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東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第4章】紡がれる名前
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南都市への用事

 レオンハードさん達が東都市へ到着する、数日前のこと。

 ギデオンさんから、今回の西都市の使者が『レオンハード』という人物だと聞いた途端、隣にいたツバキの表情がスッと暗く沈んだのを感じた。

「……どうしても、あのピカピカ男に会わなければ駄目か? アタシは、あんまり会いたくないぞ……」

 ツバキが目を伏せながら、ポツリとギデオンさんに問う。

「……そうだな。何日か滞在するみたいだから、一日だけでも顔を出してほしいんだが……」

 ギデオンさんが、困ったように頭を掻きながら答えた。

 以前のツバキなら、『絶対に会わない!』と即座に敵意を剥き出しにして拒絶していただろう。

 それが今では、『会いたくない』と自分の感情をきちんと言葉で表現できるようになった。

 それは、ツバキなりの大きな進歩なのだろう。

 だからこそ、困ったように目を伏せる彼女が、ちょっと可哀想に思えてしまった。

「ギデオンさん。ツバキは最終日の顔合わせだけの出席とかでは駄目ですか? 他の日の情報共有は、俺が責任を持って対応しますよ」

「ん?」

 俺の提案に、ギデオンさんが片眉を上げてこちらを見た。

「まぁ、トビーも一連の変異種騒動の現場には居合わせているからな。情報源としての体裁は十分に保たれるか……」

 ギデオンさんがブツブツと妥協点を探り始めたのを見て、俺はツバキの方を振り返った。

「ツバキ。この前、ルミオン・ギルド長から言われた南都市での『友好都市のシンボル』としての仕事があっただろ? あれ、ちょうどいいからこのタイミングで行ってこいよ」

「え?」

 ツバキが、不思議そうに俺を見上げる。

 南都市のルミオン・ギルド長からは、「急ぎではないが、タイミングを見て時間を作って欲しい」と、ツバキへ広告塔のような仕事の依頼が来ていたのだ。

「南都市にいれば、向こうと鉢合わせることもないだろう。でも……最後の一日だけは、なんとか我慢して頑張れるか?」

 俺の意図を察したツバキが、パァッと顔を輝かせてウンウンと激しく頷いた。

「そうだった! 髭のおっさん! アタシ、南都市に呼ばれてる大事な用事があるんだ! 最終日にはちゃんと帰ってくるから、しばらくよろしくな!」

 ギデオンさんの了承を聞くまでもなく、ツバキは弾かれたようにギルドのロビーを駆けていってしまった。

「……随分と、甘やかすようになったこと」

 カウンターの奥から、一部始終を見ていたクロエに呆れたように茶化されてしまう。

「まぁ、苦手をフォローするのがパーティだからな」

 俺は気恥ずかしさから、そんな建前で誤魔化した。

 あの西都市のトップであるレオンハードさんが一体どんな人なのか、俺には直接の面識はない。

 だが、ツバキがそこまで苦手だと言うのなら、彼女が戻ってくるまでの間は、俺がしっかりと対応出来るよう励むとしよう。

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