失墜のスターと、遠ざかった歓声
ーー ゾラン視点 ーー
あのシャドーというモンスターに手も足も出ず敗れたあの日から、俺の生活は一変した。
地位も、名誉もすべて失った俺は、家に引き篭もり、ただひたすらに酒へ逃げる日々を送っている。
かつて『南都市のトップスターの邸宅』として光り輝いていたこの家も、主がこんな情けない有様では、どこか廃墟のような薄暗さと虚しさを感じてしまう。
「……皆は、俺のことをどう思っているんだろうな……」
玄関のポストに、ファンからの手紙やら差し入れやらが届いているのは知っている。だが、今の俺にはとてもじゃないが目を通す勇気がない。
ルミオン・ギルド長が裏で手を回してくれたのか、俺の無様な敗北が大々的に報じられることはなかった。それでも、あの劇場の舞台で大勢の観客を前に、俺は何もできずに惨めな姿を晒したのだ。
尾鰭のついた残酷な噂が、街でどう広まっているか分かったものではない。
現在の俺のギルドでの扱いは、『活動休止』ということになっている。
数日前、ルミオン・ギルド長がたった一度だけこの家を訪問し、冷徹な声でその旨を説明していった。
『悪いが、家に引き籠って酒を飲んでいるだけの冒険者に、ギルドから報酬は支払えないよ。各方面のプロモーションも、一度すべてストップさせてもらう』
俺はてっきり、南都市のブランドに泥を塗ったとして解雇を言い渡されるものだと思っていた。だから、彼女のその事務的な説明をひどく意外に感じていた。
『ただし――ギルドに籍は残しておくよ。また、気が向いたら連絡してくれ』
そう言い残して、彼女は去っていった。
……どの面下げて、また冒険者に戻れというのだろうか。
そもそも、俺自身はどうしたいんだろうか?
いくら自問自答しても答えの出ない問いを、グラスの酒と一緒に胃の奥へと流し込む。
――ワァァァァァァッ!!
ふいに、窓の外から大きな歓声が聞こえてきた。
ビクッと肩が揺れる。一体なんだ? この南都市に、俺に代わる新しいスターでも現れたというのだろうか?
外の空気を吸うのも、人々の目に晒されるのもひどく恐ろしかった。
だが……俺は、かつて自分が浴びていた『歓声』の正体が気になって仕方がなかった。
気づけば俺は、目立たない地味な外套を羽織り、帽子を深く被って、ふらつく足取りのまま外へと向かっていた。




