異色の共同戦線
なんとか謎のモンスターを撃退したが、都市の中に同型があとどれだけいるのか……。
『五本目の腕』という弱点は見つけたものの、あれをツバキ以外で対処するには、統率の取れた集団戦術でないと厳しい。シンプルに、このモンスターは単体としての戦闘力が高い。
負傷に一切怯むことなく襲い来る四本の腕の連撃を捌きながら、ピンポイントで背中の腕を攻撃する。そんな常人離れした芸当を平然とこなせるのは、ツバキぐらいだ。
「ツバキ、どこか負傷はしてないか?」
「少し面食らったけど、怪我はしてないぞ!」
ツバキの具合を確認すると、彼女は心配ないと言わんばかりに腕をグルンと回して答えてくれた。あれだけの連撃を前にして、頼もしいことだ。
「敵の情報も得られたし、ここで南都市の援軍と合流しておこう」
「そうだな。……南都市の冒険者って、どんな奴がくるんだろうな」
俺が聞いているのは、通信整備のプロである『エアリル』という少女と、その護衛役である『マスク・ド・チキン』という面識のない二人だ。
「……あの変態も来るのか」
チキンの名前を聞いたツバキが、あからさまに苦い顔をしている。どうやら苦手な相手らしい。
しかし、あのルミオンさんがわざわざ指名で寄越す冒険者だ。実力は確かなはずだ。
そう期待して待っていると――現れたのは、ひたすら騒がしい少女と、ニワトリのマスクを被った半裸の大男であった。
「ツバキさんっ!! ツバキさんのご活躍は、ルミオン姐さんからよく聞いておりますっ!! 同世代でぶっちぎりの武勲っ!! 私も負けてられませんっ!!」
「お、おお……」
ツナギ姿のエアリルが、初対面にも関わらずツバキの手をガシッと掴み、ブンブンと振り回すように力強く握手をする。
ツバキはタジタジだ。どうやらこいつ、敵意には敏感だが、好意が全開なタイプにはめっぽう弱いらしい。
そして、ニワトリマスクの護衛、マスク・ド・チキンだが……。
「えっと……マスク・ド・チキンさん? どうぞよろしく」
「ああ! よろしく頼むよ」
チキンは、マスクの下からでもニカッと効果音が出そうな朗らかな微笑みと共に、気さくに握手をしてくれた。
(どう見ても、ゾランさんだよな……)
ニワトリのマスクで顔こそ隠しているが、よく通る美声にその立派な巨躯。正体が南のAランク冒険者であるゾランさんだということを、全然隠しきれていない。
まだ完全復帰というわけではないのだろうか?
……まぁ、深くは突っ込まないでおこう。とにもかくにも、Aランク冒険者がもう一人駆けつけてくれたのは最高に頼もしい。
「さて! トビーさんっ!! 今回のルミオン姐さんの指名クエスト、張り切って挑みましょうっ!!」
「あぁ。俺は魔道具の専門的な知識はあまりないんだが、いろいろな雑務には慣れている。遠慮なくこき使ってくれて構わない」
俺も負けじと、胸を張ってガッツポーズで応えた。
「おおっ!! 頼もしいお言葉っ!! では、指示は私に任せてくださいっ!! 最高速度で通信を復旧しましょうっ!!」
逞しい少女だな……!
「それで、まずはどこに向かえばいいんだい?」
チキンさんが、エアリルに目的地を問いかける。
「都市における通信設備の要は、当然ギルドですっ!! これは全都市共通っ!! まずは、北都市のギルドへと向かいましょうっ!!」
超規格外のAランク冒険者二人に、熱血通信技師、そして盾職兼雑用。
かくして結成された異色パーティは、通信網を復旧させるべく、静まり返る北都市のギルドへと足を踏み入れるのであった。




