魔法少女の休日
今回は主人公の出番全く無いです。
新キャラいっぱいでごめんね、頑張って覚えてください。
夢を見ている……
自分の部屋の中で。小さい頃の私が泣きじゃくっているのを、天井の辺りから俯瞰して眺めていた。
『うぅ……ぐすっ……』
ああ、またか。
最近は見ていなかったけど、時折見る夢だ。
どうして今更?
少し懐かしい気持ちになりつつ眺めていると、部屋の扉が開き、小さい私と同じくらいの年頃の少年が入ってくる。
『周?どうしたんだ?』
『お兄ちゃん……』
兄の天道月夜だ。正確には従兄だが、当時の私はよく理解していなくてずっとお兄ちゃんと呼んでいた。
両親を魔物に殺されて。私のお父さんが引き取ったと聞いて、私はやっぱりよく分からなくてお兄ちゃんが出来た!と喜んだ記憶がある。
お兄ちゃんはグスグスと泣いている私に近き、私の正面に膝をついて目線を合わせる。
『どうしたんだよ、そんなに泣いて?』
お兄ちゃんは私の涙を拭いながら泣いている理由を尋ねる。
確かこの時は……学校で嫌なことがあって泣いていたんだったかな。
理由は、そう……
『ひっく……あのね、学校でね……』
『うん、何があったんだ?』
『お友達にね、怒られの……』
『周ちゃんは誰の見方なのって、誰にでもいい顔してムカつくって』
あぁ、そうだった。
この時の私は、兄の真似をして人助けをよくしていたんだ。
それがクラスの子達には八方美人に写って、点数稼ぎをしている様に見えて。
我慢の限界に達したクラスの中心だった女子生徒にきつく詰められたんだ。
夢の中の幼い私は、たどたどしくも泣いていた理由を兄へ話していた。
話しを聞き終わった兄は静かに頷き、口を開いた。
『なるほどな……』
『それで、周はどうしたい?』
『どうしたい、って?』
『人助けはもう辞めるか?』
『それは……』
辛いなら、もう無理に人助けなんてしなくても良いんだぞ。
兄は真剣な眼差しで私を見据え言葉を紡ぐ。
その上で、周はどうしたい?
私は答えられなかった。兄に憧れて始めた人助けだったけれども、お礼を聞き笑顔を見る度に心が満たされた。
だけどそれを疎ましく思う人がいて。どうすればいいのか分からなくなって、どうしようもなくなってまた涙が溢れて言葉が出なくなった。
それを見て兄は少し困った様な顔で笑いつつ私に言った。
『……そっか、難しいよな』
『じゃあこれだけは覚えておいて欲しい』
兄はふっと一息入れ、語る。
『辞めたっていい、辞めなくてもいい。どうするかは周が決めることだ』
『どうしたって文句を言う奴は出てくる、そんな時に言い訳が欲しいなら、とっておきの言葉を教えてやる』
情けは人の為ならず。誰かにした良いことはいずれ自分に返ってくるって意味だ。
『人助けをして文句を言われるなら、自分の為だって、やりたくてやってるんだって開き直っちまえ!』
『誰が何と言っても。悪く言われたって見ていてくれる人はいるもんだ』
『周に助けられた人は、いつか必ず周のことを助けてくれるよ』
だから文句言われたって知ったことか!って堂々としていれば良いんだよ。
そう言って兄は微笑みながら私の頬を引っ張って、無理矢理笑顔を作らせてくれたんだ。
そうして幼い私は、未だに涙の浮ぶ顔で笑い兄の言葉に返事をした。
『……うん!』
懐かしい……私の原点。
…………………………………………………………………………………………………
ピピピッピピピッ……
目を覚ます。
目覚まし時計のアラームがけたたましく鳴り響き、朝が訪れた事を告げる。
「うぅ……んぅ」
のっそりと起き上がり、目覚まし時計を止めて大きく伸びをする。
魔法少女協会が運営する、魔法少女寮の自室をぼんやり眺め、隣のベッドを見る。
「スーちゃん……?」
寝ぼけまなこでルームメイトの所在を確認するが返事が無い、どうやら先に起床して朝の鍛錬に出掛けたらしい。
「おはよう周君、よく眠れたかな?」
すると、やたらとダンディで渋い声の挨拶が聞こえてくる。
声がした方を見ると、そこには猛禽類用の止まり木に掴まった、ぬいぐるみチックな少し大きめのカラスが居た。
私を魔法少女にしてくれた、契約妖精である八咫烏のヤタさんだ。
「んぅ……おはようございます、ヤタさん」
「うむ、おはよう」
「涼音君は少し前にランニングに向かったよ、朝食の時間には戻るだろう」
