南都市の最高峰
――ルミオン視点――
北都市が陥落寸前という未曾有の事態に、私は速やかに各所への連絡を行っていた。
防衛の要と名高い北都市が、あっさりと劣勢に立たされるとは……。
やはり、噂のルシードは本当に『噂』の冒険者だったみたいだね。
「北都市の状態を速やかに、そして正確に把握したい。危険な任務になるが、くれぐれも頼むよ」
「お任せくださいっ!! 北都市の通信設備を復旧どころか、革命を起こしてあげますよっ!!」
作業着のようなツナギ姿に、大きなゴーグルを首にかけた少女――南都市が誇る最高峰の通信整備士であるエアリルが、元気いっぱいに返事をしてくれる。
「君はこの南都市にとって要となる大切な存在だ。必ず生きて帰ってくるんだよ」
「ルミオン姐さんっ……!!!」
エアリルが、瞳に涙を溜めて感激している。実に素直で可愛い子だ。
「いざとなったら、そこの護衛を盾にするんだよ」
「え!?」
ニワトリマスクを被って半裸で冒険者を名乗るこの変質者……『マスク・ド・チキン』とは大違いだ。
「ギルド長……。その北都市の危機って、変異種が絡んでる案件なのでは?」
「十中八九そうだろうね。それがどうした?」
マスク・ド・チキンは、立派な筋肉を縮こまらせてオドオドと続ける。
「その……変異種と俺は相性がよくないと言うか……行ってもあまり役に立てなさそうというか……」
彼は、いつまで殻に閉じこもっているつもりなんだろうね?
もう少し待ってあげてもよかったのだけれど、生憎こちらにも余裕がない。
「……私の依頼が、受けられないと?」
パチリ、と手元の扇子を響くように畳み、冷ややかに問いかける。
「……」
なにも言えなくなり硬直するチキンに、私は思わず天を仰ぎたくなる。
これが我が南都市の最高戦力か……。
「チキンさんっ!! そんな弱気でどうするんですかっ!? 南都市の代表として、私達で獅子奮迅の活躍をしましょうよっ!!!」
エアリルが小さな拳を力強く握り締め、熱くチキンを鼓舞する。
「お、おお……まぁ、やれるだけはやってみるよ……」
エアリルの純粋な圧力におされて、チキンも渋々といった様子でクエストを受領した。
「それじゃあ頼むよ。現地には、東都市からも頼れる冒険者が向かっているはずだから合流してくれ。君たちが成果を上げることを、心から期待しているよ」
敵も今回は、いつも以上に本気で牙を剥いてきているらしい。
だからこそ、南都市も『最高技師』と『最高戦力』を送り込んで挑むしかない。
私は二人の無事を祈りながら、慌ただしく北へと旅立つ彼らの背中を見送るのだった。




