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東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第2章】バケモノと呼ばれた少女
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期待される戦果、すれ違う背中

ー クロエ視点 ー

西都市ギルドの最奥にある重厚な扉を抜け、私はツバキと共にギルド長・ガッティと対面していた。

何度会っても、この人には慣れない。

神経質そうに押し上げられた眼鏡の奥から、射抜くような冷たい視線がこちらを値踏みしている。ピクリとも笑わない口元と、隙のない立ち振る舞い。四都市で一番の『成果主義者』と呼ばれるだけの威圧感があった。

「クロエ嬢、ツバキ嬢。この度は、遠方からのクエスト協力に感謝する」

抑揚のない事務的な労いの言葉に続き、今回のクエストの説明が始まった。

「事の発端は、都市の外れにある村の住人が、こつ然と姿を消したことから始まる。異変調査のために当ギルドのBランク冒険者パーティを派遣したのだが……彼らからの連絡が、一週間前から途絶えているのだ」

Bランク冒険者だけでパーティを組める西都市の層の厚さにも驚きだが、それほどの腕利き集団が音信不通になるなんて、一体何が起きているというのか。

「先日、東都市で変異種が確認されたことから、当件も変異種絡みであると想定している。我が都市の最高戦力チームを投入し、総力で対処に臨む方針だ」

傍らに立つレオンハードさんが、力強く頷いている。

「しかし、変異種がどのような特性を持っているか、未だ予想ができない。そこで、オークキングの変異種を単独討伐したというツバキ嬢にも、ぜひ協力していただきたいのだ」

ガッティ・ギルド長が、鋭い目でツバキを見つめる。

するとツバキは、ドンッと自信満々に自分の胸を叩き、ふんぞり返って答えた。

「東都市の『特別戦力』であるアタシに任せておけ! 彫刻メガネ!」

(……っ!!)

隣で控えていたレオンハードさんが、信じられないものを見るように目を剥いた。

「も、申し訳ありませんっ! 礼儀を知らない失礼な物言いをする冒険者で……!」

私は慌てて頭を下げ、ガッティ・ギルド長へ平謝りした。

「……構わぬ」

返ってきたのは、氷のように冷たく端的な返事。怒っているのかどうかも分からない。

「ツバキ嬢に求めるのは『戦果』のみだ。……その腕前、期待しているぞ」

ストレスで本当に胃に穴が開きそうになった面談を終え、私はツバキに手配した宿泊場所と、明日のクエストの集合場所の地図を押し付けた。

「私は西都市のギルドで待機しているから、なにか報告があったら来てちょうだい。じゃあね」

私の任務はここまでだ。あとは、明日の合同クエストが無事に成功することを祈るしかない。


ー ツバキ視点 ー

「それじゃあ、ここが宿泊場所、こっちが明日の集合場所よ」

受付の姉ちゃんから、何枚かの紙の束を押し付けられる。

なるほど、この都市ではアタシの戦果に期待しているらしい。

それなら、明日のクエストでアタシの圧倒的な強さを存分に見せつけてやる! そうすれば、みんなアタシのことを認めるはずだ。

そう意気込んで顔を上げた時には、受付の姉ちゃんは足早に背を向け、さっさとどこかへ歩き出していた。

「あ……」

(……一緒にご飯ぐらい、食べるかと思ったんだけどな……)

遠ざかる背中を見つめながら、アタシは少しだけ肩を落とした。

受付の姉ちゃんは、アタシのことが凄く嫌いらしい。あのクエストで、おっさんを置いて帰った一件から、向けられる視線が物凄く厳しくなったのだ。

今まで、恐れられたり、遠ざけられたりしたことは何度もあった。けれど、あんな風に明確な『嫌悪』という感情を真っ直ぐぶつけられたのは初めてのことで、どう対応していいのか分からない。正直、あの姉ちゃんはちょっと苦手だ。

渡された地図を見つめ、一人でご飯を食べに行こうかと思案していると――。

「ツバキ殿!」

不意に声をかけられ振り返ると、あのピカピカ男が爽やかな笑顔で立っていた。

「明日のクエストを前に、親睦を深めたいと思ってね。よければ、私のパーティメンバーと一緒に、これから夕食でもどうかな?」

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