2人の最高戦力
北都市のギルドへと向かう道中、俺たちは先程の異形モンスターの群れと何度か遭遇した。
「こうやって、動いてない腕を斬り落とせば止まるぞ」
ツバキが手本を見せるように、次々とモンスターを無力化していく。
「か、簡単に言ってくれるね……」
チキンさんは苦笑いしながら、なんとかモンスターの連撃を捌いている。そうこうしている内に、ツバキがすべて片付けてしまった。
「ったく、護衛役なのに頼りないな! なんで素手で戦ってるんだ? 効率が悪いぞ!」
戦闘後、ツバキが容赦なくチキンさんに詰め寄る。
「おいおい、落ち着けって」
俺が宥めようとするが、ツバキは構わず続けた。
「……武器は、一度手放してしまったから」
チキンさんがポツリと、自嘲するように答えた。
(チキンさん――いや、ゾランさんは、まだシャドーから受けた心の傷から完全には復活できていないんだな……)
「戦力として期待してたのに、困るぞ!」
「ツバキさんっ!! チキンさんの真価は、まだ見せられてないだけですっ!! 大丈夫です、必ず期待を超えてきますよっ!!」
エアリルがチキンさんを庇うように、勢いよく止めに入る。
「……わかったよ」
ツバキも少し言い過ぎたと思ったのか、バツが悪そうにプイッと顔を背けて歩き出した。
すっかり丸くなったツバキだが、同じ強者としての責任を問う目は、どうやら厳しいらしい。
◆◆◆
ギルドが近づくにつれ、激しい金属音と怒号が聞こえてきた。
「どうやら交戦しているらしい!」
状況を確認しようと足早に広場へ出ると、無数のモンスターに包囲されたギルドの建物と、重々しい甲冑に身を包んだ重戦士を中心に、必死に抵抗している冒険者たちの姿が目に入った。
「このモンスター……本当に何体いるんだ?」
「助太刀に入るぞ! アタシはこのまま敵陣に突っ込む! チキンはフォローしてくれ! おっさんはそのままギルドの防衛線へエアリルを連れていってくれ!」
モンスターの数に圧倒される俺の横で、ツバキが指示を飛ばしてくる。
「わかった! エアリル、俺の背中に隠れて着いてきてくれ! 一気にギルド側まで走るぞ!」
そう言って、俺たちは二手に分かれた。
盾を構えて広場を駆け抜け、俺は防衛の中心で指揮をとっていた重戦士へと駆け寄った。
「東都市のトビーと申します! 南都市の冒険者と共に、救援にきました!」
「救援だと!? ……しかし、たった四人だけか……?」
重甲冑の奥から響く喜びの声も束の間、絶望混じりの落胆を滲ませる。
「正確には、その四人中二人は非戦闘員なんですが……」
俺はチラリと、戦場を掻き回しているツバキたちの方へ視線を向けた。
圧倒的な速度で次々とモンスターの弱点を斬り落としていくツバキと、素手ゆえに決定打には欠けるものの、敵の四連撃を完璧に捌き、剛腕でモンスターを殴り飛ばしているマスク・ド・チキンの姿。
「――連れてきたのは、各都市が誇る『最高戦力』の二人ですよ」
重戦士も、唖然とした様子で二人の暴れっぷりを見つめていた。
「……失礼した。救援に感謝する! 北都市の冒険者たち! ここで一気に押し返すぞ!!」
その力強い咆哮が、北都市ギルド反撃の狼煙となった。