君は顔を洗って来るといい。
「は~い……」
私は欠伸混じりにベッドから出て、ヤタさんの言葉に従い寮共同の洗面所に向かう。
(何か、懐かしい夢を見ていたような……)
顔を洗い、寝癖を直しながら先ほどまで見ていた夢の内容を整理する。
しかし……
(思い出せない……)
どうにも夢の内容を思い出せない、とても大切な事だった様な気がするのに。
(ま、いいか)
モヤモヤした思考を振り払い食堂に向かうと、そこには既に先客が居たようで、彼女は扉を開いて食堂へと入ってきた私に顔を向け、軽く手を振った。
「おっはよ〜周ちゃ〜ん」
寝癖でボサボサの金髪もそのままに、眠たげなふにゃふにゃ顔で私の名前を呼ぶのは同じ支部に所属する先輩魔法少女の明星光さんだ。
魔法少女協会東京第3支部の広報課に所属する魔法少女である。
その名もズバリ、【明け星の魔法少女スターライズ】として魔物と戦いながらも、全国にファンを持つ国民的アイドルとしても活躍する魔法少女協会の広告塔だ。
朝に弱く、ボサボサな頭にふにゃふにゃな表情を晒している彼女だが、何とこう見えても魔法少女ランクSと言う日本で5人しか居ない最強の魔法少女の1人なのだ。
そんな彼女はヒラヒラと手を振り自分の隣りの席に座るよう私に促した。
「隣り空いてるよ、座りな座りな〜」
「良いんですか?」
「ならお言葉に甘えて、失礼します」
受付で朝食を受け取った後、光先輩の隣りの席に腰掛ける。
「いただきます」
「召し上がれ〜」
手を合わせ、食材と料理を作ってくれた食堂の人に感謝の言葉を口にすると、先輩が召し上がれとニコニコしながら言う。
何故先輩が……?まあいいか。
「先輩、今日は朝早いんですね」
「テレビのお仕事ですか?」
既に食事を終えて暇そうな先輩に話しを振る、実際何時もはもう少し遅く起きてくる筈の先輩が、もう起きて朝食を終えている。
「そうだよ〜地方ロケの仕事があるんだよ、朝早くてやんなっちゃうよね」
眠〜いなんてやれやれと首を振る先輩。
「それならもう少しシャキッとしましょうよ」
「寝癖、そのままですよ?」
「んえ〜めんどくさーい、周ちゃんが髪梳かして〜?」
私の言葉に先輩はぐで〜っと机に突っ伏し、答える。
本当に面倒臭そうだなこの人。
「周ちゃんは今日はオフ?」
「何か予定とかあったり?」
突っ伏したまま、上目遣いで先輩か私の予定を尋ねる。確か今日は、1日魔法少女の仕事は無かった筈だし日曜日なので世間的にもお休みだ。
「私は今日は1日お休みですよ、何かあったんですか?」
「いいや〜?」
「今日のロケは生放送だからさ、折角ならテレビで観てて欲しいなって」
なるほど、そういうことか。
「そういうことなら是非、特に予定も無いので観たいですね」
「何処のテレビ局ですか?」
予定は無かったので、先輩が出演するなら是非とも観たい所だ。
1日テレビに張り付いていたって良い。
「お、やりぃ〜」
「彼処の局で、18時から放送だから絶対観てね」
お姉さん張り切っちゃうよぉ〜
そう言って先輩は立ち上がり、自室へと向かって行った。
さて、午後に予定も出来たしこれから何をしようかな?
「ご馳走様でした」
朝食を食べ終え食器を返した後、自室に戻るとそこには先程はいなかった人物がいた。
「ん。おはよう周、ご飯食べてきたの?」
ルームメイトの魔法少女であるスーちゃんこと、稲葉涼音だった。
どうやら朝のランニングから帰って来ていた様だ。
ジャージ姿で少し汗ばんでおり、手にはタオルを持っている。
「おはようスーちゃん、それとおかえり」
「これからシャワー?」
「うん、ただいま」
「そ、流石に汗かいたからさ」
行ってきますと、スーちゃんは部屋を出てお風呂場へ向かった。
良かった、案外普通そうだ。
昨日の無所属の魔法少女との闘いの後、スーちゃんは本当に悔しそうだったから。
「あんまり引きずって無さそうで良かった……」
思わず口をついて出た言葉に、返事が来る。
「引きずっていない訳ではあるまい、彼女なりに思う所はある筈だろう」
止まり木で寛いでいたヤタさんが、羽根を整えながら言う。
「ああまで見事に負けたのだ、内心怒りと焦りでいっぱいであろうな」
「だが、それを周君には見せたくないのだろう」
「そういうもの?」
「そういうもの、だ」
うむうむと頷くヤタさんの言葉に、首を傾げながら答える。
そういうものなの、かな?
