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2人の気持ち

「ターゲットは富瀬家の娘、富瀬みゆりよ。富瀬家は元々忍者の家系だったらしいから、忍術も使えてもおかしくはないわ」


つらつらと説明をする燦羅。

しかしそれは華椰葉にとって受け入れ難い事だった。


「そんな......みゆり......が」


動揺している華椰葉を見て、

「ちょっと大丈夫? 私の話聞いてた?」


華椰葉はハッとして

「すみません。......実は彼女はさっき話した大切な友達の1人で......」


燦羅は驚き、

忍術を使えるから何かしら華椰葉との関わりがあると思っていたが、ここまで近くの関係者だとは思いもしなかった。

「そ、そうなのね。......辛いけど......これが現実みたいね」


そう、これは受け入れるしかない現実。


「ごめんなさい、動揺しました。引き続きお願いします」


そう言って心を切り替えると、みゆりの様子を最後まで観察したのであった。





「今日はありがとうございました。またこちらでも動きがあったら報告します」


明らかに暗く、疲れ切っている華椰葉。


「今回は......その、衝撃的な事だったけど......争いの尻尾を掴めたのだし、私はあなたの味方だからどうか1人だと思い込まないでちょうだいね」


燦羅は華椰葉の心中を察し、そう言葉をかけたのであった。





寮に戻り


華椰葉は外で空を見上げていた。



みゆりが私の敵だったなんて......

この間、泊が唯にかけた目眩しも怜奈が死んだときのあの術に似ていた。あれはみゆりが泊の術を真似て教えたのだろう。


あの時の地下人窃盗犯の4人での任務。みゆりが笑うなんてヘマをするのは忍者としてあり得ないと思った。でも、それが地下人窃盗犯を守るためだったのなら......


過去の出来事が次々と繋がっていく気がして、華椰葉は苦しくなり過呼吸になってしまった。


「はぁはぁはぁ」


そのとき、

「どうしたの」

と声をかけられた。


心臓がドキッと止まった。


「み、みゆり」


そうか、さっきのが終わったのだから今頃帰ってきてもおかしくない。こんなところにいたらバッタリ会ってしまうのに、なんでここにいたんだろう。


「冷えてる夜にそんな薄着だと風邪引くよ、華椰」

そう言って、みゆりが巻いていたマフラーを華椰葉の肩にそっと掛けた。


「こ、これじぁみゆりが冷えちゃうじゃん」


心配そうにそう言うと、


「私はコートも着てるし別に寒くないよ。華椰は優しいよね本当に」

と目を伏せながら言った。


先程からみゆりと全く目が合わない。

合わせようとしても合わせてくれない。





「華椰、ごめんね......私、あなたのことが大嫌い」





その言葉は突然告げられた。


衝撃的すぎて何も反応する事ができなかった。





「今日、来てたでしょ。私のところに」





バレていたんだ。

今更嘘をついたところで、敵意を煽るだけだ。


「なんでそれを......」


「華椰が地下街任務をしてるって聞いて気になってさ。首筋の下の方にGPS付けてたの」


それを聞いてバッと首筋を触る。

するとみゆりの捕縛術の応用なのだろうか。

ガッチリと皮膚にまとわりついている固いものに触れた。


その瞬間華椰葉はメリメリっと音を立て、皮膚と共にGPSを剥がした。


血がジワっと滲み出る。


その様子を見たみゆりは、

「ちょっと! 今私が術を解こうと思っていたのに」

と驚いた様子だ。


「もう......わかんないよ。この戦いは地上人が悪いの? 地下人が悪いの? 今この状況は私が悪いの? それともみゆりが悪いの?」

声を震わせる。


「被害者ぶらないで! あなたたちみたいな地上人がいなければ、私たちはもっと幸せな人生だったはずなのに! なんでも力で押さえつけて......それが根本的な解決になるわけないでしょ! まっ、一色家の娘が忍術学校に来るって聞いたときは驚いたけど。結局バレちゃったみたいね」


