骨こそ強し戦え平田
その時、俺は見た。
スケルトンの頭蓋骨は完全には割れていなかった。
スケルトンが腕をぶんまわす。風を切る音と共に、デモンナイトともぐゾンさんをぶっ飛ばす。
「ぐ!」
「ごォ!」
デモンナイトは俺と反対の方向に、もぐゾンさんは俺の真横を飛んでいった。
そしてスケルトンは俺に向かってきた。
まだ俺を狙うか、と悪態をついてみるも状況は変わらない。
何とか体制を立て直し、スケルトンから距離を取って状況を観察してみる。ピンチになったらまず冷静になることが大事だ。
頭蓋骨は少し欠けているもののまだ中は見えない。ひびも入っているから、恐らく割れ目を狙ってもういっちょ叩けば割れるだろう。
まぁ現実はそんなに甘くないのだが。
あらかじめデモンナイトからスケルトンとの戦い方をレクチャーされている。腕をぶんまわす範囲攻撃は動作が大きいから良く見て距離を取る。ただのパンチの場合、当たれば即死、動作も早く避けにくい。タイマンではこれが最も危険らしい。
空気を切り裂く音と共に放たれるパンチを、後ろに下がることで回避する。
横に避けると直後に腕をぶんまわしてくるらしいから、どこの高難易度MMORPGのボスだよって感じだ。当たれば即死だし。
しかし、魔法どころか飛び道具の一つも使えないスケルトン君。
時間稼ぎだけなら、後ろに避け続けていればいいのだ。
デモンナイトからのアドバイスで言われたが、チャンスがあっても決して攻撃をしてはいけないらしい。「攻撃は隙を生む。お前ごときでは傷一つ付けられないからやめておけ。」らしいです。一言多いぞク○ったれ!
しかし事実である。木刀や炎球では傷一つ、焦げ目一つ付けられないのだ!
逃げるのではなくスケルトンの周りを一定の距離を保ちながらぐるぐる回る。こうすることでペン太やグッさんの奇襲が成功しやすくなるらしい。
スケルトンが再び単純なパンチを繰り出す。
しかしもうその攻撃は見飽きたぜ、スケルトンさんよぉ。
スケルトンの攻撃は単調だった。
いくら破壊力が高くても当たらなければ意味はない。しかも攻撃はしっかり溜めてから放ってくるため避けやすいし。
続けざまに攻撃を仕掛けてくる。拳一つ一つが人体をへし折る重みを持っているが、スケルトンの動きは遅い。
対策法が分かれば大した事ない。ヘイヘイ、それでもSランクですかぁって感じだぜ。
スケルトンはさらに攻撃をしてくる。
単調な攻撃は無意味。しかし今度の攻撃は一味違った。
溜めを無くして連撃を行ってきたのだ。風を切る音が続けて聞こえた。
え、ちょ、ヤバくね。
スケルトンの動きが変わった事に戸惑い、ヒラタの動きが鈍った。そこにスケルトンは更なる追撃を加える。
当たるとこだったぞ! どこに目つけてんだ! あ、スケルトンだから目がないのか~!
ふざけるヒラタに容赦のないパンチの雨を降らせる。流石に度重なる攻撃で体勢も崩されかけてきた所にこの攻撃だ。
「ぎゃあああああああ! 一旦退避!」
ヒラタは後ろに大きく飛んでスケルトンから距離を取った。
デモンナイトから聞いてた話と全く違う! ガッツリ学習してんじゃん! なんで脳ミソ無いのに学習してんだよ! と恨みをぶつける。
そもそも、グッさんももぐゾンさんもペン太もデモンナイトもどこ行ったんだよ!
Sランクとタイマンとか無理があるぞ!
