宴
「客人よ。宴の準備が出来ました。」
もうそんな時間か。
異世界に来て不安になるなんてよく考えたら当たり前の事。元の世界に戻る方法なんて全部終わってから探せばいい。今は楽しむべきだ。
とニート特有のポジティブメンタル。
「はーい。今行きまーす。」
俺は今結構ワクワクしている。
やっぱ宴といえば肉ぅ! 酒ぇ!
この体は未成年だが心は成人済み!
今夜はおもいっきり飲んだるで~!
「よシ、行くカ。」
といいながらベッドを降りるもぐゾンさん。
そういえば木刀とポーチは必要かなぁ? あってもかさばるし要らないか!
そのまま階段を降りて宿を出る。
アンデット領の中とは思えないくらい空気がいいな。
ひんやりしていて、宴にはもってこいだ!
「おーい、ペン太! 置いてくぞ~。」
「お化け草モ、もたもたしてたラ先に全部喰うゾ。」
この時ふと、この世界に季節ってのは無いんじゃないかと思った。寒い所は寒く、暑い所は暑い。だが、周りの環境、温度や湿度を変える事が出来るやつらもいるらしい。この環境が人工的に作られたそれならデモンナイトはスゴいな。
「おーい、こっちだ客人達!」
少し先でデモンナイトが手を振っている。
待たせてはいけないので、急いで小走りで向かう。
皆は............待ってりゃくるだろ。
「もぐゾンさんも行こうぜ............っていねぇ!?」
全く仕方ないなぁ。
いくつか家を通り、屋台らしき物を通り、先ほどデモンナイトが手を振っていた所まで着くと、どこからか楽しそうな声が聞こえてきた。
さっきのデモンナイトは見当たらないので仕方なく声の方向へ向かってみる。
「おーい、お前! 遅かったではないか!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声の方向を見ると、スカルナイトがジョッキのような物を片手に、手招きしている............っていうかあれは酒か!? 酒なのか!?
俺にも寄越せ~とスカルナイトに向かっていく。
「ちょっとこい。」
と、服を引っ張られた。
筋力どうなってんだよ。
そのまま、たくさんのデモンナイトの中まで連れていかれる。
もはや祭りじゃねぇか。あ! あの食いもん気になる! ちょっ......離せ離せ。
そしてデモンナイトがたむろっている大きな焚き火の近くまで連れていかれる。ドンドコ鳴ってるのは太鼓か?
「連れて来たぞ! これが今回のスケルトン討伐に参加した人間の............なんだったか?」
「ヒラタ! イヨウ・ヒラタだよ!」
「まぁなんでもよい。スケルトンを倒し、やつらにも勝る力を我は手に入れた! デモンナイトに安寧あれ!」
「「「「「「「「「「デモンナイトに安寧あれ!」」」」」」」」」」
「かんぱ~~~~い!」
あ、俺の出番これだけ!?
「おーい、ヒラタ、こっちだ。」
スカルナイトがまた呼んでいる。全く、どれだけ人を振り回せば気が済むんだよぅ。
と、思いながらスカルナイトの方へ行くと、なにやら見慣れないモンスターがいた。デモンナイトのようでデモンナイトとは違う謎のモンスター。ヘドロみたいなやつがベタッと鎧に付いたような見た目だ。
「君が客人のヒラタかい?」
見た目と裏腹にイケボじゃねぇか。
グッさんといい勝負だ。
「あっはい、そうです。」
「こいつはアンデットナイトだ。今は我の次にこの村で強い騎士になる。」
アンデットナイトですか。
デモンナイトが普通に進化したらこうなるのかな?
「あれ? 今はスカルナイトが村の中で一番強いの?」
「あぁ。我のランクはS。こやつのランクはAだからな。」
へー、ランクはデモンナイトと変わらないんだなぁ。
「隊長はスケルトンの骨で進化したのでSランクですが、私はアンデットグールの肉で進化したので隊長より弱いんです。」
そう、頭を掻きながら恥ずかしそうに喋る。
大丈夫。隊長より人は良いから。
んな事よりアンデットグールか。アンデット領のアンデットグールか。
見たこともなければ聞いたこともない名前のモンスター。
今はグッさんももぐゾンさんもいないから聞けないんだよなぁ。
「アンデットグールってなんですか?」
意を決して聞いてみる。
アンデットナイトさんは優しそうだから質問しやすいな。
「あぁ。アンデットグールは珍種だからね。教えてあげるよ。」
そういって話し出した。
「アンデットグールはグールの希少種でアンデット領の王、アンデットから力を授けられたグールと言われている。」
アンデット領の王、アンデット?
「通常のグールと違い、Aランクで魔石を破壊しない限り死なない。つまり、頭と体が離れていても生き続けていられる。このようなモンスターは珍しいんだ。スケルトンや魔王と呼ばれる者でも、頭と体を切断すれば魔石が破壊されていなくても死んでしまうというのに。」
やっぱ魔石ってなんか全てのモンスターに共通する弱点みたいな感じなんだな。
「僕は狩りの最中、偶然アンデットグールを見つけてね。かなり厳しい戦いになったもののなんとか魔石の破壊に成功し、残った肉を素材に進化したんだよ。」
ほへー。
「アンデット領の王、アンデットって何者なんですか?」
ふむ、といった感じで顎に手を当て考えるアンデットナイトさん。
聞いちゃいけないやつだったかな?
「アンデット領というのはアンデットが人間からモンスターを保護するために人間の国に掛け合って作った、いわばモンスターの楽園なんだ。」
モンスターの楽園!?
とてもそんな風には見えないぞ。
「昔、人間は勇者という強大な力を持つ者を従え暴虐の限りを尽くした。ありとあらゆるモンスターは殺され絶滅した。僕たちの先祖もね。残ったのは有名なスライム、ゴブリン、スケルトンの三種類だけ。幸い勇者は少しすると姿を見せなくなったが、人間たちはモンスターの生息していた森、海、砂漠、なにもかもを自分たちの領地とし国を作った。」
いや人間悪すぎだろ。
いや人間からしたらモンスターは敵かも知れないけどさ。
改めて聞くとヤバい事してんな。デモンナイトみたいに知能も技術も、そして力もあるモンスターもいるのに。
「しかしある時............リポップと呼ばれるモンスターの謎の大量発生が起こった。これは知っているね。しかし、実はこれはリポップではなかったんだ。」
リポップではなかった!?
どういうことだ?
アンデットナイトが少しの間沈黙する。
きっと人間にこの事を話して良いのか迷っているのだろう。
「スケルトンの変異種として生まれたアンデットがその力と引き換えに、勇者に滅ぼされたモンスターを蘇らせたんだ。」
祝!20話!




