異質なベテラン
南都市から東都市へ戻った俺は、折れた右腕が完全に回復するまでクエストが受けられないこともあり、ダルタンさんの言っていた『どうすれば役に立てるか』について、真剣に頭を悩ませていた。
俺が他の冒険者にない『強み』はなにかあるだろうか? と考える。
無駄に長くEランクをやっているだけで……思いつかない。
いやいや! 腐っても十数年だ、何かあるだろう!
……ん?
そういえば、Eランクを長年続けている冒険者って、俺以外にいるのか?
Eランクと言えば、夢と希望に満ちた新人ばかりだ。
俺みたいに戦闘センスがない奴は、普通なら早々に現実を見て別の仕事に就く。
ちょっと、ギルドの事情に詳しい奴に聞いてみるか。
ギルドに行くと、カウンターにクロエの姿がなかった。
休息室の方かと思いそちらに向かうと、なんとツバキとクロエが二人でお茶会をしていた。
いつの間にか、随分と仲良くなったんだな。
休息室に入ってきた俺を見ると、ツバキが心配そうに駆け寄ってきた。
「おっさん! 安静にしてなくて大丈夫なのか?」
「あぁ、だいぶ回復したから大丈夫だよ」
俺はツバキにそう答えて、クロエの方に視線を向ける。
「クロエ、後でちょっと時間くれるか? 少し、ランクのことで聞きたいことがあるんだ」
「別に今でも構わないわよ?」
クロエが、向かいの席をポンポンと叩いて着席を勧めてくる。
「いや、せっかくの休息時間だろ? ロビーで待ってるよ」
おっさんが若い女の子たちの女子会に割り込むのも無粋だしな。
俺はそう言って、ロビーに向かうのであった。
数刻後。
ロビーの長椅子で待っていた俺の前に、ツバキとクロエがやってきた。
「ツバキも来たのか?」
俺がそう聞くと、ツバキが分かりやすくムッとした顔になる。
「なんだよ! アタシが居たら駄目な話かよ?」
「いや、そうじゃないけど。俺の個人的な話だから、聞いててもつまらないぞ?」
ツバキは有無を言わせず、俺の横にドカッと腰を下ろした。
「つまらないかどうかは、アタシが自分で決める!」
「はいはい、相変わらず仲良しコンビね。それで、聞きたいことって?」
正面に座ったクロエに促され、俺は本題を切り出した。
「ちょっと自分の昇格について本気で考えてるなかで、ふと思ったんだが……俺以外に『Eランクを長年続けている冒険者』っているのかな? って」
そう質問を投げかけると、クロエが驚いたように目をパチクリとさせ、次いでパァッと顔を輝かせた。
「トビー! あんた、ついに昇格を本気で目指す気になったのね!」
「あぁ……! Eランクのまま流されて停滞してるようじゃ、駄目だと思い直してな」
クロエがウンウンと、満足そうに頷く。
「そうよ! さっさとCランクくらいになっちゃってよ!」
そこまで言ってから、クロエは少しだけ真面目な顔つきに戻った。
「話が脱線したわね。ええと、『Eランクを長年続けている冒険者が他にいるか?』って質問だけど……答えは、ゼロよ。トビー以外には一人もいないわ」
「一人も、か」
「ええ。これはね、Eランクという階級の『構造的な問題』でもあるのよ」
クロエは指を一本立てて、ギルド職員としての視点から語り始めた。




