自分のやり方で見つける価値
(この短期間で、Sランク推薦状が二枚か……)
それだけ彼女が破格の活躍をしている証拠だが、改めてツバキという規格外の存在に圧倒される。
「最後に、トビー君にもひと言」
ルミオン・ギルド長が、スッと視線を俺へと向けた。
(俺にも? また冷徹に正論で詰められるのか……)
思わず肩が強張る俺に対し、彼女は静かに言葉を紡いだ。
「私は、君を取るに足りない存在だと思っていた。東のギデオンが、なぜ君のような男をそこまで気にかけるのか、不思議でならなかったよ」
(ギデオンさん……疑っていたわけじゃないけど、本当に俺の昇格のために本部へ掛け合ってくれていたんだな)
「だが……きっと私にはまだ見えていない『価値』が、君にはあるんだろうね。今回のあの舞台での立ち回りで、少しだけその片鱗を感じさせてもらったよ」
俺は目を丸くした。あのルミオンが、俺を褒めている!?
てっきり、「ボロボロになって立っていただけ」と一蹴されると思っていたのに。
「規定は満たしていないが……Dランクへの昇格。今回の奮闘を評価して、私から特例的にギルド本部へ推薦状を書いても構わないよ」
「おっさん! やったじゃん! 昇格できるんだって!」
ツバキが無邪気に俺の腕を揺らして喜んでくれている。喉から手が出るほど欲しかった、Eランクからの脱却。
でも――俺はもう、決めたんだ。
「お気持ちはありがたいですが……お断りします」
「おっさん!?」
「それは、俺のやり方じゃない。俺は、俺自身の価値を、俺のやり方で示しますから」
俺が真っ直ぐに見据えて答えると、ルミオンはクスリと小さく笑い声を漏らした。
「ふふっ。頑固な君のことだ、そう言うと思っていたよ」
彼女は、出会った時から今までで一番、柔らかく穏やかな微笑みを浮かべた。俺の出した答えは、彼女にとって満足のいくものだったらしい。
「君の今後の活躍に、大いに期待しているよ。……また、この南都市のギルドにも遊びに来てくれ」
ルミオンは少しだけ目を細め、意味ありげに付け加えた。
「次来る時は――『君一人』でも構わないよ」
◆◆◆
――シャドー視点――
斬り飛ばされ、どくどくと血が滴る右腕の断面を抑えながら、僕は主の足元へと片膝をついた。
「……随分と無様な姿だな」
機材の奥から、静かな声が降り注ぐ。
「申し訳ございません。標的のゾランを戦線離脱させることには成功しましたが……東都市の特例Aランク冒険者に、妨害されました」
僕は悔しげに唇を強く噛み締めた。
「恐ろしい強さでした。東、西の失敗も……おそらく、あの冒険者が関わっています。僕の精神汚染すら、まるで通用しませんでした」
「ほう?」
闇の奥でフラスコを揺らしていた主は、手を止めた。
「特別製であるお前の精神汚染が、一切効かなかった? それは興味深い……」
カツン、と。主の指先が、フラスコを撫でる。
「本当にその冒険者には心がないのか……。私の新しい『作品』で、じっくりと確かめさせてもらうおう」




