意外な案内人
――レオンハード視点――
東都市のギルドへ到着すると、ギデオン・ギルド長が、鉄の盾を背負った一人の男と共に出迎えてくれた。
周囲を見渡すが、やはりそこにツバキ殿の姿はなかった。
「遠路はるばるようこそ、東都市へ。職人の工房と畑ばかりが広がる田舎町で、レオンハード殿には退屈かもしれませんが、我々東都市ギルドは貴方方を歓迎しますよ」
ギデオン・ギルド長が柔和な笑みを浮かべ、握手を交わしながら歓迎の意を示してくれる。
「はじめまして。トビーと言います。……ツバキとパーティを組んでいる冒険者です」
ギルド長の隣に立っていた、少し疲れたような風貌の男が、そんな驚愕の挨拶を口にした。
「ツバキは別の急ぎの依頼に向かっておりまして……当人が居合わせず、申し訳ない」
「ツバキ殿の……パーティ……?」
私は、思わず聞き返してしまった。
あの苛烈で孤高な彼女が、誰かとパーティを組んでいる?
「失礼ですが、冒険者ランクを教えていただくことは可能でしょうか?」
初対面でいきなりランクを尋ねるなど、非礼にあたるのは重々承知だ。
だが、トビー殿という高ランク冒険者の名前は今まで一度も聞いたことがない。
あの規格外のツバキ殿の隣に立つ男だ。一体どれほどの死線を潜り抜けてきた実力者なのだと、聞かずにはいられなかった。
「お恥ずかしいことに、万年Eランクでして」
「……え?」
私は、別の意味で再度驚愕することになった。Eランク?
纏っている空気には、長年ギルドで生き抜いてきたような独特のベテランの気配を感じるが……新人ランカーなのか?
私が頭の中で深刻な混乱を起こしているのを余所に、背後に控えていたボウマンが、全く別のことに強い食いつきを見せた。
「……いい盾をお持ちですね。貴方、盾職なのですか?」
ボウマンが、トビー殿の背負う使い込まれた盾を穴のあくほど見つめている。
討伐数が絶対的な評価基準となるこのランクシステムにおいて、盾職を選ぶ人間は極めて希少だ。
どれほど味方を守ろうと、自身で魔物を倒さなければ評価されず、割を食う場合がほとんどだからだ。
ボウマンのように、盾で前線を支えながら自身もAランク級の討伐をこなせる人間など、世界を見渡しても両手で数えるほどしかいない。
盾職としての強い誇りを持つボウマンは、日頃から盾職人口の少なさをひどく嘆いており、こうして珍しい同志を見つけると、つい声をかけずにはいられないのだ。
「ええ。最近、引退した先輩冒険者に譲ってもらった大切なものなんです。……ただ、本格的に盾職の技術に興味はあるんですが、この都市ではなかなか基礎から学べるところも少なくて」
「ほう……なるほど」
トビー殿の言葉を聞いた瞬間、ボウマンの目の色が変わった。
原石を見つけた職人のような、鋭く熱を帯びた視線。
「立ち話もなんですし、今日はもう遅いです。まずは長旅の疲れを癒やせるよう、宿屋までご案内しますよ」
ボウマンがさらに踏み込もうとしたところを、ギデオン・ギルド長がそう言って、上手く話を区切ってくれた。




