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テイム?

 目の前に明確な道があると、進むのも楽しくなってくる。



 見よ!この地平線まで続く何もないまっすぐな道を!


 まるで森を引き裂く一筋の光!


 希望はこの先にある!



「ところで語尾回しはどうなったっペン?」



 うるせぇ。今、後世に残るスバラスィ詩を詠んでいるというのに!


 まぁ、少し興奮していたのも事実だし、許してやろう。


 さっきまで歩いていた道なき道と違い、地面がしっかり露出していて草も生えていない。まばらに石が転がっているだけだ。



 まぁ、しっかり整地されているわけでは無いから、少しくらいの凹凸はあるもどこからか伸びてきていて、どこかへ繋がっているというのははっきりしているだろう。いや、まぁ............あれだが。



「道っていっても獣道みたいっペンね。」



 ペン太の言う通りだ。


 なんかでっかい............たとえば、ドラゴンみたいなモンスターが通った後だと言われても納得できるな。


 いや、そんな怖い想像はやめよう。

 この道は希望の道なのだ!



「け、獣道なんていうなよ!いい今はこの道を信じて進むだけだろ?」


「あれ?もしかしてびびってるペンか?」


 びびびびびびってねぇし。

 ここ怖くないし。


「ペン太。忘れたのか?俺たちはあのスケルトンを倒したんだぞ!今さらどんなモンスターが出てきても............やられるわけねぇ!」



 スケルトン以上に強い奴なんてそうそういないだろう。

 ドッペルゲンガー?知らん!

 アンデット領外にはそんな奴はいない!



「まぁとりあえずのんびり進むポサ。どうやら、アンデット領と違ってそんなにポンポンモンスターは出てこないようだっペン。」


 それもそうだな。

 ここまでくるのにモンスターとは一度も遭遇してないし、のんびり行こうのんびり。


 俺たちは王都があると思われる西に歩みを進める。


 あ~やっぱり平和っていいな。











 ガサガサっとテンプレな音を立てて右の草むらから一匹の犬が現れた。

 それも大型犬レベルの大きさの。


「フラグ回収だと............?」


 犬は俺たちの行く手を阻むかのように、睨み付けてくる。

 どうすんだペン太。


「ヒラタ!これはテイムのチャンスポサ。」


 おお確かに!

 テイマーの本に書いてあったテイムを実践してみるか。

 俺は犬に手をかざしてこう言った。


「おーよしよし。落ち着け落ち着け。ハウスハウス!」


「ガルルルルルルル!」


 鳴き声が狼なんだが。

 これがほんとの一匹狼!なんつって。


 いやボケている場合ではない。

 全然落ち着いてくれないのだが。


 くそ!しょうがない。

 やりたくはなかったが!


 俺はポーチから食料である赤の魔石を取り出した。

 食べ物で釣る作戦だ。


 左手で牽制しながら、右手に赤の魔石を持つ。


「よしよし。いいこにするんだ。落ち着け。美味しいモンをやろう。」


 そう言って魔石を見せる。

 犬の注意が魔石に逸れる。


 俺が魔石を右にふると犬の顔は右に。

 俺が魔石を左にふると犬の顔は左に。


 しっかり注目したな。



 それを確認すると俺は恐る恐る魔石を足元に置く。


「さ、さぁ。こっちに来て食べなさい。」


 少し緊張しながら犬に話しかける。

 犬はあれから一度も唸ってないし、もしかしたら好感触かも。


 しかし犬は食べようとしない。


 もしかして、俺が近くにいるから警戒しているとか?

 まぁ、犬だって野生の生物なんだし、警戒はするか。


 というか、この犬はモンスターなのか?

 実はただの犬でした!なんてあるかもしれない。


 う~ん。


 まぁ敵意があるのは明らかだし、正当防衛ってことで。

 よし、今からこいつをハウンドと呼ぼう。

 本には写真はもちろん、絵も書かれてなかったから、推測になるがな!


 まぁとりあえず、魔石を食べてもらわないと警戒は解かないんじゃないか。

 う~んどうやったら食べてもらえるだろうか?



 俺が悩んでいる間にも、犬は頭を低い構え、臨戦体制だ。




 そうだ!

 魔石を近づけてやればいいんじゃないか?


 そう考えた俺は、足元にある魔石を足でスパコーン!と蹴った。

 ハウンドに当たらないように、ちゃんと威力は調整したさ。



 だからもちろん、いい感じにハウンドの足元まで転がっていった。

 ハウンドは足元の魔石に目を奪われている。


「ガル?ガルルルル?」


 よしよしいいぞ。

 そのまま食べろ!食べるんだ!





 すると俺の声が届いたかのように、ハウンドは魔石へ口を近づけていく。









 食べた!



 よし!これでまずは信頼を築いて。


 しかし、魔石を口にしたハウンドの反応は俺の予想していた反応とは違っていた。





 なんと魔石を口に入れた瞬間、ペッ!と吐き出したのだ!


