違和感だらけの変異種
――レオンハード視点――
パーティメンバーのセリア、ボウマンを乗せた馬車が、東都市の大門へと続く道を駆ける。その道中で、私たちは『それ』を発見した。
「どうやら、私の予想は的中していたようだね」
馬車を急停車させ、武器を手に飛び降りる。
前方に佇むのは、一体のスケルトン。通常種であれば、駆け出しの冒険者でも対処できる雑魚モンスターだ。だが、目の前の個体は明らかに異質だった。
身に纏うのは、鈍い光を放つ重厚な防具。その手に握られた大剣からは、どす黒い魔力が立ち上っている。ただそこに立っているだけで、肌がチリチリと痺れるような脅威を感じさせた。
追撃は予想していた。だが……なぜこんな場所に、たった一体でいる?
新たな違和感を感じながらも、私は剣を構えて変異種スケルトンの正面へと立ちはだかった。
「アルジノメイ スイコウ。ジャマダ」
カタカタと顎骨を鳴らし、スケルトンが耳障りな声を漏らす。同時に、凄まじい踏み込みでこちらへと肉薄してきた。大剣が空気を引き裂く。
「させるかッ!」
ボウマンが素早く前に出、その巨躯で大盾を構えた。
強烈な金属音が炸裂する。
「ぐうっ……!?」
盾越しに伝わった衝撃が想像を絶していたのだろう。防御に特化したボウマンの身体が、一撃で大きくグラついた。
「ヒトリメ」
スケルトンが無慈悲に大剣を振りかぶる。ボウマンの首を撥ねようとする刃の軌道へ、私は全力で自らの剣をねじ込んだ。
ガキィンッ! と激しい火花が散り、スケルトンの追撃を弾く。
「ボウマン、体勢を整えろ! セリア、バフと援護射撃を頼む!」
即座に指示を飛ばし、パーティの陣形を持ち直す。
なるほど、ツバキ殿を攻略するための、武力特化の変異種というわけか。
「――だが! それでもツバキ殿の強さには、届いていないぞ!」
私の斬撃を皮切りに、ボウマンの重い一撃、そして後方から放たれるセリアの魔法の矢がスケルトンを捉える。連携攻撃の前に、変異種スケルトンが確実に削られていく。
完全に劣勢を悟ったか、スケルトンがおもむろに武器を下げた。
「コウナレバ……」
不気味な呟き。次の瞬間、奴の身体が内側から爆発するように、バラバラに弾け飛んだ。
激しい風圧が収まり、周囲に骨の破片が散らばる。
「終わり……ですかね?」
ボウマンが、未だ大盾を構えたまま油断なく呟いた。
呆気ない自爆。しかし、ツバキ殿を狙う刺客が、これほど無意味な自滅を選ぶだろうか?
「な、なに、これ……!? いや、嫌ぁぁぁぁっ!」
背後から、セリアの悲鳴が街道に響き渡った。
「しまっ――セリア!?」
心臓が跳ね上がり、弾かれたように振り返る。
そこでは、地面に散らばっていたはずのスケルトンの骨が、まるで生き物のように蠢いていた。磁石に吸い寄せられる砂鉄のごとき異常な速度でセリアの足元へと群がり、彼女の身体をじわじわと、生々しく侵食するように這い上がっていくところだった。




