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出発~バラー村~

「............そろそろ話して大丈夫かい?」


 あっすみません。

 人の名前で笑うなんて失礼ですよね。


 でもwリヴァイアwリヴァイアさんw

 フフッフフフフッ。


「あ、すみませんすみません大丈夫です。」


 もう大丈夫だと伝えると、リヴァイアさんは話し出した。


「さっきも言った通り、君の活躍は彼女の水晶から覗かせて貰っていたよ。それで、君を王都まで連れて行く事になったよ。」


 おーやったぜ。

 やっっっっと王都へ行ける。行けるぞー!




「ハッハッハ!アンタ、ヒラタってのかい。なかなか面白い戦い方じゃないか。」


 おほう、ありがとうございます。

 なかなかパワフルな笑い方の人だな。



「おっと、彼女はこの辺り一帯の森を魔法で監視して貰っとる者じゃよ。元々、この村の娘での。魔法の才があるのか、観察という魔法が使えるらしいのじゃよ。」



 観察?鑑定じゃなくて?


「ハッハッハ!アタイの魔法は上級観察魔法。木に触れる事でその木からの視点を得る事が出来るのさ。簡単に言うと木に目を付けられるって事さね。木だけに限るが少なくともこの森の木の全てにアタイの目が付いているようなもんさ。水晶に視点を写すことも出来るさ。」



 へー、まさに壁に耳あり木々に目あり、だな。

 しっかし、上級ってだけあって森の全てを視る、いや観る事が出来るなんて素晴らしいな。俺は中級だしなぁ。


「彼女の魔法で君達を観ていたよ。素晴らしい戦いだった。君なら立派な冒険者になれるだろう。今日にも出発するよ。いいね?」


 いぇっさーあいあいさー野郎ども!錨を上げろー。


「村長さんも、よろしいですよね?」


「良い。やって貰いたい事はお主にやって貰ったからの。」


 あぁ、ハウンドの変異種討伐か。


「アンタも、たまにはこの村に寄りなよ。」


 ははは。時間があったらね。


 とりあえず、王都に行けるな!

 行けるんだなやっと。


 俺の冒険者ライフが始まるんだな!




 てことは、悔いなくこの村を出られるようにしなきゃな。


 とりあえず、あれを聞いておこう。


「ところで、リヴァイアさん。ハウンドの変異種ってそんなに怪我するほど強かったんですか?」


 ずっと疑問に思っていた事を口にする。


「............村長さん、彼に説明が足りないんじゃないかな?」


「おっと、おっと、そのようじゃな。いやー忘れとった忘れとった。いや別にわざとじゃないぞ?今、説明するつもりじゃ。」


 リヴァイアさんは、ハーとため息をついて、


「僕の口から言いますよ、村長さん。」


 リヴァイアさんは改めて俺の方に向き直った。





「僕の怪我はね、ハウンドとは全く関係がない。仮にも僕はAランクの冒険者。ハウンドの変異種に遅れをとるような人間じゃないよ。」



 少し呆れたような口調でリヴァイアさんは言う。







「僕が怪我をしたのは村長さんのせいなんだ。」



 はい?





 はい?




 どゆこと?




 えーと、村長さんのせいでリヴァイアさんはこんな包帯ぐるぐる巻きの状態になりましたよって認識であってる............よね?


 だから、え?全く分からん。




「この村長さんは有名な元Sランク冒険者のダグーさんだよ。」



 Sランクぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?


 ははははじまりの村的な村の村長が元元元元Sランクククク。

 あががががががががががががが。


「ふむ、そのように呼ばれとった時代もあったかのう?昔の話故、忘れてしもうたわい。」


 わわわわわわわわ忘れてもうたぁ!?


 ってこれは驚くことじゃないな。


 とにかくとにかくとにかくよ、そそそ村長さんがSランク冒険者!?

 教えて!リヴァイアさん!