 なにしやがる大切な食べ物を~!


 口にしようとすると今度は――――



「キャウンキャウン!」


 とさっきとは全く違う悲鳴のような鳴き声を発した。


「な、なんだ!?」


 ペン太も不思議そうに首をかしげている。

 その間にもハウンドはなんと二本足で立って、自由になった前足で口から出した舌をかきむしっている。


 その仕草はまるで辛い物............あるいは熱い物を食べた人間に似ている。











 あ






 ハウンドが口にした魔石は赤............つまり火の属性の魔石だ。

 魔石は属性によって性質が変わり、それを利用してグッさん達は生活していた。たしか............火の魔石の性質は。





「ペン!火の魔石は衝撃を与えると発熱するっポサ!」


 そうだ!

 火の魔石は発熱するって教えられてたのに。


 あ~そういやさっき俺、魔石蹴っちゃったよなー。






 その結果、漫画みたいな動きをするシュールなハウンドが誕生したのである。



「こいつはやっちゃったやつか?」


「やっちゃったやつペンね!」


 マジですかぁ。



 見ると、ハウンドはすっかり落ち着いていた。

 いや、さっきより敵意マシマシだが。


「ガルルルルルルル!バウ!バウ!」


 今にも襲いかかって来そうだなぁ。

 いや他人事じゃ無いけどね!



「しゃーね。戦いますか。」


 覚悟を決めて、木刀を抜く。


「ペン?ヒラタは動物を傷つけるのは大丈夫なのペン?グッペンが転生者の中には動物と戦えない奴もいるって言ってたペンよ?」



 ふっ。


 ペン太よ。俺は根絶派でも保護派でもねぇ!

 つまり、自分の意志で、信念で動けるってことよぉ!



「ふっ。ペン太よ。俺はじ――――」

「バウバウバウバウバウバウ!」


 くそ!俺のセリフを邪魔するなぁ~!


 と、ハウンドに怒りをぶつけようとハウンドの方に振り向くと、既にハウンドが俺の目の前まで迫って来ていた。



 大きな口から牙を覗かせて。


「うわぁぁぁ!」


 咄嗟に木刀を縦に構えたまま前につき出す。

 教えて貰った、剣での防御方法だ。




 ハウンドはつき出した木刀を俺の腕だと勘違いしたのかおもいっきり噛みつく。


 その瞬間、カウンターでもお見舞いしてやろうと、左手から炎球(ファイヤボール)を繰り出す。もちろん直撃して、ドゴン!と音を立てる。ハウンドは熱さからか木刀を噛む力を緩める。


 これ幸いとばかりに、木刀を噛むハウンドを振りほどく。

 俺の鍛えた筋力ならば、犬一匹投げ飛ばすなど容易だ。


 投げ飛ばされたハウンドは着地できず、地面にザザッっと倒れこむが、すぐさま起き上がり睨み付けてくる。


「まだやるか。犬コロめ。」


「ガルルル。バウ!バウ!」


 俺の言葉に答えるようにハウンドが吠える。


 その根性、気に入ったぜ!

 お見舞いしてやるよ。グッさん流剣技!


 ハウンドから目を離さずに、右手の木刀を腰に軽く当てる。

 鞘は無いから仮想鞘。ここには鞘がある。

 そう意識して、全神経を集中させる。



 全てを出し抜く音速の剣。

 今こそ受けよ!


「グッさん流剣技!」


 そこまで言って腰を深く落とす。

 音速を生み出すには、これを無意識に、当たり前のように、自然にできるようにならなければいけない。


 全ては流れ作業。



 今一度ハウンドを見る。



「居合!」


 体が空気の抵抗を受けず、まるで自分自身が木刀になったかのように、動いて、発動と同時にハウンドの後ろに立つ。

 正確には同時では無いのだが、あまりの速さに同時に動いたかのように錯覚する。


 自分でもわからないほどに。




 しかし、手応えはあった。

 ハウンドを切りつけた手応えが。








 一秒の沈黙。



 そして。




 衝撃音が遅れてやってくる。

 ハウンドの首を切りつけた(正しくは殴った)音が。




「キャウン!」



 そんな鳴き声と共に、ハウンドが後ろから飛んでくる。

 速すぎるため起きる現象だ。


 ドシャっという音と共にハウンドが俺の目の前に落ちてくる。


「ふっ、他愛もない。」


 他愛もないってどういう意味だ?まぁいいや。

 格好はついただろうし。


 等と考えていると、ハウンドがよろよろと起き上がる。

 おいおい、まだ戦うつもりかよ。

 そう冷や汗をたらしていると、俺達に背(正確にはお尻)を向けた。


「キャインキャイン!キャイン!キャイン!」


 鳴き声をあげて逃げて行ってしまった。


 やがてその姿が見えなくなると、そこには戦闘の結果にご満悦なヒラタと呆れた顔のペン太がいた。

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