表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【閑話】戦士は理想を貫く
68/85

現実を穿つ理想

ーーレオンハード視点ーー

 悲鳴を上げるセリアの身体を、蠢く骨たちが容赦なく包み込んでいく。そればかりか、奴は地面に転がっていた大剣を彼女の細い腕で拾い上げさせ――そのまま、こちらへと斬りかかってきた!

 ドンッ! と、凄まじい衝撃と共に地面に叩きつけられる大剣。

「ぐぅ、ぅぅぅぅ……っ!」

 肉が裂け、骨が軋むような音に混じり、セリアの痛みに耐える呻きが聞こえた。

 元より前衛の戦士ではない彼女の肉体が、あの忌々しい大剣の反動に耐えられるはずがない。このまま戦闘を強制されれば、彼女の身体は崩壊してしまう。

 かと言って、身体にへばりついた骨だけを的確に斬り落とすなど、到底出来ない。

「レオン、お願い……私ごと斬って……! もう悩まないって、そう決めたんでしょ!?」

 涙を流しながら、セリアが悲痛な叫びを上げる。

「ナカマゴト キレルカ?」

 スケルトンがこちらを嘲笑うかのように挑発してくる。

「……その通りだ、セリア。私はもう、絶対に迷わない」

 私は静かに、愛用の剣をその手から離した。

 カラン、と無機質な音を立てて地面に転がる鉄塊。

「レオンっ!?」

「オロカナリ」

 武器を捨てた私を好機と見たか、スケルトンはセリアの肉体を操り、大剣を容赦なく振り下ろしてくる。

 迫る死線を前に、私は己の胸の内で、熱く猛るほのおを爆発させた。

 仲間を犠牲にして成し遂げるものなど、私の追う理想ではない。そんな妥協を選ぶくらいなら――世界の理不尽を、私の我が儘でねじ伏せてみせる!

「私はもう、何も諦めない! ――私は、理想を貫く戦士だ!!」

 ありったけの魔力を右手に集中させ、一気に圧縮する。

 迸る光。私の手の中に顕現したのは、実体のない『魔力の剣』だった。

 斬るのは彼女の肉体ではない。セリアに寄生し、彼女を操っているスケルトンの“魔力の繋がり”そのものだ!

 極光の刃が一閃する。

 セリアの肉体を傷つけることなく、骨と魔力の結び目だけを両断されたスケルトンが、彼女の身体から剥がれ落ちた。

「ボウマン! 落ちた骨をすべて砕け!」

「任せてくださいッ!」

 ボウマンの攻撃が、剥がれ落ちた骨を次々と叩き潰していく。

「バ……バカナ……」

 拠り所となる魔力を絶たれ、一定の骨が粉砕されたところで、残りの骨も一気にセリアから剥がれ落ちた。カタカタと虚しく震えた後、今度こそ完全に動きを停止する。

「はぁ……はぁ……っ!」

 それと同時に、私は凄まじい疲労感に襲われ、ガクッと膝をついた。

「レオンのバカっ! そんな無茶なことやって!」

 すぐに駆け寄ってきたセリアが、涙ながらに私を強く抱きしめてくる。

 無理もない。魔力剣は、体内の全魔力を強引に引き絞って刃にする、あまりにも無茶な大技だ。分かってはいたが、反動による魔力切れの苦痛は凄まじいな。

「……すまない。心配をかけた」

 私は苦笑いを浮かべ、謝ることしか出来なかった。


     ◆◆◆

 私もセリアも深く傷を負ってしまったため、私たちは東都市入りを断念し、ひとまず西都市へと引き返すこととした。

 揺れる馬車の中で、私は今回の変異種について、頭の中でじっくりと戦況を整理していた。

 まず第一に、敵には『組織性』が決定的に欠如している。

 作為的な悪意を感じるものの、その作戦はあまりにも局所的すぎるのだ。巨大な組織が動いているなら、情報共有の遅さや、兵力の連動性のなさに説明がつかない。

 そして第二に、変異種は『都市の内部から発生している』可能性が極めて高い。

 私たちが遭遇したのは、大門へと続く、わざわざ大回りをするための迂回路だった。敵が大軍で外から攻めてきたなら、そんな非効率なルートにポツンと兵を割く意味がない。

 まるで――本当は内側で生み出した変異種を、わざわざ迂回路から向かわせて、「外から東都市へ向かって攻めてきた」ように偽装し、発生源を隠蔽しようとしたかのように。

 しかし、これほどのことを行える人間など、この世にどれほどいるというのか。

 ――否、存在する。

 揺れる馬車の闇の中、私の脳裏を最悪の仮説が過る。

 そんな途方もない芸当をやってのける者がいるとすれば、この世界の頂点――『最高ランク』と呼ばれる、あの三人の誰かをおいて他にはいないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