「村長さんがSランクってどうゆーことですか?てゆーかなんでリヴァイアさんは村長さんに怪我を?」



 リヴァイアさんはベッドに座りながら神妙な顔付きで説明する。



「村長さんは元冒険者だって事だよ。変異種ハウンド討伐後、訓練と称してボッコボコにされたのさ。まったく、あれじゃあ訓練どころか参考にもならないよ。」


 ボッコボコ............ボッコボコですか。しかも参考にもならないってどんだけだよ。



「いやはや、今時の冒険者の実力を確かめたくてのう。許せ。」



 まったく心の籠っていない謝罪を無視してリヴァイアさんは続ける。



「こちらの彼女は冒険者では無いものの、その力は王都にも認められている重要人物だよ。」



 ハッハッハっと笑う魔法の人を尻目に、なんだか過剰戦力じゃないか?と考えるヒラタ。王都の方の防衛でもしとけばいいのに。



「この村にはなんだか強い人が集中してるペンね。」



 ペン太がこう囁いてくるが、全くその通りだ。

 しかも、これだけの戦力があるなら、なぜわざわざリヴァイアさんを王都に呼んだのだろう?要らなくないか?リヴァイアさん。



「リヴァイアさん、ハウンドの変異種なんて村長さんとかで十分だと思うんだけど、どうしてリヴァイアさんは王都から来たの?」



 リヴァイアさんはバツの悪そうな顔をして



「まぁ、地理的な関係でこの村には一定以上の戦力が必要でね。村長さん達は動けないから、僕が王都から依頼を受けてやって来たというわけなのさ。」



 ほうほう。



「して、この村に一定以上の戦力が必要な理由は?」



 すると、リヴァイアさんは少し笑みを浮かべながら、ある方向を顎で指した。



「この村の近くにはアンデット領があるだろう?そこから何かの弾みでアンデット系モンスターが湧き出た時、この村で食い止めるためにこの村には三人の超人が王都から派遣されているんだよ。」



 派遣というのは違うかな?と首を傾げているリヴァイアさん。


 しかしまぁ納得。

 確かにスケルトンとか危険だしね!(体験済み)


 でも三人の超人ってのが気になったな。


 村長さん。魔法の人。そしてもう一人は誰なんだろ?




「あの、三人の超人のもう一人って誰ですか?」



 尋ねると、リヴァイアさんは少し困ったように言った。



「いや、それが村の最重要機密になっていてね。僕にも分からないんだ。」



 村の最重要機密か。

 まぁ、リヴァイアさんが知らないなら仕方ない。





「とにかく、だ。話が逸れたが今日の夕方には王都に出発するよ。君はとりあえず部屋に入って準備をしていてくれ。僕は、爺やと話をしてくるから。」



 そういうと、リヴァイアさんは包帯でぐるぐる巻きの身体を起こして立ち上がった。




 おおう。立てたのかリヴァイアさん。




 ま、とりあえず、俺は準備してきますか。



■□■□




「あーあ、暇だなぁ。」




 いい歳して門番かよ。






 はぁ。



 かつて自分が蔑んできた奴らと同じ立場になるとはな。自分で言うのもあれだけど、滑稽だな。久しぶりに自分を嗤う気になったのは、若いテイマーを見たからだろうか?元気の良い連中だったな。



「モンスターテイマー............か。」







 それにしても暇だなぁ。

 たまに愉快なやつらが来て話をしたりするけど、あれが一番の楽しみだよなぁ。全く、これが俺の人生か。


 なんだっけな、こういうのを表す言葉。確か昔話に載っていた言葉だ。

 俺もあの時は純粋なままでいられたよなぁ。



「はぁ。」




 軽いため息一つ。





 彼は毎日毎日いつも何時も、門番を続ける。

 それは彼に与えられた罰であり、仕事である。


 彼は過去を精算している。

 今、人々を守ることで。






「お?」



 彼の服のポケットに入れていた石が微かに震える。

 彼女からの合図である。



「また来たのかよ。懲りねぇな。」




 彼は槍を強く握り、臨戦体制になる。



 ふっと息を短く吐き、空を仰いで目を瞑る。











 そして目を見開いて前方の()達を睨み付ける。






 その時、彼の目の色は変わっていた。




 竜の群は少しずつ大きくなってくる。

 しかし、素人から見ればそれはゴマ粒程度の大きさだ。


 彼は右手の槍を軽く引いて、竜の群れに狙いを定める。

 そう、別に全部倒しきる必要は無いのだ。


 ただ、近づけなければよい。

















 槍を投げた。







 軽くポーンと。




 しかし、槍の方はものすごいスピードで飛んでいった。

 竜の群れに向かって。



 もちろん槍はただの鉄槍。

 到底竜に太刀打ちできる得物ではない。


 ただ、量産できるという事が取り柄だ。





 だが、この男に扱わせれば............?