ヒラタが泣き言を言いたくなるのも無理はない。なぜならスケルトンの攻撃は絶対に受けてはいけないと言われているからだ。当たれば即死なんだから下手に防御を試みるな、という意味だ。具体的な作戦は先ほどの攻撃まででここからはノープラン。
ヒラタは既に詰んでいた。無策、無力、ゆえに無謀。
しかしここで諦めては主人公の名が廃る。
向かってくるスケルトンに木刀を持って一歩踏み出した。
しかし、スケルトンは今にも折れそうなか弱い足を地面に叩きつけ、地を揺らしながらその勢いのまま飛んできた。
⌈いや飛ぶのは反則だろ!」
一気に距離が縮まり、スケルトンと肉薄してしまう。無念の死亡か!?
否。
主人公の心が折れた時に現れる!
それこそ我らの............。
⌈草!」
グッさんである!
草魔法の草がスケルトンの足に絡まる。
普通なら、簡単に引きちぎれるだろう。
しかし、スケルトンはただいま絶賛ヒラタに向かって跳躍中である。
よって、派手な音と共に勢い良く地面に叩きつけられた。
⌈グッざぁん!」
ピンチの時に駆けつけるなんて、なんてイケメンなんだ!
⌈行け! もぐらゾンビ!」
グッさんの声と共にスケルトンが倒れている地面の少し離れたところから、ボコッっという音と共にもぐゾンさんが現れる。
⌈腐突き!」
そのまま飛び上がって紫色のオーラを纏った爪で倒れているスケルトンを思いっきり殴る。
しかしまだ頭蓋骨は割れないようだ。今度は音もしなかった。やはりSランクは伊達じゃない。
もぐゾンさんがスケルトンから距離を取った瞬間、スケルトンは足に絡まった草を引きちぎり、起き上がった。
周りにはもぐゾンさんとグッさんと俺。ペン太とデモンナイトはどっか行ったからいないが、一人よりはよっっっぽど楽だ。
スケルトンが周りを見回す。俺の動向を探っているようだ。
しかし、先手を取られることはまずい。まずは先手をとらなくては。
⌈フリーズン! ペン。」
ペン太特製の吹雪を再び真上から喰らい体が凍てつくスケルトン。
そして......。
⌈ふん!」
デモンナイトの奇襲!
後ろからその剣で一閃!
しかし、スケルトンはいとも簡単にペン太の吹雪による氷を破り、デモンナイトの奇襲を回避する。ドスッという音と共にデモンナイトの剣が地面に突き刺さる。
⌈くっ。」
デモンナイトの剣が地面に深く刺さり過ぎて、抜けないようだ。そのせいでデモンナイトに隙ができている。
⌈一旦退けデモンナイト!」
スケルトンは学習する。
今のデモンナイトを見逃さないはずがない。ヒラタは確信していた。
ヒラタの予想通り、スケルトンは動いた。
しかしデモンナイトに向かってでは無い。
俺に向かってきたのだ。
⌈しまっ............!」
スケルトンが俺の目の前で腕を大きく振りかぶる。既に俺に向かってパンチを繰り出し始めている。
世界がスローに見える。
アドレナリンがたくさん分泌されているからだろうか?
しかし、その中で俺だけが普通に動けるわけではない。俺の動きもまたスローである。別に俺は防御力が高いわけではない。それはスカルラビットとの戦闘で実感済みである。
あぁ、俺ってもう死ぬのかな?
異世界に来て、ゲームでいう第一ステージもクリア出来ないのかよ......って第一ステージってレベルじゃねぇだろ! 俺はスケルトンなんて嫌だって言ったんだぁ!
それに学習機能付きなんて聞いてねぇ!
冷静になって周りを見渡してみるも、ペン太は真上、デモンナイトは剣を抜こうとしている。グッさんは草魔法を使おうとしているがもう間に合わないだろう。皆俺の方を見て目を見開いている。実に滑稽だなぁなんていう暇は無さそうだ。
......そういえばもぐゾンさんはどこに行ったんだろう?
姿が見えないよう―――
俺は目を見開いた。
激しい音が鳴り、俺の体を押したもぐゾンさんがスケルトンに砕かれた。




