ヘトヘト
「は~腹減った。」
そう言ってお腹を叩いてみるも、何も変わらない。
なぜなら食べ物がほぼゼロの状況になってしまったため、今日はなんとなく食べられそうな果物っぽいやつしか食べてないからだ。
「ヒラタが調子にのって途中でテイムなんかしようとするからペン。」
ペン太もそう言うが元気がない。
ペン太がテイムのチャンスなんて言うからだろ!って突っ込む元気もない。
魔石が無くなるという事がこんなにもつらいなんてなぁ。
いや、そりゃテイムしようとか若干調子に乗ってましたよ?だけどよ!これは明らかに持ってくる量が少なかったでしょ!
俺達はハウンドとの戦闘から三日間、道を歩いてきた。
夜は適当に葉っぱでベッドを作って、交代で見張りをしながら休息を取った。もちろん、飲み水は水の魔石。食べ物は、俺は火の魔石でペン太は氷の魔石だ。魔石に頼ってきた分、魔石が無くなるとかなりつらい。
食べ物も飲み水もなかなか確保できず、今日一日中歩いた。
まさか一日食べない、一日飲まないだけでこんなにつらいなんて思わなかった。
それに実は、まだ骨の魔石があるというのもかなり堪えた。
何故って骨の魔石は貴重な物らしいし、食べ物にするわけにはいかないだろう。しかし、腹が減った。この気持ちの間で揺れたのだ。
しかし、まだ骨の魔石には手をつけていない。
しかし、明日も同じように歩くとなると?
太陽モドキも、もうすぐ沈みそうだ。
今日はここら辺で空腹と喉の渇きに耐えながら、休むとするか。
一向に王都どころか村すら見えてこない道を睨み付けながら言う。
「ペン太。今日はここら辺で野宿だ。」
「ペン!?また野宿っペン!?」
そうだぞ。と頷くと、当然の如く不満をぶつけられる。
「一体いつまで野宿ペン?食べ物も飲み物もなくて、挙げ句の果てには毎日野宿。もうやだっポサ!温かい所で寝たいポサ~!」
ペン太が駄々をこねる気持ちも分からなくはない。
俺だってとにかく休みたい。
しかし状況が状況だ。
「ペン太。見ろ!前方には村もなく、ただ道があるだけだ!野宿も仕方ないことなのだ。諦めろ。」
ペン太は俺の指さした道を見る。
ペン太の目には、きっと絶望的に平坦な道が見えてい――――
「ペン?明かり............が見えるペン?」
な............んだ............と............?
明かり!?明かりと言ったのか!?
俺には何も見えないぞ!?
こいつ鷹の目か!?いやフクロウだけど!
「明かりがあるんならそこには人............そうでなくても知的生命体がいる可能性が高い!やったなペン太。今日はそこに泊まろう!」
わ~い、わ~いと二人(正しくは一人と一匹)で手を(正確には手と羽根を)繋ぎあって喜ぶ。
なんたって久しぶりに休めそうなんだから。希望が見えてきたのだから。
「よし、行こう!その明かりの方向へ!」
「ゴーだポサ!」
先ほどまでの辛さとか忘れて、スキップでルンルン道を行く。
少しすると俺にも明かりが見えて来た。
ペン太の見間違えとかじゃなくて良かった。
明かりは道を真っ直ぐ行った所にあったのだ。
俺の目は良くも悪くもない、普通の視力だ。
なので近づくに連れ、明かりとその他の物もだんだんと見えて来た。
あれはおそらく村だ。
明かりは村の門に付けられた物だった。
異世界だから松明か何かだろう。
いや、魔石があるんだし、そんなに原始的じゃ無いかも。
まぁそんなことより、俺が見て思ったのは人間もデモンナイトも村に門をつけるんだなぁってことだ。
人間、そしてモンスター。
どちらも知的生命体だ。
いやモンスターは種類によるが。
とにかく、人間のように知性的なモンスターもいるのにどうしてモンスターと人間は分かり合えなかったのだろうか?
やっぱり異世界は謎だな。
おそらくデモンナイトの声というモノは、モンスターテイマー以外にもしっかり聞こえると思う。戦さんは確か、モンスターと意思疎通するには契約的なやつが必要って言っていた気がする。でも、デモンナイトとは契約してないのに、意思疎通ができた。ハウンドとは出来なかった。この違いは知性の有無だろう。
つまり、知性のあるモンスターは人間と対話できるという事だ。
しかし、人間とモンスターは対立している。
一体何故だろう?
契約といえば、最初に聞いた異世界の声的なナレーション。こっちに来てから一度も聞いていないな。
これも謎。
異世界は謎だらけだぁ。
いつか全部解明してやる。
なんて考えていると、村にかなり近付いて来た。
やっぱりデモンナイトの村より小規模。
なんかどうしてもデモンナイトと比べてしまうよなぁ。
村の中は夜にも関わらず、なかなか活気で溢れている。
何故分かるかって?デモンナイトの村で活気がなんとなく魔力の流れ的なモノに反応することが分かったからだ。
おや?
門番的な人が見えるではないか。
「ペン太。人がいるぞ!」
「いるペンね。」
反応薄いなおい。
まぁ俺は人間だから同じ人間がいると親近感が湧くのかな?
とにかく、少し距離が離れているが、手を振ってみよう。
「おーーーい!」
大きな声でおもいっきり手を振りながら門番に合図をする。
すると門番は気がついたようで手を振り返してくれた。
「よーしペン太。急ごう。」
「さっきからテンション高いペンね~。」
そりゃそうさ。
なんたってはじめての人間の村だからな。
モタモタしてると置いてくぞぉ!
久しぶりの人間に興奮した俺にはペン太のペースが遅すぎるように感じる。
こうなったら仕方ない。
ふよふよと飛行するペン太に狙いを定める。
そして両手でガシッ!っと掴んだ。
「ペン!なにするポサ!?」
ペン太は丸いから落とさないようにしなきゃな。
じたばたするペン太をしっかりロックした後、村に向かっておもいっきりダッシュ!
この何日かの疲れを無視してダッシュ!
とにかく休みたいがためのダッシュ!
「うおおおおおおお!」
「ペンンンンンンン!」
異世界で修行したニートの身体能力を見よ!
そしてこの後、その村には、ヘトヘトのモンスターテイマーとそれに抱えられたモンスターの奇妙なコンビが現れたのだった。




