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東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第8章】北都市奪還戦
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不死の異形

 北都市の入り口である大門。

 かつては荘厳な守り手であったはずのその扉は、無理矢理にこじ開けられたように無残な傷跡を残して破壊されていた。

「……人の気配がしないな」

 警戒しながら辺りを見渡すが、人もモンスターの姿も見当たらない。

 もっと都市の深部で戦闘が起こっているのだろうか? あるいは…

「おっさん!」

 不意にツバキが鋭い声を上げ、視線を飛ばした。

 その先に――異形の者たちがいた。

「も、モンスターなのか……?」

 二足歩行の人型ではあるが、本来の腕に加えて、背中からさらに三本の腕が生えている。計五本の手には、それぞれ武器が握られていた。

 そして何より不気味なのは、頭部にあるはずの『顔を構成するパーツ』が一切ない、のっぺらぼうであることだ。

 その得体の知れないモンスターが三体、こちらに向かってゆっくりと歩いてきていた。

「あれが、群れで攻めてきている変異種か?」

「わからないけど……どのくらいの強さか測ってみるぞ」

 ツバキがスラリと刀を抜き、地を蹴る。

 次の瞬間、瞬きする間もない神速の一閃が走り、先頭のモンスターの頭部が宙を舞った。

「強さはそうでもないな」

 ツバキが残る二体にも斬りかかろうと構え直す。

 (さすがの強さだな……)

 そう感心していたのも束の間、俺は信じられない光景を目の当たりにした。

 首を飛ばされたはずのモンスターが、何事もなかったかのように武器を高々と振り上げたのだ。

「ツバキ!! まだそいつ動くぞ!!」

 俺の叫びを聞くや否や、ツバキはバッと横に飛び退いて凶刃を回避する。

 そしてすれ違いざまに、今度はモンスターの胴を深く薙ぎ払った。

 しかし、モンスターは一切怯むことなく、そのままツバキに背後から襲いかかる。

「くっ! なんだこの不気味なモンスターは……!」

 ツバキも、手応えを無視して動く異形を相手に戦いにくそうだ。

 一体どんな特性なんだ? 普通に斬れてはいるし、傷口が回復している気配はない。

 まさか……不死身なのか?

 斬っても斬っても、三体のモンスターは声一つあげることもなく、まるでゾンビのように無機質な攻撃を繰り返してくる。

 こんな倒しようのないモンスターが、都市の中にどれだけいるんだ?

 想像するだけで、俺の心が絶望に染まりそうになる。

「このっ!!」

 ツバキの鋭い斬撃がモンスターの腕を斬り飛ばそうとすると、他の腕が慌てたように武器で防ぎに入った。

 ……ん?

 攻撃手段を失うのを恐れたのか?

 いや、それにしては妙だ。あれだけ激しく武器を振り回しているのに、背中の一番奥にある『一本の腕』だけは、さっきから一度も攻撃に参加していない。

 試してみる価値はある。

 俺は意を決して盾を構え、モンスターの一体に思い切り突進した。

 ガキンッ!!

 こちらに気がついたモンスターが、一斉に俺へ攻撃を仕掛けてくる。

「ツバキ!! 背中にある、攻撃に参加してない『五本目の腕』を切り飛ばしてくれ!!」

 あれだけ攻撃の機会があって、ずっと庇うように動かさなかった腕。

 あの五本目の腕がただの飾りでないのだとしたら――。

「任せろっ!!」

 ツバキが二体のモンスターを連続した斬撃で後退させ、俺と対峙しているモンスターの背後へ回り込む。

 そして、隠すように生えていたその腕を、綺麗に斬り飛ばした。

 ドサッ……!

 腕を飛ばされたのと同時に、モンスターの巨体が糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。

 間違いない。こいつらは頭でも心臓でもなく、一番攻撃しにくい場所に生えている『五本目の腕』が本体なのだ。

「攻略法は見えたっ!! いくぞツバキ!!」

「わかったぞ!!」

 俺たちは声を掛け合い、息の合った連携で残る二体のモンスター討伐へと挑むのであった。

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