魔法少女と25%
また一月程たってしまった。筆が遅くて本当に申し訳ない。応援してくれている方々にはとっても感謝していますし、励みになっています、ありがとうございます!
魔法少女同士で殺し合うとかは無いです(絶対なる意思)
夕暮れの町中で、2人の魔法少女が向かい合っている。
一人は夜色に三日月柄の着物風衣装に髪と同じく夜空の色の兎の耳を持った魔法少女。
もう一人は海の様に深い青色の着物風衣装に身を包んだ黄金の瞳を持った魔法少女。
それぞれが、互いに武器を手に持ち睨み合っている。
青い少女、スサノオが夜色の少女へと声をかける。
「一応聞いてあげる!素直に支部に出頭するか、あたしにボコボコにされて支部まで引きずられるか」
「どっちがいい?」
スサノオは勝ち気な笑みを浮かべながら、夜色の少女、月夜へ太刀の切っ先を向ける。
それに対し、月夜は面倒くさそうな表情を隠そうとせず、大鎌モードに変形させた槍を構え、答える。
「ついて行って、事情聴取やら書類を書いたりだとか面倒くさい事が多そうだから、さっさと帰る」
「それが答えでどうかしら?」
「残念。それじゃあ叩きのめしてっ、連行してあげる!」
「それは遠慮したいっ、わね!」
スサノオが突撃し太刀を振るう。月夜はそれを軽く弾きスサノオの首目掛けて大鎌を一回転させる。
スサノオは太刀を縦に構え防御し、ギリギリと金属の擦れる音を聞きながら、月夜をキッと睨みつけ口を開く。
「……随分、殺意が高めなのね?」
「一応寸止めするつもりではあったの、本当よ?」
「フンッ、どうだか」
首元の大鎌を振り払い、間合いから大きく距離を取り呼吸を整え、スサノオは月夜の一挙手一投足を見逃すまいと集中力を高める。その頬には一筋の汗が流れていた。
そして月夜は。
(本当に、どうしてこうまで俺に突っかかってくるの、俺何かした?)
(心当たりが全く無い……)
滅茶苦茶に困惑していた。
………………………………………………………………
いい加減帰りたい……!
少し話した感じ、腕に自身があるみたいだから、軽くいなして脅せばすぐに引き下がると思ったのに。
引き下がるどころか余計に戦意が上がっているようだし……
……どうしたものか。
逃走用の魔法はあるにはあるが、それなりの隙がないと使ったところで追い付かれるだろう。
相手の魔法少女も意外と強く、大きな隙を作ろうと思うと手加減などしてはいられない。
そうなると最悪の場合怪我をさせてしまうかもしれない、そんなことになったらもう最悪だ。この場を穏便に終わらせて帰宅するなど確実に出来ないだろう。
そして気になる点がもう一つ。
俺の武器である湖月にセットしたムーンシェル・ウォッチをよく見ると、そこには数字が表示されていた。
何この数字?
前に変身した時は気づかなかったけど、こんなの表示されてたの?
25%、何の数字かは分からないけれど、吸合のリスクを考えると恐らくロクなものじゃないんでしょうね。
まあ、謎の数字に関しては後で考えればいい、今は目の前の魔法少女からどうやって逃げ切るかを考えなければ。
「改めて聞くけど、どうして俺に突っかかってくるのかしら。貴女に危害を加えた覚えはないのだけれど」
「俺の記憶が確かなら。魔法少女に覚醒しても、協会に所属するかどうかは個人の自由だった筈だけど?」
答えてくれるかは分からないが、念の為聞いてみる。
すると意外にもサラッと答えてくれた。
「決まってるでしょ、アンタがあたし達の縄張りで勝手に魔物を狩ってるからよ!」
ふむ……?
「勝手にだなんて、随分な言い方ね」
「守護地域については、あくまでもどの地域に、どれだけ戦力が配置されているかを把握しやすいようにする為なだけで。無所属の俺には関係ない事でしょう?」
「関係あるに決まってるでしょ、アンタが魔物を狩った分だけあたしの討伐ポイントが減ってるんだから!」
ポイント?
