お菓子な握手
ー クロエ視点 ー
「べ、別にいらない!」
ツバキが慌てたようにブンブンと首を振る。
さっきまでの獲物を狙うような熱い視線からして、絶対にそんなことはないはずだけど……。
「嘘言いなさいよ。一緒に食べましょうって誘ってあげてるんだから、素直に受け取りなさい」
「うー……その……アタシ、甘いものは苦手なんだ……」
ツバキは頑なにお菓子に手を伸ばそうとしない。
そんなに私と一緒に食べるのが嫌なのかと、なんだか少し不機嫌になってしまう。
「なにをそんなに遠慮してるのよ」
「だって……」
ツバキは膝の上で両手をギュッと握り、困ったように伏し目がちになって、ポツリと呟いた。
「受付の姉ちゃん……アタシのこと、嫌いだろ?」
(……っ)
それを正面きって本人に聞くか、普通。
思わず呆れたような苦笑いが漏れてしまう。でも、言葉の裏を読んだり誤魔化したりできず、思ったことをそのまま口に出してしまう不器用さこそが、この『ツバキ』という少女なのだと改めて思う。
「そうね。嫌いよ」
私がハッキリと肯定すると、ツバキは「やっぱり」と言いたげに、分かりやすくシュンと肩を落とした。
私は持っていた焼き菓子を包み直し、そのままツバキの小さな手を取って、無理やりギュッと握らせた。
「でも、このギルドの『仲間』だとは思ってるわ」
「……え?」
予想外の言葉だったのか、ツバキが弾かれたように顔を上げ、戸惑った顔で私を見つめる。
「嫌いなのに……仲間???」
「そういうものなのよ」
なんだか急に、自分の小っ恥ずかしい言動に耐えられなくなってきて、私は真っ赤になりそうな顔を誤魔化すように背を向けた。そして、これ以上何か言われる前に、足早に休息室を出た。
バタン、と扉を閉めた後。
ほんの少しだけ開けた扉の隙間から、こっそりと中の様子を窺う。
するとそこには――両手で大事そうに焼き菓子を持ち、ニコニコと幸せそうに頬張るツバキの姿があった。
(……本当に、現金な子)
今度は、街の甘味屋にでも連れて行ってあげよう。
私は少しだけ軽くなった足取りで、受付カウンターへと戻っていった。
閑話「お菓子な握手」、最後までお読みいただきありがとうございました!
【明日は第3章「その価値の決め方」を掲載します! 】
全13話となります!
明日は12時、20時に更新です。




