弱くても強い皆
――ツバキ視点――
東都市に戻ってくると、なにやら様子がおかしかった。
どうやらギルドの皆が、アタシを心無い噂から守るために、裏で色々と動いてくれていたらしいのだ。
アタシより弱い皆が、アタシのことを必死に守ろうとしている。
そう思うと、胸の奥がむず痒いような、不思議なほど温かい気持ちになっていた。
ふと、東都市の皆の『名前』が頭をよぎる。
……なんでだろう。
アタシは『強い戦士』の名前しか覚えないはずなのに。最近はトビーやニナ、そしてピノンと、気がつけば勝手に覚える名前が増えていた。
そう言えば、アタシはなんで……強い戦士しか名前を覚えないようにしてたんだっけ?
……そうだ。
弱い奴は、アタシと違う世界に生きている。気まぐれに優しくしてくれても、必ず恐怖して向こうから離れていく。だから、名前なんて覚えるだけ無駄だと思っていたんだ。
でも、強い奴なら。アタシと同じ世界で戦える強い奴なら、アタシを置いていなくなったりしない。
そんな、傷つくことを恐れる臆病な願いを込めていたんだ。
だから、西都市でレオンハードに拒絶された時、あんなに苦しかったんだ。
アタシと同じ『強い戦士』にすら理解されないなら、アタシは本当に、たった一人なんだって思い知らされた気がして。
でも、今アタシの周りにいるのは、強い戦士ばかりじゃない。
もしかしたら、誰かの隣を歩くのに、強い弱いは関係ないのかもしれない。
……いや。きっと皆は、弱くないんだ。力だけでは分からない強さがあって、弱くても強いんだ。
それならば『強い戦士しか名前を覚えない』というアタシのつまらない意地は、もうここで捨ててしまおう。
強い皆にアタシは、敬意を表す必要があるから。
「ううん。きっとアタシも望んだやり方だと思う。ありがとう――ギデオン、ルミオン」
そう素直に声に出した瞬間。
目を見開いて固まった東と南のギルドトップ二人の顔が目に入り、アタシは途端に気恥ずかしくなった。
「あ、明日から、仕事には復帰するぞ!」
そう言って、逃げるように足早にギルド長室を後にする。
バタン、と扉を閉めてロビーに出ると、ギルドに戻ってきたクロエの姿が目に入った。
アタシの為に、街の大人たちを本気で怒鳴りつけてくれたという彼女の姿。
西都市の帰り道に、アタシを力強く抱きしめてくれた、あの時の温かさが鮮明に蘇る。
気がつけば、アタシは無我夢中で駆け出していた。
「きゃっ!? な、なに!?」
驚いて振り返るクロエの胸元へ、思い切り飛び込んで抱きつく。
「ただいま! クロエ!」
ぽかんと呆気にとられるクロエの顔がなんだか可笑しくて、アタシは思い切り笑っていた。
帰る場所がアタシにもあるんだ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
ちょうどストーリーの折返しになります!
後半を書き上げるので、再開は一週間後を予定しておりますのでよろしくお願いします!
読んでくれている方がいるようで安心しております!
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