デモンナイト
黒い鎧を纏った......いや、黒い鎧そのものがモンスターになったような外見をしているAランクモンスター、デモンナイト。
スケルトンほどではないとはいえ、俺達に勝ち目はほとんど無い。
「......。」
今すぐにでも草魔法を繰り出しそうなグッさん。
今すぐにでも飛びかかりそうなもぐゾンさん。
今すぐにでも逃げ出しそうなペン太。
そして、俺は奴の一挙一動に全神経を集中させて木刀を構える。
お互いに相手が動くのを待っているのだ。
スケルトンとの戦いで、こいつにある程度の知能があることは把握している。
モンスターには魔石が必ずあり、それを破壊してしまえばどんなモンスターでも倒せる。しかし、ランクの高いモンスターは能力も高い。魔石の強度はそのモンスターの防御力に比例するという。つまり、こいつの魔石は恐らく硬い。
またスカルラビットのように魔石が丸出しではないため、魔石を壊すことは難しい。だったら普通に倒すしかないという事になるのだが......。
出来るのか? 俺達に?
しばしの沈黙、そして―――
デモンナイトは俺達の目の前で倒れたのだった。
■□■□
「で、どうするよこいつ。」
こいつとは、倒れているデモンナイトの事である。
「デモンナイトは一応、理性を持つモンスターだ。介抱してテイムするのも手だが、回復したら急に襲いかかって来ないとも限らないぞ?」
「いや怖い事言うなよ。」
それにしてもなぁ。
倒れたのが美少女モンスターだったら絶対テイムするのに、デモンナイトかぁ。
しかしAランクモンスターは非常に魅力的だ。
街一つ潰せるくらいの強さらしいし、仲間に出来ればかなり、かなーーり戦力upが図れるんだが......。
「助けてやっても良いけど襲いかかって来たら怖いポサ。こいつってどういう性格のやつポサ?」
ペン太が聞くと、グッさんがもぐゾンさんを見る。
「......個体によってさまざまだが基本、必要な時以外は戦闘を避けると言われていル。必要な時ってのは例えば縄張りを守ったり、食料を確保したりだナ。」
う~む、つまりはバトルジャンキーでは無いわけだな。
あれ?
「スケルトンの時はガッツリ戦ってたよな? 集団で。」
「そうカ。それは謎だナ。」
いや謎なんかい。
本当にこいつどうしよう。
「今までこういう時はどうしてたポサか?」
今までってそりゃ困った時は“この作戦”で切り抜けて来たけどさ。
「何でもいい。いざとなったら逃げることもできるしな。」
おっと逃げ切れるとは言ってないぜ。と付け加えるグッさん。
責任逃れかひきょーもの。
「よし決めた!」
俺はこういう時の最善の策をみんなに伝える。
「男なら、イバラの道を行こうぜ!」
「つまり介抱してテイムを狙うわけポサ?」
そうだ! こいつはAランクモンスター。スケルトンには劣るものの、必ず後々役にたってくれるだろう! リスクを恐れていては何も出来ないのだ~!
「それなラ、闇の魔石を食わせテ、怪我をしているところニ、薬草を塗ってやレ。」
おうよ!
そこら辺に生えている薬草はすりつぶして傷口に塗るとなかなか効果がある。アンデット領の中にこの薬草はたんまり生えている。
それをむんずと掴んで木刀で擦り潰し、デモンナイトに塗る。
ハラハラと心配するペン太をよそにテキパキと作業を進める平田。
しかし、平田は一度デモンナイトVSスケルトンの戦いを見ていて、デモンナイトを完全に”弱いモンスター“として見ていた。実際はそんなことはなく、回復すれば平田の首を二分の一秒とかからず切ることの出来る立派なAランクモンスターなのである。読者の皆さんにはAランクモンスターがどんな強さかわからないことだろう。ゴブリンと同じくらいの強さ! では通じないだろうから別のモンスターを上げて説明すると、ドラゴンと同じ強さである! つまり、デモンナイト=ゴブリン=ドラゴンである! 君たちは通勤・通学中に怪我をしたドラゴンが現れて、なぜか手には医療セットが握られていて、それでドラゴンを介抱しようと思うだろうか。
つまり今、平田が陥っている状況はそういう事である。
もちろんチートなんて持っていないのだからハイリスクにも程があるのだ!
以上、謎の語り部Xでした!
「よし! 終わったぞ!」
ふふん! 俺って介護の才能があるのかもな!
「ならじきに目を覚ますだろう。下がっていた方がいいぞ。」
おうよ!
「でもいつになったら起きるんだろ? スケルトンとか来たら危険だし、早く起きて欲しいんだけどな?」
「さぁナ。すぐ飛び起きると思うゾ」
いや怖いな。
襲われるのが確定してるような物言いがさらに恐怖を煽ってるんだが。
「そうだ! ペン太、敵が来ないように空から見張っていてくれ。敵が来たらグッさんに頼んで倒して貰ってくれ。もし、群れが来たらヤバいからそういう時はこいつを置いて逃げようと思ってるから、よろしく!」
「なんか急に......。」
「テイマーっぽくなってきポサ......。」
うるせぇ。俺だってテイマーの入門書を読んでるから立派なテイマーだよバーカバーカ。
心の中で悪態をついているとペン太が空へ飛び立って行った。
しかしすぐに戻ってきた。
「スカルラビットが一匹いたポサ。」
「よし、グッさんに倒して貰ってくれ。」
「もう自分で倒したポサ。」
なにぃ!?
ペン太って戦えたのか? 嘘だろおい!? あの臆病で最初の方はほとんど俺の後ろについていたあのペン太がぁ!? Bランクのぉ!? スカルラビットを!?
「ペ、ペン太って戦えたのか......?」
するとムッとしたような顔でペン太が返す。
「ペンだってモンスターだペン! 普通に戦えるペンよバーカバーカ!」
こいつ口悪! バーカって、バーカって言ったぞ!
俺なんて、口に出したことはもちろん、バーカなんて心の中ですら思ったことないぞ? それを! こいつは! いとも簡単に口から出したではないか!
あぁ、いつからこの子はグレたのかしら? やっぱり教育はタマゴの時からしっかりするべきね!
俺が明らかに呆れた仕草をするとさらにペン太が口を(正しくは嘴を)開こうとする。しかし―――
「おイ!」
もぐゾンさんの言葉に遮られた。
「起きるゾ。」
よく見るとデモンナイトが少し呻き、体が揺れている。
一気に緊張した空気が広がる。
その間にもガチャガチャと鎧を鳴らして起きようとするデモンナイト。
もしも起きてきて、襲いかかって来るようならばすぐに逃げねばならない。
しかし、ヒラタとて立派なテイマーなのだ!
デモンナイトから少し距離をとり、すぐに指示が出せるように全体の位置を把握しておく。デモンナイトに最も近いのはもぐゾンさんなのだ。
やつの挙動を観察し、もぐゾンさんの危険をいち早く察知しなければならない。
―――!
デモンナイトが意識を取り戻し立ち上がった。
テイムの時間だ。