「そんな事で?」
「そんな事ってなによ!あたしにとっては大事な事なのよ!」
「ポイントを稼いで、ランクを上げなきゃ行けないの!」
俺の呟きが聞こえたらしく、大きな声を上げ反論してくる青い魔法少女。
しかし……
「知らないわよ。貴女がポイントを稼ぐのに、俺は何も関係ないでしょう?」
「関係あるに決まってるでしょ!アンタがあたしの分まで魔物を狩るから、あたしに入るポイントが減るでしょう……っが!」
そう言いながら、青い少女は俺に向かって突撃して来る。
また真っ直ぐ突撃、ワンパターンね……
いや、目の前に魔物が居て魔法少女が到着するまでに被害が広がりそうだったから俺が戦っただけで、貴女のポイントやランクなんて知った事では無いのだけれども。
太刀を構え真っ直ぐ突撃してくる魔法少女を迎え撃つべく、その足首へ向けて大鎌を振るう。
しかし青い魔法少女は攻撃される場所を読んでいたかの様に素早く跳躍し刃を避け、ニヤリと口角を上げる。
「そんな丸分かりの攻撃が当たるわけ無いでしょ!」
それに対し俺は振り抜いた勢いはそのままに、大鎌を一回転させジャンプした直後で空中にて動けない魔法少女の頭頂部目掛けて刃を振り下ろす。
「なっ!?」
「丸分かりの攻撃は、何だったかしら?」
大鎌の刃が青い少女の頭部に突き刺さる寸前で湖月を停止させる。少女は寸止めされた刃を頭上に感じ冷や汗を流しその場から一歩たりとも動けないでいた。
「随分焦ってるみたいたけど。正直、貴女のランク上げだとかはどうでもいい」
「偶然俺の目の前で魔物が出現して、自分で戦った方が被害が抑えられそうだからそうしただけ、別に貴女達が間に合うなら何もしない」
「何を言って……!」
「嘘じゃ無い、誓ってもいいわよ?」
「信じられるわけないでしょ!」
頑なにこちらの言葉に全く耳を貸そうとしない、めんどくさいなぁ……
「いい加減、諦めて逃がしてくれる気は?」
「あるわけ、無いでしょ!!」
無駄かもしれないと思いつつも、一応尋ねてみるがやはり駄目だった。
すると、驚いた事に青い少女は頭上に刃があるにも拘わらず此方に斬りかかってきた。
「なっ!?」
「セェェアァァ!!!」
咄嗟に横へ回避し。振り向きざまに青い少女の刀に大鎌を引っ掛け、巻き上げて放り投げ。
「ふぅっ!」
「んな!?」
少女の喉元に刃を突き立てる。
「今度は無理に動かない方が良いわよ」
危なかった……まさか特攻してくるなんて。
「っ……!どうせ寸止めするでしょ、今みたいに?」
暫く続いた膠着状態に、さてどうしたものかと武器を握り直そうと手に力を込めた時、俺とも青い少女とも違う声が響いた。
「まってください!!!」
…………………………………………………………
大きく響いた第三者の声に驚きながら振り向くと、そこには髪も服装も紅白な魔法少女が居た。
白い髪に赤いメッシュ、紅白の巫女風衣装に身を包み。虹色に輝く瞳をキッと吊り上げ、青銅の鏡をこちらに向けて掲げている。
「ゆ、ゆっくり武器を降ろして。その子を、スーちゃんを解放してください……!」
震えながらも力強く俺を見据え、油断無く武器を構え仲間を解放するように勧告する紅白の少女。
その姿をこの目に移した瞬間、俺の本能の様なものがビリリと電流みたいにとある予感を脳裏に齎す。
……周?
まさか、義理の妹の周なのか?
魔法少女は変身している間は正体が分からないように認識阻害がデフォルトで働いているから、断言は出来ない。
けれども俺の直感が告げている、目の前の紅白の魔法少女は俺が現在世話になっている叔父夫婦の娘で俺の義理の妹になる天道周であると。
確かに、魔法少女に覚醒した事で家をでて協会の寮で暮らしていた筈だが……
まさか守護地域が被るとは。いや、実家のあるこのエリアに配属されるのは当然か。
いや、今はそんな事はどうでもいいか。
そんな事よりも。
……もしかして、俺が襲っていると勘違いしてる?
俺は動揺を悟られない様に、努めて冷静に言葉を紡ぐ。
「一応、先に攻撃して来たのは彼女の方よ、って言ったら信じてもらえるかな?」
「それは、何となくそんな気がします、スーちゃんは結構思い込みが激しくて喧嘩っ早いですから」
「それでも、大切なバディなんです。どうか解放してください」
でないとこちらも攻撃せざるを得ないです……
俺の言葉に、紅白の魔法少女はそう答える。
「……追跡も何もせず逃がしてくれるなら」
人質を取るみたいで少し罪悪感が湧いてくるが、ここから離脱するには背に腹は代えられない。
それに待ったをかけるように青い少女が声を上げる。
「そんなの、許すワケ無いでしょ!」
「スーちゃん!」
逃走を見逃す要求を、そんなわけにはいかないと喉元の刃を気にせず声を荒らげる青い少女。
紅白の魔法少女はそれを窘めるように叫ぶ、おそらく声を上げた事で喉元の刃を動かされるかもしれないと警戒しているのだろう。
別に騒いだからって攻撃なんてしないのに。
やっぱり絵面が悪いのかな?
