地獄の特訓と、不屈の資質
ギルドの裏手にある訓練場までボウマンさんに連行され、半ば強制的に指導が始まった。
「まずはトビーさんの、盾職としての適性を見ましょう! 私が打ち込みますので、全力で受けてください!」
そう言ってボウマンさんは、刃を潰したずっしりと重い練習用の長剣を構えた。
「わ、わかりました!」
俺は急いで盾を前に構え、重心を下げる。
「それでは……行きますよ!」
ボウマンさんが踏み込み、鋭い打ち込みが始まる。
最初は単調だった攻撃が、徐々に速度と重さを増し、息をつく暇もない怒涛の連撃へと変わっていく。
ガキィンッ! ドスッ! ガンッ!
(い、いつまで続くんだ……!?)
受け止める腕の感覚が麻痺し、骨がギシギシと軋む。
そして数十撃目。限界を迎えた俺はついに体勢を崩され、訓練場の土の上に尻餅をついてしまった。
「はぁっ、はぁっ……!」
俺が荒い息を吐いていると、ボウマンさんはウンウンとひどく満足げに頷いていた。
「素晴らしい! なかなか耐えられますね。日頃の労働からか、基礎的な身体作りがしっかりと出来ている証拠です! その泥臭い粘り強さは、盾職にとって最高の資質ですよ!」
ボウマンさんの目が、ギラギラと熱を帯びている。
「ただ、全ての攻撃を真正面から馬鹿正直に受けすぎです。衝撃を逃がす『受け方』や『いなし方』、そして足の『踏ん張り方』を覚えれば、貴方が耐えられる時間は飛躍的に伸びます。さぁ、今日はその方向で徹底的に訓練しましょう!」
そこから、実戦形式の打ち込みを受けながらの、地獄の技術指導が始まった。
……それを、深夜まで。
「ぼ、ボウマンさん……もうとっくに夜になってますけど……」
「敵の攻撃は、夜になったからといって止んでくれるわけではないのです!! まだまだぁッ!」
……気づけば空が白み、早朝になっていた。
「それでは、今日はここまで! また明日の朝に!」
清々しい笑顔で言い残し、ボウマンさんは足取りも軽く去っていく。
明日の朝?? 一体何時のことを言っているんだ? 今がすでに朝じゃないのか?
高ランク冒険者の体力と情熱はやっぱり半端じゃないなと、ピクリとも動かなくなった身体を大樹の幹に預けながら、俺は虚ろな目で悟った。
◆◆◆
数時間後。
ボウマンさんが、ひどく気まずそうな顔をして訓練場に戻ってきた。
「トビーさん……すまない。どうやら私、つい指導に熱が入りすぎて周りが見えなくなっていたようです。今日は一日休みにしましょう」
どうやら、宿に戻ったところでレオンハードさん達にこってり絞られたらしい。
ひどく反省した、やってしまったという顔をしている。
それでも……。
「いや……やりましょう。ボウマンさんに指導してもらえる時間が、一分一秒でも長く欲しいんです」
俺は激痛が走る足に無理やり鞭を打ち、フラフラと立ち上がった。
俺がこれから隣に立とうとしている相棒は、こんな理不尽な特訓なんか目じゃないくらい、もっと規格外で半端じゃない奴なんだ。
これくらい死ぬ気でこなしていかなきゃ、あいつに並び立てるわけがない……!
「……ッ! トビーさん!!」
俺の言葉を聞いた瞬間、ボウマンさんが感動したように目を潤ませ、俺の手をガシッと握りしめた。
「その揺るぎない意志!! 私、しかと受け止めました!! さっそく始めましょう!!」
こうして、ボウマンさんによる休むことなき地獄の盾使い特訓は、連日続くのであった。




