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退魔の英雄  作者: 明太子
外界之魔陰
72/81

61-2 内界での二戦。

毎日投稿四日目。

明後日から大学の講義だと思うと憂鬱です。


では楽しんでください!!

 一度目の発砲。読まれていたのか、見切られたのかは不明であった。ただ世嗣からすれば、不当であったと云う事実があれば充分なのだ。

(弾丸の軌道を外されたか……まぁ当然か)

世嗣は冷静に魔術師を見つめると二発目の弾丸を撃ち込んだ。

 不可視の手による誘導。その表現が最も適切なのだろう。二発目の模倣弾もまた、こと見事に曲げられた。


焔の躍動(シン・レハヴァ)

高速で紡いだ、魔術の詠唱。しかしながらここまで短略化されていれば、それは魔唱と云うに相応しい。

 仰々しい杖をコンと地面に触れさす。それが起爆剤の様に作動する。


 ボッ。


 途端に世嗣の咥えていた煙草の火が過剰に酸素を回し、燃焼する。

(ヘブライ語の炎の意。加速燃焼の組み合わせか⁉︎)

勢いに任せて世嗣は煙草を吐き捨て、革靴の裏で鎮火を済ます。

「陰湿だなてめぇ、北欧支部出身か?」

「御名答。良くご存知で、流石はこの国唯一の魔術師と言った所ですか?」

偉く堪能な日本語。恐らく祐よりまともであろう。

「点火術式では無く、敢えて燃焼加速を選んでる辺りで良く分かったわ」

「其方の方が魔力の効率が良いですからね。──ですが、僕とお喋りしていて良いのですか?」

睨む世嗣は対照的に魔術師は、余裕と嗤う。ひょいと指し示された人差し指の先。

 どうして気が付かなかったのだろう。

 煙の臭い。

 それは紙を燃焼させた臭いでは無い。不純の癖、良く肺に馴染む。

(煙草の燃焼加速。まさかッ⁉︎)

身体全体の旋回。初め目に着いたのは、立ち昇る黒煙であった。弱々しい小火(ボヤ)程度では許され無い火災の火種は織りなす塔の内で燃ゆる。

 燃焼加速に当てられたのは、世嗣の一本と葉加瀬の一本。

 先ほど研究室を粗方見渡したのが幸いであった。この一室に消火装置は無く、加えて世嗣自身その術を持ち得ない。選んだ択は精度を落とす遠隔の物体飛翔。

「てめぇ......一周回って熱いな。あの女は関係ねぇだろ」

「ふふッ、関係大ありですよ。何せ私の仕事はあそこで寝ている女性を連行し、第三魔法(完全なる掌握)を手にすることですから」

「んじゃ猶更てめぇの行動は穴だらけだ。俺の意識を一本目の煙草に向けている隙に幾らで出来ただろうに」

世嗣は右手に持つナガンM1895を金髪の魔術師に向ける。だが魔術師は平然としていた。向けられたそれが子供のお遊びで使うBB弾仕込みの銃である様に。

「何事も初めは前戯(ストレッチ)からと相場は決まっています。実のところまだまともな魔術は使っていませんので」

「そうかい──────なら」

世嗣は闘力による移動で三メートル程の距離を瞬間詰めた。左手で魔術師の腹に触れると二人は虚空へと消え去る。




 ──────暗転。


 拾九番街直系運営塵集積場。基本は企業単位でのモノや、危険物処理等の用途で用いられる。そんな中にまるで場違いであるかのように時雨は二つのゴミ袋を引っ提げていた。

「ごめん下さい。可燃ごみの集積のお願いに参りました」

時雨は案内係として年中無休で立ち尽くすヒト型生命体に話しかける。

『一般、企業のどちらでしょうか?』

「一般です」

『でしたら入りまして奥方右手側にお進みください』

純粋な受け答えには過ぎないが、そこに機械らしさは無かった。時雨は小さく会釈を済ませると指示通りの場所に脚を運ぶ。

 ゴミ集積場と言うくせ、この空間は大層な臭いを持っていなかった。

 それは愚か、洗浄をねた結果か洗剤の匂いが絶えず鼻腔を伝う。


 時雨は両手を空にするとぐるりと辺りを見渡した。当然の如く時雨は烏ではない。そして馬券やら宝くじやらを漁る地見屋でも乞食でもない。

「人は居ませんね──────では」

虚空に飛ばしていた残り十六のゴミのそれを二つずつ取り出しては置き続けた。

 純粋な人間だと云うのに、時雨の動きは余りに機械的である。一つの行動の軌道を完全に乗るそれは叩き込まれた修行の呪い。

「最後の前に.........私に何か御用ですか?」

「いや大層な用事じゃねぇ。お前にはちょっと手伝って貰えればいいんだ」

川の上流に転がる岩の様に荒く、羽の様に軽い声は二人しかいない空間を囲って見せる。

「そうですか。ゴミの処理でしたら手伝いますよ」

「へへっ、剣聖の神子ってのは冗談を言わないと思ってたぜ。中々面白ぇよお前」

時雨は振り返る事無く二つのゴミ袋を自分の横にひょいと置く。

 代わりに握られたのは虚空から舞い降りた白鞘の大太刀。それは既に空気と言う鞘に刀身を包ませていた。

「おいおい。白昼堂々銃刀法違反か?この国はそう言う犯罪に結構うるさいって聞くぜ」

「そうかもしれませんね。──────では、貴方もその物騒な鎌を収めては如何ですか?」

言葉の鍔迫り合いを制したのは時雨であった。魔術師は咄嗟に息を呑むと赤黒く色づいたデスサイズの鎌の背を地面にコンと付ける。

「前言撤回だ。ちょっと手伝って貰うと思ったが、止めることにするよ.......お前には死んでもらう」


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初見でしたら第零話から読んでもらえると助かります。

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