表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第3章】その価値の決め方
26/27

虚無を呟く冒険者

そんな経緯で、俺は貴重品の運搬という本来の仕事を早々に終わらせた後、ツバキの南都市観光に付き合わされるハメになったのだ。

最初のミッションは、クロエが事前に教えてくれた「おすすめの甘味屋」の場所を探すことだった。

地図を確認し、なんとか店まで案内する。

俺は店の外で待っていようとしたのだが、気付けばなし崩し的にツバキと一緒に長い列に並ばされ、そのまま華やかな店内へと入店することになってしまった。

甘味屋なんて、何年ぶりだろうか……。

席に座り、渡された上品なメニュー表を開く。

――そして、そっと閉じた。

(ま、まじか……!)

甘味ってこんなに高いのか!? こんな小さな菓子のセットが!?

冷や汗を流しながらチラリとツバキの様子を見ると、彼女はすでに頼みたいものが決まっているらしく、「この店は団子が美味しいらしいぞ〜」と満面の笑みでニコニコしている。

そうこうしている内に、店員がオーダーを聞きにやってきた。

「この団子セットを二つ! 飲み物はおっさんもお茶でいいよな?」

財布の中身の計算で頭がパンクしそうな俺をよそに、ツバキが勝手にオーダーを通してしまう。

どうする!?

「……っぷ! あははっ!」

俺が顔面蒼白で必死に考えていると、ツバキがお腹を抱えてケタケタと笑い出した。

「安心しろよおっさん。ここは『飯』じゃなくて『甘味』だから、アタシが払ってやるよ」

財布の余裕からくる、圧倒的な貫禄。

「これに懲りたら、二度とアタシ相手に調子に乗らないことだな!」

フンスと得意げに胸を張るツバキに、俺はもう平身低頭、ただただひれ伏すしかなかった。

本当にすいませんでした。

しかし、流石に年下の少女に奢られっぱなしでは、大人の男としていよいよ立つ瀬がない。

夕飯こそは約束通り俺が奢るぞと意気込み、昔、先輩冒険者に教えてもらった『路地裏にある安価で美味い店』を目指すことにした。

だが――。

「おっさん、ほんとにこんな暗いところに店なんてあるのか?」

南都市の華やかな大通りから一本外れると、そこは迷路のように入り組んだ裏路地だった。

俺はすっかり道を失い、迷子になっていた。

甘味屋での失態に続き、南都市にきてから本当にいいところがないな、俺……。

「すまん、完全に迷った。一旦大通りに出て、分かる道から探し直すわ」

そう言ってため息をつき、暗い路地の角を曲がった時のことだった。

――道が、塞がれていた。

そこにいたのは、重武装をした冒険者のパーティらしき4人組だった。

しかし、様子がおかしい。

彼らは皆、壁際や地面に力なくうずくまり、ブツブツと何かを呟き続けているのだ。

「あの、大丈夫ですか?」

俺は訝しげに近づき、しゃがみ込んで一人の男の肩を軽く揺すった。

グラリ、と。

まるで糸の切れた操り人形のように、その男はそのまま横にバタリと倒れ込んだ。

「なっ……!?」

倒れた男の目は、焦点が合っておらず、完全に生気を失っていた。

それなのに、開いた口だけは休むことなく、うわ言のようにブツブツと何かを呟き続けている。

煌びやかな南都市の、光の届かない路地裏。

東都市のオーク、西都市のスライムに続き、ここでもまた『異変』が起きている。

俺の背筋に、ぞくりと冷たい悪寒が走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