まあ、いいか。
私は昨日会った、謎の魔法少女との顛末を報告書に纏めようと自分の机に向かうと、ヤタさんがふと思い出したように口を開く。
「ああそうだ、そう言えば先程本部から連絡があったぞ」
「連絡?」
「うむ。昼頃に、涼音君と二人で本部に顔を出すように」
「だそうだ」
ほえ?
「本部にって、どうして?」
「さてな、おおかた例の魔法少女についてだろう」
「彼女に直接接触出来たのは君たち二人だけだからね」
なるほど、そういう。
「でも、本部に呼び出される程の事かな?」
正体不明なのはそうだけど、無所属の魔法少女はだいたいそうだし。
「本部にとっては余程大事な事なんだろうさ」
「それに、涼音君の事もある」
「スーちゃんのこと?」
「うむ、涼音君は扱い上は民間人である無所属の魔法少女に攻撃しているだろう?」
「あ……」
「その報告書も、さっそく役に立つかもしれんな」
oh……
先輩の出演する番組が始まるまでに終わるかな……?
……………………………………………………………
東京都内某所、時刻はお昼。
私とヤタさん、そしてスーちゃんは現在魔法少女協会本部の前に立っていた。
「ほえ〜、相変わらず大きい建物!」
「ねぇアマ子、本当に行くの?」
本部の建物を見上げる私の横で、スーちゃんが嫌そうな顔で本部に入るのかを聞いてくる。
やっぱり帰ろ?じゃないんだよ、名指しで呼び出されてるんだから行かなきゃいけないの!
「呼び出し受けてるんだから、行かなきゃいけないの!ほら、行こ」
「う〜お説教はいや〜」
尚もイヤイヤと抵抗するスーちゃんの手を引き、私達は魔法少女協会本部のビルへと入って行った。
エントランスに入ると、お金が掛かっていそうな綺麗な内装が目に入った。
真っ直ぐ受付の方へ向かうと、スタッフの人が出迎えてくれる。
「魔法少女協会へようこそ、ご用件は何でしょうか?」
「こんにちは、えと……呼び出しを受けて来ました、魔法少女のアマテラスとスサノオです」
「畏まりました。それではIDの照合を行いますので、こちらの機器にIDカードを読み込ませてください」
受付の人に用件を伝えると、IDカードの提示を促される。慣れた手付きでカードを読み込ませると、ピッと小気味いい認証音が鳴る。
スーちゃんも同じようにカードを読み込ませ、受付の人がPCを確認する。ちなみにヤタさんは妖精なので顔パスだ、たぶん受付の人も見えてないだろうし。
「はい、お二人ともIDの確認が出来ました。どうぞ上の階へ上がってください、最上階で協会長がお待ちしております。」
え……?
「か、会長が待っているって。この呼び出しって会長から何ですか?」
「はい。こちらの予定表にはそうありますが、聞いておられないので?」
聞いてないよぉ……
「会長直々の呼び出しは緊張しますよね。何というか、頑張ってください」
ガックリと項垂れていると、受付の人が苦笑交じりに声をかけてくれた。
「はい……行ってきます……」
…………………………………………………………………………………………………
エレベーターで最上階まで上がり、現在魔法少女協会会長室の前にいます。
緊張しつつ慎重にドアをノックする。
「どうぞ、入ってくれ」
ドアを開けて中に入ると。そこには落ち着いた、50代位の男性が立っていた。
この人が魔法少女協会の会長、御剣一馬さんだ。
「休みの日だというのに、急に呼びつけてすまないね」
「どうぞ、そこのソファーにかけてくれ」
「失礼します……」
「します」
おずおずと二人ともソファーに座ると、会長はふっと微笑み話を始めた。
「今回呼び出したのは、他でもない君たち二人に意見を貰いたくてね」
「意見ですか、いったい何の?」
スーちゃんが怪訝な顔で会長に質問すると、会長はうむ、と頷き口を開いた。
それは、私たちを驚かせるには十分に過ぎる内容だった。
「人型の魔物が現れた、と言う噂を聞いた事は?」
「いえ、そんな話は今初めて聞きました」
「それがどうかしたんですか?」
私の後に続いて、スーちゃんが会長に質問すると、会長は更に驚くべき事実を口にする。
「アマテラス君、そしてスサノオ君が遭遇したと言う無所属の魔法少女……」
「彼女が、その人型の魔物である可能性が確認された」
……え?
魔法少女紹介
明け星の魔法少女スターライズ
魔法少女ランクS
幼い頃魔物に襲われ覚醒した
専用武器は先端に星の装飾がついたステッキ
かつては8大厄災を討伐した魔法少女。現在はアイドルとして歌って踊って活躍している国民的アイドル
人前ではキラキラしているが、休みの日などはふにゃふにゃしている。
趣味は歌うこと
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