 槍は彼方の竜の群れに突き刺さり、消し飛ばした。






 群れを、そのまま。





 スキルも魔法も使っていない、ただ槍を投げただけの牽制。

 それだけでこの男はBランクだかSランクだかの竜の群れを消し飛ばしたのだ。もちろん、鉄槍は戻ってこない。しかし、量産可能な物なので、常に予備が門の隠し扉の裏に隠されている。




 仕事を終えた門番は門から新しい鉄槍を取り出す。


 彼にとっては準備運動にもならないこの作業は、誇り高き竜族にすら恐怖を与える。これを彼は理解している。


 だから、あくまで群れを一つ消し飛ばすだけだ。

 後続の群れはこれで勝手に撤退するだろう。








 ズドンと後ろで音がした。



 どうやら今回はそんな彼にも恐れを抱かぬ勇敢で愚かな竜がいたようだ。




「こいつは............古の竜、その中でも水を操る古水竜か。」




 この古水竜はかつて仲間を彼に殺されている。


 古火竜、古雷竜の仇を討つためにこのバラー村までやって来たのだ。彼のいるバラー村まで。





 怒り、怒り、怒り。


 古水竜は叫んだ。




「貴様!だな!古の!竜族を!汚した愚か者!」




 古の竜............というか、高位の竜は基本、喋れる。



 彼は知っていた。



 こいつはSSランク。

 さっき消し飛ばした奴らとは格が違うことを。



 彼は知っていた。



 自分がこいつより強いことを。





「それがどうしたんだよ老いぼれトカゲ。文句なら俺をここに置いた王都の奴らに言ってくれや。」



 彼の挑発にさらに怒った古水竜は、はち切れんばかりの筋肉でできた腕を伸ばし、一息で殺してしまおうとした。


 しかし、彼がそれを避けないはずがない。

 かなりの速さで飛来する腕を飛んで避ける。


 ちょうど古水竜の腕に乗る形になった。



「グア!アアア!人間!風情が!」


 古水竜は避けられた苛立ちからか、暴れ始める。

 身体から水を吹き出させ、周りの地形を変えるほどに。







 しかし、それが良くなかった。




 彼の仕事は村を守る事。

 つまり、暴れられては困るのだ。




「そいつは、ちょっとオイタが過ぎるぜ老いぼれ。」


 古水竜はまた怒り、咆哮をあげようと口を開くが、口の感覚がない。

 そしてその時、初めて自分の口が無いことに気が付く。


 先ほど目に見えぬ速さで消し飛ばされたのだ。





 しかし、流石は古水竜。

 すぐに水を湧き出させ、再生させる。


 一度消えた肉が逆再生で戻っていくように。



「どうだ!人間!貴様ら!貧弱な!種族とは!違い!我々竜族は!不......ゴファ!」



 次は腹を消し飛ばした。

 彼にとってはただ槍を突きだすだけの簡単な作業だ。

 しかし、古水竜にとっては拷問である。


 今も、口から血を吐き出し続けている。



「な............めるな......この程度の............傷、竜族にっとっては......!」



 もう一度再生させる。SSランクの古水竜は回復に特化した竜らしい。しかし、そんな事はどうでもよい。また刺すだけだ。



「喰らうがよい!水龍!」



 この水龍というスキル、竜族の中でも水を扱う高位の竜しか会得できぬ必殺技のようなスキルである。本来ならば、古水竜の腕から水でできた龍が出てくるのだが、すでに古水竜に腕はない。



 切り落とされていたのだ。



 それを知覚した古水竜は痛みで顔を歪ませながら、再生させた。しぶとく、しぶとく、生き続けた。






 故に彼に飽きられてしまった。




「もういい。飽きたわお前。」



 彼は残酷な死刑を宣告した。

 今まで古水竜が生きていられたのは彼が遊んでいたからだ。


 彼がその気になればいつでも、だった。





 





 彼は槍を古水竜の心臓に突き刺した。この場合は魔石か。


 とにかく、モンスターの心臓である魔石を砕いた。

 どんなモンスターでも魔石が砕かれれば死ぬ。


 それは古水竜も例外ではない。


 無様に倒れた古水竜は口をパクパクさせながら、呟いた。



「お......のれ............バラー............村の......英雄............貴様は......決して許しは.........しない。」



 古水竜ともあろうものが、最後には負け惜しみかよ。

 そんな心境で見下していた。


「竜............族............の............誇りに............賭けて!」



 彼は最後に槍を横に振り、消し飛ばした。


 無音で消し飛ばすその姿はまさに死神。





 戦争の時代、殺人兵器と呼ばれ、憎まれた。

 敵国の王都へ単騎で殴り込み、何千何万と人を殺した。

 低級の兵士を蔑み、自分だけは特別だと慢心した。



 そして今は門番のおっちゃん。

 殺した分だけ人を守り、都を追われた人の為に村という概念を作った。

 人々に居場所を作った。







 名をバラー。村の英雄。


 人々は彼をこう呼んだ。

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