東の平原
「オエエエエ。」
草むらにおもいっきり吐く。
車酔いをしたことが無い人にはわかんないかも知れないけど、これめっちゃきついんだぞ!うっまた吐き気が!
「オロロロロ。」
「アンデットナイトたちによろしく頼むぞ。」
「任せよ。お前達も、無事ヒラタを送り届け、帰還するように。」
では!といいながら馬に乗り、縮地を使いながら走って行った。
最後まで偉そうなやつだったな。俺にも挨拶して行けっての。
それにしてもやはり縮地はえげつない。
見晴らしが悪いアンデット領だからか、縮地を使うともう一秒で見えなくなってしまう。あれに乗っていたと考えると............ウッ。
「オオオオオ。」
何度か草むらに吐きまくっているとだんだん落ち着いて来た。それにしてもここはなんか臭いな。早く離れよう。
「落ち着いたカ?」
「おう!バッチリ。」
もう大丈夫だぜ!
「なら出発するか。一日長くなったが、アンデット領を脱出するぞ。」
グッさんの言葉にコクコクと頷く。
アンデット領の外を見てみたい気持ちで一杯だ。
「今いるのが東の平原。ここは低級のアンデット系モンスターが生息する地域で、アンデット領の中では最も危険度が低い。」
そしてだ。とグッさんが付け加える。
「この東の平原にはまれに人間も入って来る。もしも人間と遭遇したら、お前はモンスターに捕まったフリをしろ。ペン太も弱ったテイム済みモンスターとして振る舞えよ。」
なるほど。作戦、把握!
「わかったポサ。弱ったフリをすればいいペンね?」
ペン太が確認する。
アンデット領を出たら、俺とペン太の二人旅になるな。
いや、一人と一匹旅か?
「そうだ。俺ともぐらゾンビは逃げる。もしも、人間に遭遇しなかったら、アンデット領の境界ギリギリまで送ってやる。そこからは俺達は同行出来ない。」
アイアイサー!
「よし。じゃあ、とっととここを抜けるぞ。」
おー!
「ところでグッさん。一つ聞いていいか?」
「おう。なんだ?」
さっきから............ここに着いた時から気になっていたんだけど――――
「ここのどこが東の平原なんだよ!」
木!木!木!
森と全く変わってないじゃないか!
「まぁそうカッカッするな。東の平原はもう少し先だ。スカルナイトも、村の事が気になっていたんだろう。」
そうかな?
まぁいいや。とっと抜けよう。
「方向はこっちだよな?」
「あァ、そうだガ。」
なるほどなるほど、こっちか............そうと分かれば。
「ひゃっほーい!」
「待て!モンスターは一応いるんだぞ!」
グッさんが後ろから何か言っているが、気にしない気にしない。
走れ!走れ!はっしれ~!
走っていると、目の前には行く手を阻むかのように草むらが出現!しかしんなこたぁ気にしない。勢いよく草むらにダーイブ!
ザサァ!という音と共に頭から草むらに入る。
よく考えたら、中に木の枝とかめっちゃあったらやばかったな。
まぁそんな物騒なものは無かったから無事だけど。
手でかき分けながら草むらを突破する。
意外と長いが。
「とりゃ!」
派手な音と共に草むらから頭を出す。
すると目の前には。
「おおお............!」
アンデット領とは思えないくらい綺麗な平原があった。
草は若葉色だ。明るい。
暗いイメージが強いアンデット領とは到底思えないな。
広い平原は周りをアンデット領の木々で囲まれてはいるものの、真上には太陽モドキが強い光を放っている。
それにしても広い!広すぎる!
一体どれぐらいの広さなんだ?
俺が通っていた学校のグランドの十倍?いや二十倍?
どのくらいの広さなのか端の方を眺めながら、計算しようとしていると、ふとある物が目に止まった。
それは平原のド真ん中にいた。
黒い。
暗いではなく、黒かった。
まるで人の影のようだった。
ヒラタは目を凝らしてさらに細部まで見ようとした。
すると、それのおおよその姿形が確認できた。
まさに、人の影。
否、人型の影。
影が人の形をとったようななにかだった。
性別の区別もつかない。背丈も体つきも普通。
しかし、その影はオーラを纏っていた。
こちらも黒いオーラだった。
なんなんだ?.........あれは?
直後に物音。
咄嗟に身構えるが、草むらから出てきたのはもぐゾンさんだった。
もぐゾンさんは平原を見ると、目を細めて
「なんだカ、懐かしいナ。」
続いて、グッさん・ペン太が草むらから出てくる。
「危ないぞ!ヒラタ!平原のモンスターは弱いがとにかく数が――――」
そこまで言って、黙りこむ。
「モンスターが............いない............?」
グッさんが漏らしたこの言葉にペン太が反応した。
「普段はモンスターがいるポサか?」
俺もそれは気になっていた。
モンスターなんて一匹もいない。
いや、平原のド真ん中にいるあいつはモンスターかもな。
「グッさん。あそこにいるやつは何なのか知ってるか?」
そう言って、平原のド真ん中を指さす。
それを見たグッさんの雰囲気が変わった。心なしか強ばったような顔をしている。
もぐゾンさんも平原の真ん中の何かを見て息を呑んだ。人間で言うと、驚いて目を見開いているといった感じだ。
一体どうしたんだ?
ふいにグッさんが呟く。
「平原を迂回するしかない。あいつが出た以上はな。」
俺は驚いた。ペン太もだ。
「グッさんどうしてだ?あの黒いやつはそんなにヤバいやつなのか?」
「お前達には知って欲しくなかった。しかし見てしまったからには話すしかないよな。」
不穏な空気が流れ始めたのを肌で感じた。まるであの黒い何かの瘴気が辺りを包み込んでいるようだ。そう、アンデッド領に流れている空気とあの黒い何かが纏う空気には似たような感じがある。重々しい、死や苦しみのような空気だ。
「あれはドッペルゲンガーだ。」
ドッペルゲンガー?
さらに追い討ちをかけるようにグッさんは言った。
「ランクはSSランク。あれに見つかれば確実に全滅だ。勝ち目は絶対にない。」




