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東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第2章】バケモノと呼ばれた少女
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水鏡の剣士

ー クロエ視点 ー

西都市へツバキを派遣する日がやってきた。

この一週間、トビーがあのお侍さんにパーティの基本を教えようと汗水流して奮闘していたのは知っている。

(なんでトビーは、あんな自分勝手なヤツのために一生懸命になってるんだか……)

内心でため息をついていると、ギルド長のギデオンさんに呼び止められた。

「クロエ」

「はい」

「ツバキの引率、よろしく頼むぞ。向こうの状況は、『報告石』を使って定期的に連絡をくれ」

「ギルド間の行き来や事務手続きなんて、何度も経験があるから心配ご無用ですよ」

私は旅装の荷物を持ち直しながら、気楽に答える。

「……ツバキの精神的なフォローも、よろしく頼むな」

「…………」

その最後の指示にだけは意地でも返事をせず、私は無言でギルドを出て、合流場所である停留所へと向かった。

停留所には、大荷物を持ったツバキと、見送りに来たトビーが待っていた。

ツバキはこちらを見ると、気まずそうな顔をして腕を組む。

(……こっちだって、あんたの世話なんざお断りだっての)

荷馬車に乗り込み、西都市への旅が始まる。

西都市までは、東都市から馬車に揺られて半日程かかる。中央にそびえる王都を真っ直ぐ突っ切ることができれば半分の時間で着くのだが、身分証を持たない冒険者や商人は王都への立ち入りが厳しく制限されているため、外周をぐるりと迂回する必要があるのだ。

ガタゴトと揺れる狭い車内。

案の定、道中は互いに一言も発することなく、息が詰まるような重い沈黙だけが続いた。

そんな気まずい時間もようやく終わりを告げ、私たちはエリート冒険者が集う西都市の正門へと到着した。

「お待ちしておりました。東都市ギルドの方ですね?」

馬車を降りて伸びをした直後、よく通る爽やかな声が耳に届いた。

声のする方を向くと、そこには磨き上げられた蒼い鎧に身を包んだ、絵画から抜け出てきたような美丈夫が立っていた。

「はじめまして! 西都市でAランク冒険者を務めております、レオンハードと申します! そしてこちらが、私のパーティメンバーである盾使いのボウマン、魔法使いのセリアです」

彼が恭しく頭を下げると、後ろに控えていた恰幅の良い男と、知的な雰囲気の女性も軽く会釈をした。

(……この人が、噂に名高い『水鏡の剣士』レオンハードさんか。たしかに、その異名通り曇りの一つもないような人だ)

姿勢の良さといい、纏っている洗練されたオーラといい、東都市のむさ苦しい冒険者たちとはまるで空気が違う。

レオンハードさんが私とツバキへ順番に握手を交わしながら、淀みない笑顔で続ける。

「今回は、東都市からの助太刀に心より感謝いたします。早速で申し訳ありませんが、ガッティ・ギルド長より今回のクエストに関する説明をさせていただきます。どうぞ、こちらへ」

完璧なエスコートで案内を始めるレオンハードさんの背中を見ながら、隣を歩くツバキが目を細め、ボソリと呟いた。

「……あのピカピカ男、なかなか強そうだな」

相変わらずの身も蓋もないネーミングセンスに頭痛を覚えつつ、私たちは西都市のギルド長・ガッティが待つ本部へと足を踏み入れるのであった。

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