受付嬢の自己嫌悪
時は遡り、ツバキ達が西都市での任務から帰還し、ガッティ・ギルド長から『Sランク推薦状』が届く少し前のこと。
ー クロエ視点 ー
西都市から帰還して以来、私はツバキにどう接してよいか分からず、ずっと気まずい思いを抱えていた。
西都市で理不尽な言葉をぶつけられ、傷ついた顔を見せたツバキ。あの帰り道、一人で馬車を降りて歩いて帰ろうとした彼女の弱々しい背中を見て、私は改めて自身の今までの接し方が大人気なかったと猛省していたのだ……。
あの子に「一人で歩いて帰る」という孤独な選択肢を思い浮かばせてしまったことが、何よりも胸に堪えた。ギルドの受付嬢として、完全に心のケアという仕事を放棄していたのではないかと、自己嫌悪で胃が痛くなる。
かと言って、今さら真正面から謝るのもなんか違う気がする。
いくらなんでも、トビーを森に置き去りにしたあの事件に関しては、私は本当に怒っていたのだから。
「あーもう、どうしたらいいのよ……」
今日もカウンターで頬杖をついて思案していると、ふと冒険者たちの快活な会話が耳に入ってきた。
「この前はクエストで世話になったな! こいつはささやかなお礼だ。受け取ってくれ」
「そんな気を使わなくていいのに。まぁ、ありがたくいただいておくぜ」
贈り物、か……。
なるほど。直接言葉で謝るのは癪だけど、何かをプレゼントして「敵意はないわよ」と遠回しに伝えるのには丁度いいかもしれない。
名案を思いついたと顔を上げた私だが、すぐに次の巨大な壁が立ちはだかった。
――そもそも、あのツバキに何を渡したら喜ぶの?
年頃の女の子が好きそうな、可愛いお菓子とか甘いものなんて、喜んで食べるとは到底思えないし……。
やっぱり、ぶ厚い骨付き肉とかかしら?
それとも、名工が打った刀の砥石やお手入れセット? いやいや、可愛げがなさすぎるでしょ。
悶々と一人で考えても全く答えの出ない私は、深くため息をつき、ツバキの理解者であるトビーにアドバイスを求めに行くのであった。




