Ep.3 セカンド・パーソン
近衛兵に国を追い出されてしまったマリル。
だが冷静に置かれた状況を理解し、次に何をすべきかを模索していると……。
「はぁ~、もう。何ですの、あのヒゲじじい……いえ、近衛のおじさまったら、オホホホ。って言ってる場合じゃございませんわね……とりあえず、如何いたしましょうか……って、ん?」
森の木が揺れ、魔法の光が一瞬だけ見えた。
「あれは攻撃魔法?なんで森の中から……もしや誰かが……聞き耳のイヤリング」
《聞き耳のイヤリング》——任意の遠くの音や声が聞こえるようになる。
マリルが耳に手を当て、森の中の声に集中すると……。
「……キャー……だれ、か……」
「やっぱり!誰か襲われてる、俊敏のアンクレット!」
《俊敏のアンクレット》——装着者の運動能力を著しく上げる事ができ、足元に設置された罠も自動で回避する。
——ダンッ!
マリルの身体が弾丸のように飛び出す。森の木々を自動で避けながら突き進む。
するとマリルの眼に飛び込んできたのは、襲われた馬車とそこに横たわるいくつかの亡骸だった。
「やはり……でも、遅かった」
その中に、マリルと同じ年ほどのドレスを纏った少女の亡骸を見つける。
「ごめんなさい、間に合わなくて。このドレス……恐らく名のある貴族の令嬢だったでしょうに。せめて丁重に弔って差し上げますわね……」
マリルは開けた場所に亡骸を移し、魔法で穴を掘り、そこに埋葬していく。
「せめてアナタのご両親に何か形見を……ってコレは!?」
マリルが見つけたのは、その貴族の令嬢のものと思われる身分証であった。
「ん、ん、ん~。死者のものを取るのは気が引けますが……背に腹は代えられませんわね。アナタの身分証、お借りいたしますわね」
それは、この国に生きるものであれば所持が義務付けられている身分証。
魔法の効果がかかっており、素性や犯罪歴までも記録される。
「この方の名は……カルラ……スタンピード。あまり聞きなれない家名ですが、まぁあれから200年も経ってるんですものね」
マリルはアイテムボックスから羽の付いたペンを取り出す。
《偽装の羽ペン》——様々な文字を書き換える事が出来る魔法の羽ペン。対象に魔法がかけられていても上書きしてしまう。
「えーっと、マリル……マ・ル・リ・ル、っと。よし書けた、これでバッチリね。あんの道具屋のオヤジ……店主様、お待ちになってて下さいまし」
*****
——ここはエヴァンスとは別の場所にある、とある次元。
「あ~ん、もう!また盗賊エルフに襲われて全滅しちゃったじゃないですか。これじゃ役目を果たせませんわね」
「——ここにいらっしゃいましたか、カルラ姫様」
「あらジイ。どうしたのです、そんな慌てて?」
「いえ、カルラ姫様の疑似体の事ですじゃ。なにやら人の手で埋葬されていたようでございまして」
「まぁ、またいつもの死者漁りの盗人の仕業でしょ?わざわざ報告しなくても……」
「いえ、それが……物見蝙蝠の報告によりますと、綺麗なドレスを着た令嬢のようだったと」
「令嬢とな……人族の貴族か何かですの?面白いですね……ちと見てきますね」
「あっ、ちょっと!カルラ姫様どちらへ!ちょっと……おい、お前たち。姫魔女様を見失うな」
*****
「では、この身分証を使って……今度こそ宝石を売っぱらっ……オホホホ、金銭に換金いたすとしましょうか」
意気揚々と森を抜け、こんどは正々堂々と正面から国に入ろうとするマリル。
だが、そのマリルの目の前に、とつぜん時空の渦が現れる。
——ギュゥゥゥゥゥ……
「んしょっと。おぉ、アナタですわよね。私の疑似体を丁重に葬ってくれたのって」
それは先ほどマリルが埋葬した貴族の令嬢に瓜二つの少女であった。
——to be Next Story——




