Ep.6 ロイヤル・ローズ
——東エヴァンス西端に位置する辺境領。
ここはエルフ国から最も近い場所に位置し、臨戦態勢を余儀なくされていた。
「領主様、ご報告に上がりました」
「なにを堅苦しい、父でよい」
「いえ、公務ですので。それでご報告ですが、西海岸での攻防の際に現れた魔道士の件になります」
この男は西端の辺境領を治める辺境伯の実子であり、軍を率いる師団長であった。
「どこからともなく紅い機械の馬に乗って現れ、見た目はまだ年端もいかない娘でございました。それで、その……魔法……でしょうか。エルフ軍に向かって炎の塊を放ち、辺りを焼き尽くしました。そして、たった一人でエルフ軍を撤退させたのです」
「なんと……魔法とな。この人国にそれほどの魔道士が居ようとは……して、その者は何処へ?」
「それが……申し訳ございません。“忙しい”と言い残し……走り去ってしまわれました」
「……そうか、ぜひお力を貸していただきたい所だったが」
「はい。あの姿は……まさに姫巫女様の再来……と申したらバチが当たりますでしょうか」
「うむ、そうだな。炎を操る魔道士……まさに姫巫女様の再来かもしれんな……」
「はい、薔薇のように気品のある乙女。相応の家柄の者であることは明白でございました」
「薔薇の乙女……か」
*****
——ブロォォォォォ……
東エヴァンスの街道をひた走るマリルとカルラ。
「……それでエルフたちは200年間、ずーっと戦争を仕掛けてきてるって訳なのね」
「えぇ、でもそれは表向きの理由。本当の目的は、辺境に戦力を裂かせて、本土の防衛力を削ぐため。そして……手薄になった本土で盗賊まがいの事をしているのよ」
「ムギィィィィィ、わたくしの国で好き勝手しやがって~」
ブァァァァァァーーー!
駆動踏板を目いっぱい吹かし、猛スピードを出す白銀操駆。
「ちょと、落ち着きなさいよ。頭に血が上りすぎよマリル。それに今に始まったことじゃないんだし、アナタが気にしてもしょうがないでしょ」
——しばらく走ると大きな町が見えてくる。
そこは東エヴァンス西方に位置する商業都市"ランスロット"。
「ちょうどよかった、あの町で休んで行きましょうよ」
「そう言えばマリル。この先の旅の資金とかどうするの?前に人さらいから頂戴した宝が~とか言ってたけど……」
「う~ん、確かに。ありったけ売っぱらったけど、いつか尽きるわよね~。まぁ、そん時はまた人さらいか盗賊でも……」
「ちょっと、なに悪い顔してんのよ!まっとうに稼ぎましょ、まっとうにね」
街へ着くとカルラは一直線に、とある施設へと向かう。
——ここは冒険者ギルド。
依頼をこなして金銭を得ることの出来る、いわゆる仕事の斡旋所である。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが、よろしいですか」
「は~い、ではお二人とも身分証を見せて頂けますか~」
受付を担当するのは獣人の娘であった。
「へぇ、人国にも他種族の人が働いてるのね」
「そうね、人国は資源も豊富で豊かな国だから、ドワーフ族も獣人族も多く暮らしてるわね」
しばらくすると受付の娘が戻って来て、マリルをジロジロと見る。
「えーっと、失礼ですが"マリル・マルリル"さんでお間違いないですよね?」
「えっ、えぇそうですわよ。何か問題でもございましたでしょうか」
「えーっとですね、いまお調べさせていただいたところ……戦闘記録が残っておりまして」
「はぁ!?……ごほん、それはどのような記録でございまして?」
「はい……その、エルフ族の一個師団……およそ5000との戦闘記録となっておりまして……これって」
「え、あ、それは、その……それって何かマズい……?」
「いえ、とんでもございません!もし戦闘に参加されたのであって、しかも軍功でも挙げられているようでしたら……領主様にご報告を……」
受付の娘が言い終わるより早く、マリルが言葉を遮る。
「これは、その……そう、たまたま戦闘してたところに出くわしちゃって……間違って記録されたんでしょうね~。うん、そうに違いませんわ」
マリルの方を一目ジロリと見て、受付の娘が口を開く。
「そうですよね~、こんな小さな子がエルフ族と戦闘なんて。すみませんでした、記録は紛らわしいんで消しておきますね♪」
「ふぅ~、あぶね~、あぶね~。おっと、わたくしったらはしたない。オホホホ」
——to be Next Story——




