万年Eランク、空を見上げる
初作品です!
毎日20時くらいに続きを投稿します!
『冒険者は儲かる!』
そんな噂話を聞き、家族の反対を押し切って王都に来てもう十数年。
華々しくモンスターを討伐……などという活躍もせず、荷物持ち等の力仕事や、ギルドの事務作業手伝い等の雑用で生計を立てる日々だ。
経験が長いので新人冒険者の面倒を任されることも多い。
最初は先輩と慕ってくれる新人達も、数カ月もすればDランクへ昇格し、俺を追い越していく。
力仕事に自信はあるが、全く結果を残せない俺は万年Eランクなのだ。
街では「便利屋トビー」、ギルドの冒険者からは「チュートリアルのトビーさん」等と呼ばれる始末。
ありがたいことに、ギルドや街からの信頼はそれなりにあるようで、報酬に色を付けてもらうこともあり、Eランクでありながら生活自体は出来ている。
その日、俺は東都市の最強戦力と呼ばれているBランク冒険者、ダルタンさんの依頼で討伐したモンスターの運搬を行っていた。
「トビー! 急な依頼なのに受けてくれてありがとうな!」
「いつも贔屓にしてくれるダルタンさんの依頼ですから。気にしないでください」
「そう言ってもらえると助かる。前情報よりモンスターの数が多くてな」
ダルタンさんとそんな会話を交わしている最中、ふいに横から高い声が割り込んできた。
「おっさん、冒険者? この都市のギルドに行きたいんだけど、道を教えて欲しいんだ!」
声の方向へ振り向くと、そこには見慣れない変わった服装の少女が立っていた。
真っ黒な髪を一つに結った凛とした顔立ち。腰には、これまた変わった反りのある剣を帯びている。
「侍か? 珍しいな」
「私はツバキだ。この都市で冒険者になろうと思って来た! よく分からないけど、ギルドへ行く必要があるんだろう? 道を教えてくれ!」
ダルタンさんが名乗り、俺も「これからギルドへ戻るところだったから案内するよ」と申し出る。
すると、ツバキと名乗った少女はキョトンと首を傾げ、俺のことをマジマジと見つめてきた。
「な、なんだい?」
「いや! こっちのおっさんは凄く弱そうだから、冒険者だと思ってなかった!」
悪びれる様子など微塵もない、からりとした笑顔。
ツバキは目を瞬かせ、心の底からの純粋な疑問を口にした。
「なぁ! おっさん! 才能がないのになんで冒険者なんてやってるんだ?」
無邪気に微笑みながら問うてくる少女の顔を見て、頭の中の血が沸騰するような感覚に襲われた。
可能な限り冷静を努めようとしたが、文句の一つでも言わなきゃ気が済まなかった俺は、衝動的に少女の肩を掴もうと腕を伸ばしてしまった。
――その瞬間、世界が回った。
気づけば背中に走る鈍い衝撃。そして、視界いっぱいに広がる青い空。
「やっぱり弱いな!」
見下ろしてくる少女は、あっけらかんと笑っていた。
彼女との出会いは、俺の冒険者人生において最高に惨めなものだった。