力で押さえつけても解決にならない......そんなことわかっているはずなのに。

いや、私だけがわかっていても何一つ世界は変わらないんだ。


「もう終わり......華椰となんて出会わなければよかった」


月明かりに一筋の雫が頬を滴る表情が、華椰葉に残る最後のみゆりだった。





部屋に戻り、ベッドの上でぐったりとしていた。


「これからみゆりとどう付き合っていこう」


お互い何もなかったかのように接するか、もう口聞かないか。


どっちにしても辛いのには変わらないのに。





翌日


「みゆりって今日は朝から任務なのー?」


「俺は任務とは聞いてないな。寝坊じゃないのか」


泊と憂斗がそんな話をしているのをただ聞いている。

私はだんまりとしているものだから、

「喧嘩でもしたのかな?」

「さぁーな」

コソコソとネタっぽく話し始めた。



ガラガラ



「おはよう、みんな」

朝霧先生が教室に入ってきた。


「せんせー、みゆりまだ来てないですよ!」

泊がそう伝えると、先生の表情は暗くなる。


「みゆりは退学した」


「えっ、退学って......何でですか!」


「今から説明する」


落ち着きながらも衝撃を受けている憂斗と、動揺を隠せない泊。


「みゆりは地下人だったんだ。そして忍術を地下人に漏洩させていたらしい。それに加えて忍術を軍との戦いでも行使した」


「みゆりが地下人......」


「すまない。私がまず最初に気づくべきだった。本当に申し訳ない」


すると憂斗が口を開く。


「先生は何も悪くない。俺自身、地下人が忍術を学ぶ分には何も問題ないと思っているから......でも、それを軍との戦いで使った事が許せない」


怒りをあらわにする。


「で、でもそのみゆりが教えた忍術は軍との戦いで悪用していたわけではないよな?」

泊はみゆりを信じるように華椰葉に聞いた。


しかし華椰葉の顔は歪んだ。


「その忍術によって私の大切な怜奈は......死んだ」


教室にいた皆、サァーと顔がこわばった。


ガタンッ


泊は立ち上がった。


「何がなんだか......ちょっと頭冷やしてきます」


「すまない。今日はみゆりが退学したことを伝えにだけ来た。私も事務員も色々と報告があるから今日は自習で頼む」


泊も先生もいなくなってしまった。

このまま私の周りは誰もいなくなってしまうのだろうか。


「華椰葉、いい加減にしてくれ」


「......本当にごめんなさい」

あぁ、本当に私にはもう誰もいない。


その言葉を聞いた憂斗は驚いた表情で、

「なんで謝るんだよ」


「だって、私がここに来なければみゆりとみんなは楽しく過ごせていたのかなって」


「そういうことを言いたかったわけじゃねぇよ」


「え」


「もういい加減1人で抱え込むのはやめてくれ」


憂斗の告白を断って、気まずいはずなのに何でこんなに優しくしてくれるのだろう。


でも、1人で抱え込まないなんて無理な話だよ。


「憂斗。わがままことしてもいいかな」


「華椰葉はわがままをしなすぎだ。俺も協力してやるから、好きにしろ」


華椰葉は立ち上がった。


その時華椰葉がいなくなってしまうのかと思って、憂斗もすぐに立ち上がった。



すると




バッ




華椰葉が憂斗をふわっと抱きしめた。


一瞬だけでも憂斗のあたたかさを感じたかった。

でもこれはあまりにもわがままで、今すぐ突き放されても構わない。


でも憂斗の反応はその逆だった。


憂斗は何が起きたのか一瞬理解できなかったが、すぐに華椰葉を力強く抱きしめ返した。華椰葉の何倍、何十倍も強く。




華椰葉は震えていた。

なぜこんな時でも涙を流さないのだろう。

辛いと誰にも伝えないのだろう。




俺が華椰葉を守れたのなら、何か違っていたのかもしれないのに。






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