東の狂犬
物心がついた時から、剣を振るうのが好きだった。
アタシには才能があったようで、面白いようにどんどん上達していった。
師匠のように強くなるんだ。家族が誇れる立派な武人になるんだ。そして、皆の役に立つんだ。
そう信じて、ただひたすらに日々の稽古に励んでいた。
最初は「類まれなる才能だ」と、皆がアタシを褒めてくれた。
でも、アタシが強くなればなるほど。斬り伏せる敵が強大になり、その数が増える度に、一人、また一人とアタシから離れていった。
どうしてなんだろう……。
でも、アタシには剣術しかないんだ。
もっと、もっと強くなるんだ。そうすれば、きっと誰かが認めてくれて、一緒に歩いてくれる人が出来るはずだ。
けれど、そんな願いも、アタシの生まれ育った故郷では叶わなかった。
ある日、家族から改まって呼び出されたかと思えば、突然『武者修行』を言い渡された。
……要するに、手に負えなくなった『バケモノ』の、体裁の良い追放だった。
別に、気になんかしていない。
新しい地で、アタシを求めてくれる本当の居場所を見つければいいだけだ。だから、故郷を出発する日、ただの誰も見送りに来なかったことだって、アタシは全く気にしていない。
旅をする途中で『冒険者』という仕事を知った。
どうやら、強ければ強いほど歓迎され、称賛される仕事らしい。アタシより強い奴なんて見たことがないから、きっと皆が喜ぶに違いない。
そうして辿り着いた、ギルドがある東の都市。
アタシはさっそく、冒険者らしい装いをしている奴に声をかけようと近づいた。
ふと見ると、その隣には、なんだか弱そうな『おっさん』が立っている。驚いたことに、そいつも冒険者らしい。
弱い奴は、どうせすぐにアタシの前からいなくなる。……しかし、なぜだかこのおっさんは『居なくならない』ような気がした。
その不思議な直感の理由を知りたくて、アタシはその弱そうなおっさんに向かって口を開いた。
「才能がないのになんで冒険者なんてやってるんだ?」




