砂漠での戦闘~ジャイアントサソリ~
「キシャァァァァァ!」
俺が構えるとほぼ同時にジャイアントサソリが飛びかかってくる。
その巨体でよくそんなに飛べるな。
普通なら避けるのが最適解なんだろうけど、あいにくジャイアントサソリは四匹いる。その為、事故を防ぐために避けられない。
だから、このサソリはとりあえず。
「ふん!」
木刀を使って止める。
しかし、サソリはデカイ。
もちろん、それに比例して重量も相当なものだ。
しかしサソリのハサミを受け止めた木刀は意外や意外、まったく折れる気配を見せない。その代わり、俺の腕には衝撃がビリビリと伝わってくる。
しかし、しかしだ。
「舐めるなぁ!」
叫びながらハサミを押し返す。
ハサミだけの重さならせいぜい十キロ位だろう。
サソリは今度は右側のハサミを振り上げ、叩きつけてきた。
即座に上からの衝撃に耐える構えを取る。
だが!
シュッという風を切る音と共に振り下ろされてくるハサミを受け止める。
ように見せかけて、受け流す!
ハサミの右側に回転するように受け流して、同時にジャイアントサソリの顔面に炎球をお見舞いする。
サソリはもちろん避けられずに直撃。
俺が言うのもあれだが、どのくらいの威力なんだろう?痛そう。
サソリは俺の炎球を喰らうと同時に、後ろに飛んで逃げる。なかなか器用なやつめ。
しかしだなぁ!俺の炎球は遠距離魔法なんだよ!距離を取るとは愚策なり。お前の攻撃が届かなくなるだけだぞ!
「炎球!」
ジャイアントサソリに向かって炎球を撃つ。
とりあえず、当たりさえすれば大丈夫だ。
見たところ、サソリに遠距離攻撃の術は無いようだ。
図体だけでかくて強くないじゃないか。
「炎球!炎球!」
俺の手から次々と炎の球が発射され、サソリに命中する。
対するサソリはハサミで自らの身を守るかのような体勢を取っている。
「だが、全ては無駄!防御だけでは何も変わらな――――」
何かが掠めた。
なんだ?
今の?
俺の顔の横を何かが掠めて行った。そして後ろで突き刺さるような音がした。
咄嗟に後ろを向く。
その俺の顔を掠めた何かはサソリから伸びていた。
「サ、サソリの尾............?」
忘れていた。
サソリの最大の武器を。
いや普通、尾は伸びない物なんだが。
しかし、ツッコミを入れても仕方ない。
相手はそういうモンスターなのだ。
少なくとも、ただのサソリではない。
さらに、サソリの尾といえば毒がある。
もう絶対の絶対に。必然的に毒がある。
もしも、今のをまともに喰らっていたら?
毒の強さによったらヤバかったかもしれない。
確かにさっきまではぶっちゃけハウンドより弱い感じだったが、伸びる毒の尾があるとなると話は変わる。
さすがはCランク。
いや、Cランクってかなり低い方だと思うんだけど!
なぜこいつがCランクなんだ............?
いや、考えるまでもなかったな。
「サソリの体は意外にも柔らかい。所詮は虫か。つまり、防御面が疎かになっているという事だな!」
さっきの俺の炎球でサソリは虫の息の筈だ。
サソリの尾がズボッっと砂から抜かれ、縮んでいく。
第二撃、来るか。
さっき見た限り、サソリの尾の攻撃は恐ろしいほど速い。
避けるのは............難しいな。
ならば防御か。
しかし、俺はスケルトンやデモンナイトのように体が硬い訳じゃない。
防御も難しそうだな。
だったら、やることは一つ。
再びサソリの尾が飛んでくる。
回避も防御も出来ないならば。
「迎え撃つのみ!」
音速の一撃には音速の剣を!
グッさん流剣技、居合!
飛んでくるサソリの尾に狙いを定めて居合を放つ。
二つの音速の技がぶつかり合う時、サソリの尾を切り上げて切断を試みる。
俺の読み通り、サソリの尾は柔らかく木刀が食い込む。
そのまま、切る!斬る!kill!
「うおおおお!」
斬れた!
サソリの尾が宙を舞う。
しかし、これだけでは終わらない。
俺の体はそのまま飛んでいく。
放物線を描くように。
着地点はサソリの上。
木刀を逆手に持って突き刺すように落下する。
「喰らえぇぇぇぇ!」
重力?多分、重力に引っ張られてサソリの上に乗ると同時に、その位置エネルギーを全て攻撃力に変換。
サソリに木刀を突き刺した。
音はよく聞こえなかった。
手応えは全身で感じられた。
「キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
サソリが先ほどより大きな声で鳴き、のたうち回る。
俺は落ちそうになりながらも、木刀を抜くとそこから緑色の液体が返り血のように噴き出してきた。
サソリは一層苦しそうに暴れる。
このままではまずいのでサソリから降りるとしよう。
木刀をしっかり握りしめ、ジャンプして降りる。
着地はもちろん練習済みだ。
加えて砂漠、というのもありノーダメージで降りる事に成功した。
さて、サソリの方はどうなったかな?
サソリの方を見ると緑色の液体に体を濡らし、苦しそうに、されど殺意を俺に向けてまだまだ戦える様子であった。
サソリの尾は斬った。
しかし、あのハサミはまだ残っている。
まずいな。
非常にまずい。
いや、俺も十分鍛えているわけですがね。
いやほんと。グッさんと特訓したんだから、ただのニートと同じにしてもらっちゃあ困る。しかし、しかしだよ。
これは、体力とか鍛えるとかそんな物じゃどうしようも無いのだよ。
あ~、寝ていたからかなぁ。
な~んで今、来ちゃうのかなぁ。
しかし、そろそろ、もう、我慢が。
「おろろろろろろろ。」
ゆ、許すまじ車酔い。
そんな不満をぶつけながらも、砂漠に胃の内容物をぶちまける。
もちろん、その間は動けない。
うぇ、この味、胃酸じゃねぇか。
この隙をジャイアントサソリはもちろん見逃さない。
「キシャァァァァァ!」
先ほどの恨みを晴らすべく、サソリはヒラタに向かって、ハサミを振り上げ突進してくる。
いまだに砂漠に嘔吐しているニートに無慈悲なハサミが振り下ろされる!
「僭越ながら、お助けしましょうヒラタ様。」
うげぇ、おえぇ。うん?何が起こったんだ?
サソリを見ると、サソリは体が綺麗に三等分されていた。
綺麗な切り口から緑色の液体が噴き出してくる。
もちろん、サソリは一撃で絶命。
その驚くべき斬撃を放ったのは。
「じ、爺やさん.....................予想はしていたけど本当に強いな。」
爺やとリヴァイアさんに呼ばれていた召し使いの人はその手に持つ得物で見事ジャイアントサソリを斬って見せた。
やべぇ、俺が弱いみてぇじゃねぇか。
「こちら側は大方片付きました。体調が宜しくないようですがどうなさいましたか?」
あはは。親切だなぁ。
「大丈夫です。ちょっと酔って吐いただけです。」
見てみると、リヴァイアさんとペン太がこちらに向かって歩いて来ていた。
あっちも終わったようだ。
「では、参りましょうか。」
そうですね。と返して俺も歩いて行った。
既に吐き気は収まっていた。




