ドラゴンステーキ
なるほどなるほど。
そのアンデットってやつが蘇生魔法かなにかで蘇らせたってわけね。いや納得できるかー!
「いやいやいやいや。」
おもいっきり否定するもアンデットナイトさんはさらにこう付け加えた。
「事実だよ。もちろん、そのせいでアンデットはほとんどの力を失ってしまったらしいけどね。それでもアンデットはモンスターの楽園を作るため尽力した。」
さらに何かやってたらしい。
ていうか勇者もアンデットもなんなんだよってレベル。
話を聞く限り、勇者が消えてからアンデットが生まれたって感じなんだろうけどさ。もしも、二人が戦えばこの世界はどうなってしまうんだってレベルだ。
「アンデットは人間に、アンデット領へ入ってこないように圧力を掛けた。これでモンスターの楽園は出来上がり。」
ずいぶん簡単にやってのけたな。
まあそれが今も続いてたら、そのアンデットってやつに俺やられてるだろうし、きっとなんかまだあるんだろうなぁ。
「かと思われたが、一つ問題が起きた。なんだと思う?」
うーん、起きそうな事かぁ。なんだろう?
「人間がアンデット領に攻めて来たとか?」
「不正解。それは先の話だよ。」
先の話っすか。
結局攻めて来たんですね。
「実は、モンスター達の生活環境が合わなかったんだ。」
あ~なるほど。
確かにグールと............例えばハウンドだったら違うだろうなぁ。
「だからアンデットはさらに人間に圧力を掛けて人間領のほとんどの土地を貰ってモンスター達が住む領地にしたんだ。」
貰った? 奪ったじゃなくて?
「それからアンデットが姿を消し、人間がそれぞれの領地に攻めて来た。今はここに当たるよ。」
なるほどねぇ。
モンスターにはモンスターの、人間には人間の悩みがあるんだなぁ。
「でもまぁ人間たちはまだどの領地も取り戻せて無いんだけどね。おっと、人間の事ならヒラタの方がよく理解してるかな?」
いえ、知りません全く。
「まぁ話はこれくらいにしようか。みんなの方でなにか美味しい物でも食べよう。今日は祝いの宴だ。」
見るといつのにかスカルナイトは姿を消している。抜け駆けしやがって!
「よーし! じゃ、食おう。なんかオススメのやつとかあります?」
「そうだな。ドラゴンステーキとかどうだろう?」
ドラゴンステーキ............だ............と............?
「ドドドドラゴンステーキってドドドドラゴンのステーキですか!?」
「ドラゴンのステーキじゃなかったらドラゴンステーキじゃないでしょ。」
まさか!
そんなまさか!
異世界に来て初めて食べるまともな料理がドラゴンステーキだとぉ!?
「なななんで、ドラゴンの肉がここに?」
ドラゴンがアンデット領にいるのか?いるのか!?
「なんでって.........ドラゴンはどこにでもやって来るだろう?」
初耳なんすが。
「巣立ちしたドラゴンはまず巣を作る場所を探すんだ。その時、様々な領に降りてくる。アンデット領にもね。それを僕たちが食べるんだ。同じAランクだから複数でかかれば安定して倒せる。」
へー。
つうかドラゴンもAランクなのね。
なんかそんなに強くなさそう。
「とりあえず、ドラゴンステーキ食う!」
「よし、案内しよう。」
こっちだ、と言いながら歩き出すアンデットナイトについて行く。
ドラゴンステーキ♪ ドラゴンステーキ♪
歩いていくアンデットナイトの背中を見ながら、改めてこの世界は深いなと思う。人間とモンスターの歴史の交錯。それにより生まれた今の不思議な関係。そんななかでモンスターを従えるモンスターテイマーは人々に受け入れて貰えるのだろうか? そもそもペン太は町に入れないんじゃないか?
そういやペン太たちはどこいった?迷子か?
まぁあいつらならなんとかなるだろ!
たくさんのデモンナイトが囲い騒ぐ焚き火を少し過ぎた辺りにひときわ目立つ屋台のようなものがあった。
アンデットナイトはそこに歩いていく。
それにしても流石、宴というだけあって、色んな食べ物、音楽、その他もろもろかなり豪華で騒がしい。嫌いじゃねぇぞ。
「おばちゃん。ドラゴンステーキ二つ。」
「あらやだおばちゃんなんて。私はまだ若いわよぉ。はいドラゴンステーキ二つ。」
「ありがとう。代金は隊長に請求しといて。」
さらっと上司に奢らせるんかい。
などと考えているとアンデットナイトが皿に乗った旨そうな肉を持ってきた。
あれがドラゴンステーキだというのか............?
ゴクリ。
黒胡椒のような調味料が掛かった熱々で厚々のステーキ。
ドラゴンの肉というのも頷ける。なぜなら向こうでドラゴンの肉が豪勢にも俺の炎球よりも大きな炎で焼かれているからだ。ドラゴンが火を吐くなら自分自身が火に強くてもおかしくないから、高火力で焼かなきゃいけないのだろう。
いやこの世界でドラゴンが火を吐くのかは知らないけど。
とにかくだ。
そのドラゴンステーキが今、俺の目の前にある!
「はい。どうぞ。」
箸もフォークもナイフも無い。
しかし旨そうな肉はある。
ホカホカ湯気を出しながら、木のお皿にまるで君臨するように堂々と、単品で乗っている。聞こえる! 聞こえるぞ!
「我は! 肉の中の王! ドラゴンステーキである! 我の前には野菜! 盛り付けなど! 邪魔でしかないのである! さぁ! とっとと食すが良い!」
と肉が言っている。言っているぞ!
食いたい!食いたい!
食いたい食いたい食いたい食いたい食いたい食いたいが!
手で食べるのはなんだかなぁ。
でももう肉が食べろ食べろと言ってくる。
俺は!
俺は!
「いっただっきまーす!」
そう言って飛びかかるように皿からステーキを取り、その口に放り込む。
その瞬間だった。
「うっ!」
「?」
「まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいい!!!!!」
デモンナイトの村中にドラゴンステーキを食べ昇天した人間の声がこだました。




