決着
もぐゾンさんの体の破片が遠くでバラバラと崩れ落ちる。
一瞬何が起きたのか理解できなかった。
コンマ何秒かの空白の後、ようやくもぐゾンさんが死んだという事が理解できた。
頭にあるのはそれだけだった。
仲間でもあり、師匠でもあったもぐゾンさん。
異世界に来て、何も知らなかった俺に色んな事を教えてもらった。
付き合いの長さだけならペン太よりも長かった。
そのもぐゾンさんが。
もぐゾンさんは強かった。
どこかで必ず大丈夫だと思っていた。
グッさんやもぐゾンさんは死んだりしないと思っていた。
しかしそれは夢だった。
目の前でもぐゾンさんは。
殺された。
気づけば叫んでいた。
ここが危険なアンデット領だという事も忘れて。
もう、あの顔は見れないのか。
もう、あの声は聞けないのか。
そう思うと悲しくて、涙を流して叫びながら泣いた。
もぐゾンさんはもう......!
⌈よんだカ?」
⌈うぉぁぁぁぉぁぉぁぁぁあ!?」
じっ、地面から......もぐ......もぐゾンさ............?
さ、さっきスケルトンに殺されたはずじゃ?
まさかもぐゾンさんの幽霊!? いや元々死んでるからゾンビなんだし、ゾンビの幽霊ってなんだよ!? あれ? もぐゾンさんってもしかして......?
⌈ど、いや、まず、もぐゾンさんはゾンビだから死なないってやつ?」
⌈いヤ、違うゾ。」
あっさり否定された! ショック!
そういえばどんなモンスターでも魔石を潰されれば死ぬんだった。
え? いやじゃ......なんで?
俺の様子を察したのか、もぐゾンさんは腐ッと笑う。
⌈屍。一度だケ死んでモ蘇れるようになルスキルダ。」
は?
は?
チートじゃねえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(心の叫び)
それ普通なら俺が持つスキルじゃねぇのぉぉぉぉぉぉ?(妬みの極み)
俺なんて炎球だぞ? チートの欠片も無いんだぞ? 中級魔法なんだぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!(かなりの失礼)
ぴやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(ただの発狂)
⌈もぐゾンさん......そ、それはチートって言うものじゃないかな? だって自分に連続で掛け続ければ一生死なないんじゃ......。」
だって、だってそうじゃん! 今さら否定はさせないぞ!
⌈いヤ、それは無理ダ。」
なんでだ! 俺を納得させる説明をしてみろ! プンスカ!
⌈再使用ニ、一年かかルんダ。」
撃沈。
クールタイム一年。
拝啓とーちゃんかーちゃん異世界は甘くなかったよ。
俺がガックリしていると......。
「おい、お前。早く手伝え。誰が時間を稼いでやってると思ってるんだ。」
デモンナイトの苦しそうな声が聞こえた。
見ると、剣を引き抜いたデモンナイトがスケルトン相手にかなりいい勝負を展開していた。グッさんもペン太もサポートが上手くなってるんじゃないのか?
⌈草!」
グッさんの草魔法による草がスケルトンの足を絡めとろうとするも、華麗にかわしている。学習するって厄介だな。
ペン太のフリーズンも全く効かなくなってきているし。
う~む。
覚醒せよ。俺に眠る真なる力。
今、この状況を脱する力を与えたまえ。
あ、閃いた。これぞ主人公パワー。
⌈グッさん! スケルトンに下から突き刺すタイプの草魔法を!」
スケルトンは骨だ。ダメージは無いかもしれない。しかし、あれはなかなか威力もスピードもある。うまくいけば......。
⌈草!」
実は横から突き刺すタイプと足元から突き刺すタイプだと、詠唱が若干違うらしい。全く分からないけど。
鋭い草はスケルトンの足元から勢い良く生えてその体を突き刺す。しかしこれでは魔石を割ることは出来ない。しかし、生えた草がスケルトンの頭蓋骨の中に入る。
これで魔石が割れれば万々歳。
しかし狙いはそれではない。
頭蓋骨に到達しても、まだまだ伸びようとする草。
それは頭蓋骨の中から上に力が働くということになる。
スケルトンの体は骨で出来ているが謎の力で繋がっている。
頭蓋骨に上向きの力が働けばどうなる?
頭蓋骨にスケルトンを一瞬浮かすほどの力が働けば......。
一瞬、スケルトンが浮いた。
グッさんの草魔法でスケルトンを浮かせたのだ。
骨だけだからやはり軽かったのだ。
こうすることで、スケルトンは踏ん張るという事が出来なくなる。
⌈今だ! デモンナイト!」
一瞬の隙だ。
⌈うおおおお!」
剣が空気を切り、そしてスケルトンを切り、攻撃に対して踏ん張る事ができないスケルトンを吹っ飛ばす。
派手な音と共に森の奥にスケルトンが消えた。木が何本か折れる音が聞こえた。貴重な―――おそらく最後の―――スケルトンに出来た大きな隙。
⌈皆、行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
木刀を握り直し、スケルトンが吹っ飛ばされた方向へ走り出す。
土煙を抜けるとスケルトンは体制を既に立て直そうとしていた。
もう遅い!
土煙からスケルトンを包囲する形で皆が姿を表す。
そしてそれぞれ自分の持つ最上の攻撃をその頭部に放つ。
「悪く思うな。暗黒斬り!」
「ったク。残機なくなったじゃねえカ。腐突き!」
「草よ、穿て。草槍」
「ペンってこれしか無くないかっペン。フリーズン!」
そして俺は。
「グッさん流剣技! 居合!」
全員の技がスケルトンの頭蓋骨目掛けて放たれ、直撃。
骨が割れる音が確かに聞こえた。
今度こそ、スケルトンの頭蓋骨は完全に割れ、魔石が飛び出していた。
「よっ!」
飛んでいく魔石をキャッチする。もはやここまで来れば勝ち確だ。
スケルトンが焦ったように勢いよく俺に突撃してくる。
初めてスケルトンが滑稽に見えた。心なしか汗かいてるようにも見える。
俺は魔石を天高く掲げた。
⌈あばよ、スケルトン。」
そして握り潰した。
バキリと骨が折れるような音と共にスケルトンの体がガックリと倒れた。
動く気配は、もう無い。
割れたキレイな魔石を見ながら呟く。
⌈意外と呆気なかったな。」
アンデット領で恐れられるSランクモンスターのスケルトンが一匹、一人のモンスターテイマーとその仲間たちに倒された。