明らかに人質を取って脅してるもんなぁ。などと考えていると紅白の魔法少女が口を開く。
「今回は貴女を追わないと約束します、なのでどうかスーちゃん、スサノオを離しては頂けませんか?」
「アマ子……」
頭を下げ、仲間の解放を嘆願する紅白の魔法少女、それを見てスサノオと呼ばれた青い魔法少女は悔しそうに顔を歪める。
頭を下げて目を離した隙に仲間を傷つけられるかもしれないのに、それでも頭を下げるとは。
「ふぅ……これじゃ俺が悪者みたいじゃない、元々協会の魔法少女と敵対するつもりは一切無いし、放っておいてくれるなら何もしないわ」
「あ、ありがとうございます!」
「っ……!ありがと……」
俺は溜息をつきながら武器を降ろし、スサノオから離れる。
紅白の魔法少女は嬉しそうに顔を上げ、スサノオは悔しさに眉を顰めながら仲間の方へと歩いて行く。
俺もこの場を離脱する為に、ついさっき使い方を把握した魔法を行使しようと魔力を練り上げる。
するとスサノオと紅白の魔法少女が話しかけてきた。
「あの、今回は私のバディのスサノオが迷惑をお掛けしてごめんなさい!」
「ただ、この事を上に報告するためにも貴女のお名前を教えて貰えませんか?」
「この1回で勝ったと思わないでよね!次は絶対、あたしが圧勝するから!!」
何とも威勢の良い事だ、次なんて無いに越したことはないのだけれども。
そして名前か…そう言えば俺の魔法少女としての名前って何だろう?
考えた事も無かった。どうしよう、皆自分で名付けるモノなんだろうか?
うーむ……ヨシ!
「悪いけど名乗りたく無いかな。突然攻撃された仕返しって事で」
「そっちで好きに呼んで貰えるかしら?」
「散々ボコボコにしてきたでしょうがぁ!」
「スーちゃん、先に攻撃したのはこっちだし、正当防衛の範囲だと思うよぉ……」
名前を考えるのが面倒だし、襲撃された意趣返しに軽く揶揄ってみると見事にノッて来た。
以外と面白いなこの子。
仲間の方も一応正当防衛だと思ってくれた様だ。
さて、魔法もそろそろ発動出来そうだ。
「それじゃ、これで失礼するわ」
「じゃあね」
「は、はい!あっ、そうだ!」
「私はアマテラスって言います!」
日輪の魔法少女アマテラスです!
名乗るのを忘れていました!
そう言って俺が帰るのを手を振って見守る紅白の魔法少女。
そう、アマテラスね……
「良い名前ね。もしもまた出会ったら今度はこんな風に敵対せずに済む事を願うわ」
紅白の魔法少女アマテラスの自己紹介を聞きつつ、魔法を発動する。
《潜影!!》
湖月にセットしたままのムーンシェル・ウォッチから電子音声が鳴り響く。
俺の足元から広がった影を、つま先でトンっと軽く叩くと、俺の足が少しずつ影へと沈んで行く。
やっと家に帰れる、なんだか随分長く戦った気分だ。
しかしまさか、断定は出来ないけれども義妹に出会すとは思わなかったな、これからどうしようか。
……………………………………………………………
夜色の魔法少女を見送った後、私はほぅっと一息つく。
「……行っちゃった」
いったい、何処の誰何だろう?
まさかスーちゃんを圧倒するなんて、あれ程の強さがあるのに、何で協会に所属しないのかな?
「くぅ……っ!あたしが、手も足も出ないなんて!」
私の隣で、スーちゃんが悔しそうに声を漏らす。
どうやら相当悔しかったみたい、そんな事より。
「ねえスーちゃん、どうしてあの人を攻撃しようとしたの?」
「無所属の魔法少女には、勧誘こそすれ、敵対行動は規則違反だって知ってるでしょ?」
私の疑問に、スーちゃんは悔しさと焦りが混じった顔で答えてくれる。
「アイツが、あたしの分まで魔物を狩ってポイントを横取りするからよ!」
「あたしは早くポイントを稼いで、ランクを上げなきゃいけないの!」
声を荒らげ答えるスーちゃんの顔は、焦りと、そして憎しみに震えていた。
私はその理由を知っている。
「だからって……」
「何も関係ない人に攻撃するのは良くないよ、ポイントは2人で頑張ればきっと稼げるんだから」
「分かってる、それでも……!」
スーちゃんは理性と焦りに、葛藤するように声を絞り出し呟いた。
「それでもあたしは、早くSランクにならないといけないのよ!」
「でないとアイツに!洪水の大蛇に、挑む事さえ出来ない……!」
あたしの家族と故郷を奪った、忌々しいあの大蛇に!
そう言って俯くスーちゃんの顔には、自分の無力への悔しさと、焦りと憎しみに涙が浮かんでいた。
「スーちゃん……」
私は、それを見ている事しか出来ない。
私は魔物による被害は受けた事が無いから、何も失った事の無い私では、彼女を慰めることすら出来なかった。
魔法少女紹介
天道月夜(変身体)
ランク推定B++
ルナとの吸合体
天道月夜とルナ・ムーンクレストが吸合した姿
兎の耳と月色の髪、魔法の知識等はルナの影響。夜色の髪、武器や必殺技、戦闘技能等は月夜の影響。
口調に関しては元から女性であるルナと月夜が漫画等で読んだ女性キャラの口調等が反映されている。
実は吸合はプリキュア的変身ではなくジョグレス進化なので、厳密に言うと変身後は魔法少女でなく半分妖精で半分人間の新たな個人。
なので名前は無く、魔力波形等も2人とは全くの別物だったりする
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