人だったのか複数だったのかすら分かっていないんだ。残っている資料じゃどうも辻褄が合わないんだ。だから、勇者について分かっている事は多くない。しかし勇者の功績は世界中に知れ渡っているよ。」



 意外と勇者についてはあんまり分かってないんだな。



「とにかく、人間は勇者を呼び、勇者は各地でモンスターを倒した。モンスターは魔王に従い、魔王は人間達を攻撃した。最終的には勇者と魔王の戦いになり、勇者は勝った。その後勇者は姿を消した。モンスター達を一匹残らず殲滅するように言い残してね。冒険者達は勇者にことごとく負けていたからね。躍起になってモンスターと戦い始めた。最終的に有名な三種類以外のモンスターが全滅した。これが最も最近の神観大戦。第七回神観大戦、魔を滅す大戦と言われている。」



 壮絶だなぁ。



「その後は............アンデットだね。あの時は魔王の再来とも言われたらしい。突如再発生したモンスター達、その代表格のアンデット。人間達とは小競り合いがあったもののどうにか今の状況に落ち着いたのは恐らく彼のおかげだね。モンスターがいなくなれば人間の生活も不便になるからね。」



 リヴァイアさんは一区切り付けて



「大雑把に説明したがこれが世界史だよ。」



 これで大雑把なのか。



「いや~、意外と分かってる事ってあんまり無いんですね。」


「そうだね。僕の憧れであるバラーも結局どうなったのか分かっていない。いつか明らかにしたいとは思うよね。」


「そうですねー。意外と自分が作った村で隠居............スローライフを送ってるかもしれませんよ?」


「フフ。そうだと面白いね。」



 アッハッハ。



■□■□


「ぶぇっくしょーい!............あぁクソったれ。」


「ハッハッハ。なんだい?あんたも風邪なんて引くもんなのかい?バラー。」


「風邪なんて引いて堪るかよ。どっかで噂話でもされてんだよ。」


「ハッハッハ。英雄サマともなれば噂話なんてしょっちゅうされるもんじゃないかい。」


「昔話でくしゃみが出るなんて冗談じゃねぇやい。」


「ハッハッハ。」

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