陥落寸前の急報
エンジュさんの東都市襲来から、数日が経った。
ツバキの話によれば、俺たちはエンジュさんと明確に敵対したことになっているらしいのだが、特段なにか危害を加えられるわけでもなく、エンジュさんはそのまま中央都市へと戻っていった。
一体どんな手で仕掛けてくるのかはわからないが、その時は覚悟を決めて受けて立つしかない。
そんなことを考えていたある日、ギデオンさんから変異種騒動について話があるとのことでギルドへ俺とツバキは呼ばれた。
どうやら、ツバキ不在時のフォローとしてレオンハードさんが駆けつけ、負傷しつつも変異種の討伐を行ってくれたらしい。事後処理などで報告に遅れが生じたようだ。
「あの堅物も律儀だな。レオンハードに借りが一つ出来たぞ」
ツバキが少し嬉しそうに、頼もしい友人の活躍を称える。
そして、レオンハードさんからは変異種の不審な点についても報告が上げられていた。
統一性がないように思えた変異種騒動が作為的なものである可能性があるのか……
一通りの話が終わり、ギルド長室を出る前、ツバキがふと足を止め、ギデオンさんに声をかけた。
「なぁ、ギデオン。……なにか困ってることとかないか?」
ギデオンさんは、何をきかれているか分からないといった風に答えた。
「困っていること? ふむ、腰痛が最近ますます辛くなってはいるが……」
「……そうか。あんまり、一人で無理しないようにな」
ツバキは心配そうな様子でギデオンさんにそう告げた。
ツバキ絡みで、ギデオンさんの心を削るような何かが起きているのだろうか?
「失礼します!! 緊急案件です!!」
その時、バンッ! と扉が勢いよく開き、クロエがノックもそこそこに部屋へ飛び込んできた。
「クロエ!? どうした?」
ギデオンさんも、普段の冷静な彼女なら考えられないような行動に目を見開いている。
クロエは息を切らし、蒼白な顔で叫んだ。
「北都市より、緊急の救援要請が出ております! 多数の変異種モンスターの強襲により――陥落寸前とのことです!!」
今までの変異種騒動とは桁が違う。
都市そのものを飲み込むほどの巨大な脅威が迫ってきていた。




