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東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第3章】その価値の決め方
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自分のやり方で見つける価値

(この短期間で、Sランク推薦状が二枚か……)

それだけ彼女が破格の活躍をしている証拠だが、改めてツバキという規格外の存在に圧倒される。

「最後に、トビー君にもひと言」

ルミオン・ギルド長が、スッと視線を俺へと向けた。

(俺にも? また冷徹に正論で詰められるのか……)

思わず肩が強張る俺に対し、彼女は静かに言葉を紡いだ。

「私は、君を取るに足りない存在だと思っていた。東のギデオンが、なぜ君のような男をそこまで気にかけるのか、不思議でならなかったよ」

(ギデオンさん……疑っていたわけじゃないけど、本当に俺の昇格のために本部へ掛け合ってくれていたんだな)

「だが……きっと私にはまだ見えていない『価値』が、君にはあるんだろうね。今回のあの舞台での立ち回りで、少しだけその片鱗を感じさせてもらったよ」

俺は目を丸くした。あのルミオンが、俺を褒めている!?

てっきり、「ボロボロになって立っていただけ」と一蹴されると思っていたのに。

「規定は満たしていないが……Dランクへの昇格。今回の奮闘を評価して、私から特例的にギルド本部へ推薦状を書いても構わないよ」

「おっさん! やったじゃん! 昇格できるんだって!」

ツバキが無邪気に俺の腕を揺らして喜んでくれている。喉から手が出るほど欲しかった、Eランクからの脱却。

でも――俺はもう、決めたんだ。

「お気持ちはありがたいですが……お断りします」

「おっさん!?」

「それは、俺のやり方じゃない。俺は、俺自身の価値を、俺のやり方で示しますから」

俺が真っ直ぐに見据えて答えると、ルミオンはクスリと小さく笑い声を漏らした。

「ふふっ。頑固な君のことだ、そう言うと思っていたよ」

彼女は、出会った時から今までで一番、柔らかく穏やかな微笑みを浮かべた。俺の出した答えは、彼女にとって満足のいくものだったらしい。

「君の今後の活躍に、大いに期待しているよ。……また、この南都市のギルドにも遊びに来てくれ」

ルミオンは少しだけ目を細め、意味ありげに付け加えた。

「次来る時は――『君一人』でも構わないよ」


◆◆◆

――シャドー視点――

斬り飛ばされ、どくどくと血が滴る右腕の断面を抑えながら、僕はあるじの足元へと片膝をついた。

「……随分と無様な姿だな」

機材の奥から、静かな声が降り注ぐ。

「申し訳ございません。標的のゾランを戦線離脱させることには成功しましたが……東都市の特例Aランク冒険者に、妨害されました」

僕は悔しげに唇を強く噛み締めた。

「恐ろしい強さでした。東、西の失敗も……おそらく、あの冒険者が関わっています。僕の精神汚染すら、まるで通用しませんでした」

「ほう?」

闇の奥でフラスコを揺らしていた(あるじ)は、手を止めた。

「特別製であるお前の精神汚染が、一切効かなかった? それは興味深い……」

カツン、と。(あるじ)の指先が、フラスコを撫でる。

「本当にその冒険者には心がないのか……。私の新しい『作品』で、じっくりと確かめさせてもらうおう」

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